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第158回受賞作を紙と書体で大予想!

本文用紙と書体で予想する芥川賞&直木賞

第158回受賞作を紙と書体で大予想!

第158回芥川賞と直木賞、二大文学賞の候補作が発表されています。それぞれの賞の選考および発表は2018年1月16日。

今回も、雑誌『デザインのひきだし』の編集長、津田淳子さんをゲストに「本文用紙による受賞作」を予想していただきます。

type.centerからは大日本タイポ組合の塚田哲也が聞き手として、また「文字」のサイトならではの、書体による受賞作も予想してまいります!

2017年の第156回・第157回を振り返って

【塚田】はい、というわけでまたきました。半年あっという間ですね、よろしくお願いします。

【津田】早いもんですねー。よろしくお願いします。

まずは昨年を振り返って。前々回の第156回では、連勝の津田さんがついに外れ、塚田が初にして直木賞・芥川賞ダブル的中という波乱が起こりました。

そうでしたねぇ。なんかもう遠い彼方のような気がして、記憶が定かではないのですが、「パウル津田、陥落」みたいなことを誰かから言われて、そんな真面目に言われても……と思った記憶がかすかにありますよ。パイセンのダブル的中はなんとなく覚えてます。おめでとうございます!

遅!

一年前ですもんね(笑)

そうですよ、そのあとにもう一回あったじゃないですか! ふたりとも全敗、大ハズシしたっていう第157回が。

盛り下がりましたよねー(苦笑)。超適当予想というか占いなんだから、外れて当然なんですが。外したことより、周りがこの話題に全然触れないことの方がいやでしたよ!

うん。めっちゃ静まってた。

当たってたときは、すごい!とか恐ろしい!とかいろいろ直接言われたのに、外したら腫れ物に触るというかなんというか、言ったら悪いかなショックを受けるかなとか考えられて、全然触れられない。そっちの方が辛い!(苦笑)

いっかい外したら、そのまま落ちていく一方な感じすらしますが(笑)、どんなお気持ちですか?

いやぁ、もう当たる気がしません。ホントに。あの何度も当て続けてたのはなんだったんでしょうか。

いやホントなんだったんでしょう。ていうか、もうテンション下がりっぱなしで興味なくなったようにも見受けられますよ。

どこでそんなの見受けるんですか(笑)

なんか、「紙ッター」とかで現実逃避してる感じがする。

えっ、そこ?

「紙占い」って言ってるし。

あっ、ホントだ。(賞予想と)一緒ですね(笑)。

別に興味が移ってきたわけじゃなく、紙ッターって、実は随分前(4~5年前?)に一度つくったことがあるんですよ、診断メーカーで。そのときは数百人くらいしかやってもらえなかった気がしますが。こういうのってなんとなく楽しいじゃないですか。だから久しぶりに存在を思い出して検索してみたんですけど、もう削除されてしまったのか全然見つけられなくて。だから今年の仕事始めに試運転的につくったんです。思い浮かんだ順に超適当に書いただけなんで、あまりしっかり読まないでくださいね。

もう、紙の特徴と人間の性格のシンクロ率がめっちゃ高くて、妙に納得してしまって。読むなと言われても思わず読み込んじゃいますよ。

昔から、装丁家の名久井直子さんと飲むと、「あの人を紙に例えると」っていうバカ話をするんですよ。ちょっと粘着質だから「プライク」だとか(プライク自体は品があってステキ紙なんですが、質感がゴムっぽいというか他のない独特なしっとり感なんですよ)、キラキラかわいい子は「きらびき」だとか。

正直こわいです! その二人に例えられたくないわ〜〜〜

ちなみに塚田センパイを紙に例えると、OKミューズガリバーグロスCoCとトレーシングペーパーを合紙した感じ。すごく器用な面と不思議な面と両方あって、結果わけがわからない感じだから(笑)

ていうか、そのふたつを合紙すんな!

