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第1回:ミャンマーの巻

定番カレンダー!の旅

第1回:ミャンマーの巻

台湾在住の書体研究者、柯 志杰さんの新連載「定番カレンダー!の旅」をお送りします。旅先でみつけたその国らしさあふれる「定番カレンダー」第1回目はミャンマーのカレンダーです。

第1回:ミャンマーの巻

明けましておめでとうございます!
新しい一年を迎えて、今年のカレンダーは飾りましたか?

え? 3月もすぐ終わるっていうのに明けましてはおかしいって? 
台湾では旧暦新年(春節)のほうがメインですから、まだ正月気分プンプンですよ。

ところで、「旧暦」っていうのがあるように、暦って、実は世界中にいろんなものがありますね。そこでカレンダーも結構みんな違うんです。

僕がカレンダーにはまったのは、去年1月末のヤンゴン旅のときでした。道端のおばちゃんが売っていたカレンダーを見て、衝撃が走りました。

こ、これ、なんと縦ですね!

いや、台湾や日本のカレンダーも、パソコン・スマホのカレンダーアプリも、みんな横ですし、この年まで生きてきて、カレンダーって縦で組めることは一度すら考えたことがありません。

もしかしたら珍しいデザインじゃないかと正直疑ったのですが、さらに道を進むとあっちこっちで売られているカレンダーはみんな縦です。しかもデザインはみんなほぼ一緒。なるほど、これはこの国のカレンダーの一番ポピュラーなデザインということなのでしょう。

僕はこういうある国で一番ありふれたデザインのカレンダーのことを勝手に「定番カレンダー」と呼んでいます。値段が極安で、町中の食堂・店舗の壁に飾られていたり、原色が多かったり……などが特徴です。

迷うことなく即購入(1500キャット・約120円)。記念すべき第1号でした。


肝心なビルマ文字が読めませんが(!)、ネット検索を駆使して、このカレンダーのポイントを押さえてみましょう。

❶の部分はビルマ数字の「2561」、これは仏暦の年で、西暦2017年に相当します。仏暦(仏滅紀元)というのは釈迦が涅槃(仏滅)した翌年を元年にした紀元です、東南アジアの仏教国でよく使われています。

ただここに罠がありまして、仏滅の年は各国の解釈の間で揺れています。ゆえに国によって数字がずれています。さらに、ミャンマーでは旧暦正月(水かけ祭)の度に加算される一方、タイでは新暦と合わせて1月1日に加算されます。対応関係がかなり混乱です。とにかく今の時点(2018年3月)でミャンマーでもタイでも仏暦2561年ですが、来月(4月中旬)からミャンマーでは2562年になります。

「ビルマ数字」というものは、多くの読者にとっては初耳でしょう。東南アジアの国々の文字システムには、普通の字母(英語のアルファベットに相当)以外に、数字専用の字母も存在しています。漢数字とは似て非なるものですが、カレンダーでは同じ用途で力を発揮します。それは「暦」の区別として活躍されています。アラビア数字は西暦、固有数字は固有暦。たとえば台湾のカレンダーでも、旧暦の日付は漢数字で表示されています。

ビルマ数字(Wikipediaより)

❷と❸の丸はなんでしょうか。旧暦と比べてみると、12月18日は旧暦の11月1日ということが分かりました。ということは、青い丸が暗月、赤い丸が満月ということを推測することができます。

これで前後の日付のビルマ数字の意味を推測することができました。例えば❹は1桁で❺は2桁ですから、おそらく❹は仏暦の9日・❺は仏暦10日でしょう。しかし満月の翌日の❻は1日になっているため、どうやら仏暦の習慣は暗月・満月の日を起点にして14~15日ごとに繰りかえるシステムになっているようです。

最後、この❼ですが、この西暦の31日はもちろん先月の31日ではありません(11月には31日が存在しないし!)、12月の31日ですね。最後の列に入らないからやむを得ず最初の欄の空間を借りています。

普通、日本のカレンダーなら、6列目を立てるか、斜め線を用いて24日と31日を1つのコマに入れますが、この31日を最初の列に入れる荒技もなぜか面白くて笑えます。(後に気づいたのですが、意外と多くの国の定番カレンダーはこうなっていました。)


ミャンマーの「定番カレンダー」、どうでしたか? もしかしたらダサいとか、情報が多すぎだとか、マイナスイメージを持っているかもしれません。しかしこんな情報が入りすぎたカレンダーこそ、その国の文化であることが重要です。たとえば市場の営業日など、色んな日常行事は西暦でなく、固有の暦と直結することがよくあります。大事な情報ですから、カレンダーに入れなけばならないのです。

19世紀末から、西暦がアジアに浸透し、今や世界中に西暦が使われていますが、「やはり固有の暦がないと困る!」と、人々の努力によって西暦と固有暦を一つのページに共存させる知恵は、この「定番カレンダー」の魅力です。 カレンダーだけで、この国の文化、生活スタイル、行事など、色々想像させられて、ワクワクしますね。

来月も引き続き、「定番カレンダー」を楽しんでください!


【追記】 日本語版の記事を書いたら、中国語の「日暦」「月暦」「年暦」は、日本語には簡単な表現が存在しないことに気づきました。「日めくりカレンダー」「年間カレンダー」のようなややこしい表現になりますね。ここも文化の違いを感じました(笑)

一応この連載での「定番カレンダー」は、「月別カレンダー」を指します。

2018年3月19日

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定番カレンダー!の旅

柯 志杰

柯志杰 (But Ko)
書体研究者、本職はプログラマー。街文字などで盛り上がるFacebookグループ「字嗨」の設立・管理者。共著に『字型散歩:日常生活的中文字型学』(臉譜出版、2014)がある。『タイポさんぽ 台湾をゆく』(誠文堂新光社、2016)コラム担当。

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