てへ、真面目に例えちゃった。大日本タイポ組合のもうひとかた、秀親さんは……柏原加工紙の工業用加工紙かな。表クラフト・裏銀色、間に菱目に編んだ糸を挟み込んだようなあんまり見たことない紙。

どんな紙か検索してサイト見ましたけど、web1.0感もあいまって、なんとなく分かる(笑)

もしくはパピルス。

例えられるのコワイ! ていうかこのネタで盛り上がりすぎ!

そして最終章(?)へ……。

ちなみに過去の予想記事は去年の type.center のアクセスランキングの上位にもけっこう入ってるんですよ。1位、3位、6位と。

ほ、ほんとだ……。なんか申し訳ないな。こんな酒飲みの戯言みたいなものを。もっと真面目なことを話した方がいいような気がしてきた。

ていうかそもそも、直木賞と芥川賞っていう文学賞をですね、本文用紙と書体で予想するって、普通じゃないじゃないですか。

まあね(笑)

もはや「アウトレイジ」といってもいいと思うんですよ(笑)。パウル津田の栄光があり陥落があり。俺にその座を奪われたりとか。

ああ(笑)。んでもって今は、共に没落状態っていうか……。

いわゆる「最終章」ですよね(笑)


では今回の芥川賞・直木賞候補作の本文用紙と書体を見ていきましょう。

第158回直木三十五賞候補作品

『くちなし』

文藝春秋/彩瀬まる

『くちなし』綾瀬まる(Amazon)

  • 本文用紙:オペラクリームマックス(日本製紙)
  • タイトル:筑紫オールド明朝(フォントワークス)
  • 著者名:筑紫オールド明朝(フォントワークス)
  • 本文:イワタ明朝体オールド(イワタ)
  • 装画:及川聡子
  • 装幀:大久保明子

『彼方の友へ』

実業之日本社/伊吹有喜

『彼方の友へ』伊吹有喜(Amazon)

  • 本文用紙:OKライトクリーム(王子製紙)
  • タイトル:つばめ(フォントワークス)を加工か
  • タイトルルビ:つばめ(フォントワークス)
  • 著者名(欧文も):つばめ(フォントワークス)
  • 本文:リュウミン+リュウミンオールドがな(モリサワ)
  • 装画:早川世詩男
  • 装幀:成美紀子

『銀河鉄道の父』

講談社/門井慶喜

『銀河鉄道の父』門井慶喜

  • 本文用紙:ソリストN(中越パルプ工業)
  • タイトル:筑紫Bオールド明朝(フォントワークス)
  • 著者名(欧文も):筑紫Bオールド明朝(フォントワークス)
  • 本文:リュウミン(モリサワ)
  • 装画:民野宏之
  • 装幀:川上成夫+川崎稔子

『火定』

PHP研究所/澤田瞳子

『火定』澤田瞳子

  • 本文用紙:OKライトクリーム(王子製紙)
  • タイトル(ルビも):筑紫B見出ミン(フォントワークス)
  • 著者名(ルビも):筑紫B見出ミン(フォントワークス)
  • 本文:リュウミン(モリサワ)
  • 装画:影山 徹
  • 装丁:芦澤泰偉

『ふたご』

文藝春秋/藤崎彩織

『ふたご』藤崎彩織

  • 本文用紙:OKプリンセス(王子製紙)
  • タイトル:オリジナル
  • 著者名:A1明朝(モリサワ)
  • 本文:筑紫明朝(フォントワークス)
  • 装画:杉山 巧
  • 装幀:大久保明子

つづいて、芥川賞の候補作です。


第158回芥川龍之介賞候補作品

『百年泥』

新潮11月号/石井遊佳

『雪子さんの足音』

群像9月号/木村紅美

『愛が挟み撃ち』

文學界12月号/前田司郎

『ディレイ・エフェクト』

たべるのがおそい vol. 4/宮内悠介

『おらおらでひとりいぐも』

河出書房新社/若竹千佐子

『おらおらでひとりいぐも』若竹千佐子

  • 本文用紙:オペラクリアマックス(日本製紙)
  • タイトル:筑紫アンティークゴシック(フォントワークス)
  • 著者名:筑紫Aオールド明朝(フォントワークス)
  • 本文:筑紫Aオールド明朝(フォントワークス)
  • 装画:鈴木成一デザイン室
  • 装幀:小林紀晴

芥川賞候補作は選考の時点では未だ書籍化されていないため、すべての本文用紙と書体について調べることができませんでした。


★★★

さて、では第158回の予想に入っていきましょう。
まず本文用紙、今年の傾向などありましたら教えてください。

今年は王子製紙が多いなぁと。王子製紙はここ数年、こうした文芸書などに多く使われる、クリーム色系の書籍用紙(上質紙)のラインナップがいろいろかわってるんです。一昔前は、「OKライトクリーム」「OKミルクリーム」「OKソフトクリーム」「OKサワークリーム」「OKシュークリームラフ」「OKシュークリーム」っていう銘柄があって、それぞれ色も幾つかずつあって。例えば「OKミルクリーム・ハニー」とか。

名前だけ聞くと紙というよりスイーツ系じゃないですか。

そうなの(笑)。それが統廃合されて、今は「OKライトクリーム」「OKプリンセス」「OKハルクリーム」「OKシュークリーム」の4種類になっている。この辺が認知・受け入れられてきて、多く使われてるのかなぁなんて思いました。ほら、真面目なこと言ったでしょ。

真面目ですけど名前がスイーツ系なのでちょっぴり笑みがこぼれてしまいますね。

ふふふ。書体の傾向はどうです?

書体は、今年はタイトルが筑紫、本文がリュウミンというのが多いですね。一年前の予想のときに『「筑紫Aオールド明朝」がちょいちょい使われてきている』って言ってるんですけど、そこから徐々に増えてきたなぁという印象です。直木賞は歴史小説もノミネートしてくるから、例年だと筆書き系の楷書とか行書とかの書体も入ってくることが多いんですけど、今回はそれもなくて、みんな明朝体になっていて。
受賞作を的中させた第156回の予想で、『蜜蜂と遠雷』を選んだ理由は「ひとつだけゴシックを使っていたから」だったんだけど(笑)、今回はゴシックが選べないので困っています。

一見、真面目な分析っぽいけど後半ちょっとテキトーになってきてるな(笑)

第158回直木賞はどの作品に?

んでは、第158回直木賞受賞作の予想いきましょうか。

はい。前回に引きつづき、王子製紙の紙のことをつらつら語っているにも関わらず、受賞作予想は「ソリストN」を使っている『銀河鉄道の父』です!

でたーーー! 津田さんの十八番 おはこ 「王子製紙アゲからの〜違う紙予想」

王子製紙の紙じゃなくって大変すみません!

ちなみにそんな前回は王子製紙の「OKハルクリーム」を使った『月の満ち欠け』が受賞したんですよ。

そうです……。私の「敗戦の弁」が王子製紙のギャラリースペース「OJI PAPER LIBRARY」に展示されたという(苦笑)

そこまでのリスクを冒してまでも「ソリストN」を推す理由は?

やっぱり文学賞に「ソリストN」は強いんじゃないかという気がしてるんです。文芸書の本文用紙使用比率からいったら、「ソリストN」って毎回候補に入るほど使われてないと思うんですよね。なのに文学賞受賞率がすごく高い。その強運さに賭けてみました。

まぁね。毎回「ソリストN」の話は出てきますよね。これで受賞したら、『流』(東山彰良著/講談社/第153回直木賞受賞作)以来、5回ぶりの受賞となります。

塚田パイセンの書体のほうは?

僕は受賞作に『ふたご』を予想します!

それまたどうして?

筑紫明朝だらけのタイトルの中で、いちばんゴシックっぽい字だったから……。

でたーーー! 塚田パイセンの十八番 おはこ 「ひとつだけゴシック」選び〜

今回もフォント知恵袋ことakira1975が書体を調べてくれたんですけどね、その書体リストをバーッと見るわけです。で、他の候補作と共通のところはもちろん、違ってるところも探すんですけど、さっきも言ったとおり、今回はほんとうにタイトルに筑紫明朝が多かった。
実は『彼方の友へ』も、筑紫ではない書体をタイトルに使っているんですけど、その「つばめ」も、フォントワークスの書体なんですね。さらに本文書体が「リュウミン」なんで、ざっくり言うと「タイトルがフォントワークスで本文がリュウミン(モリサワ)」として他の候補作と一緒くたにできちゃったんです。 その点『ふたご』はタイトルがオリジナルながらゴシックっぽいし、タイトル周りでは著者名に「A1明朝」というモリサワ書体、本文書体が「筑紫明朝」となっていて、他の候補作とはメーカーの使い分け(?)が真逆なんですよ。なので他とは違ってみえたので、これを推します。次点は本文に「イワタ明朝体オールド」を使っている『くちなし』です。

私は『ふたご』が、直木賞の次点かなと思ってます。芥川賞候補は現時点で1冊しか書籍化していないので予想できませんが、芥川賞では「OKプリンセス」を使った書籍がでてきたら、それが受賞するんじゃないかっていう気がしているんです。こちらは何の根拠もないんですが、「OKプリンセス」がきそうな気がなぜかしていて。そんな紙を『ふたご』も使ってる。

いいなぁ、その何の根拠もないけどきそうな感じ。 僕は芥川賞のほうは、というと、やっぱゴシックかな(笑)。現時点で唯一書籍化されている『おらおらでひとりいぐも』「筑紫アンティークゴシック」です。かなは明朝っぽさもあるけどなんつったってゴシックなので。うん、行くんじゃないでしょうか(笑)

まあ、これから出てくる芥川賞候補の書籍で「OKプリンセス」が一冊も使われてなかったら元も子もないんですが……。

こっちは全部ゴシックだったら困ってしまうな(笑)


第158回直木賞・本文用紙による受賞作予想

『銀河鉄道の父』での「ソリストN」(中越パルプ工業)

『銀河鉄道の父』門井慶喜

第158回直木賞・書体による受賞作予想

『ふたご』の オリジナルタイトル +「筑紫明朝」(フォントワークス)

『ふたご』藤崎彩織


じゃあ最後に、今回の意気込みなど。

毎回、意気込みなんてないんですよ。それより喜楽に行きたいです。

ははは、喜楽! リアル直木賞・芥川賞の選考会をやる料亭ね。僕らも毎回そこでやろうと行ってるんですけどもなかなか行けない。ていうか毎回、選考会のタイミングは『デザインのひきだし』の校了間近でバッタバタなんですよね。

そうなんです! こんな時期に選考会やるな!

……以上、本文用紙と書体による芥川賞・直木賞の受賞作予想でした。受賞作の結果発表は1月16日。はたしてどうなるでしょうか。お楽しみにお待ちください。

※ 使用書体は当サイトによる独自調査によるものです。書体見本などと照合したものになりますが、実際の使用書体とは異なる可能性があります。ご了承ください。

2018年1月12日

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人物プロフィール

津田淳子

編集者。1974年神奈川県生まれ。編集プロダクション、出版社を経て、2005年にグラフィック社入社。2007年『デザインのひきだし』を創刊する。デザイン、印刷、紙、加工に傾倒し、それらに関する書籍を日々編集中。
http://dhikidashi.exblog.jp/

本文用紙と書体で予想する芥川賞&直木賞

塚田哲也

大日本タイポ組合のひとり。新世界タイポ研究会のメンバーでもある。ソロ活動として、デザイン関連ダジャレコンテスト「グッドデザイソ」をtwitter上で開催中。

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