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第2回:タイの巻

定番カレンダー!の旅

第2回:タイの巻

台湾在住の書体研究者、柯 志杰さんの連載「定番カレンダー!の旅」では、旅先でみつけたその国らしさあふれる月別のカレンダーを「定番カレンダー」と名付けてご紹介。第2回目はタイのカレンダーです。

第2回:タイの巻

4月です。タイでは新年に当たるソンクラーン(水掛祭り)で、猛暑の中に大はしゃぎする季節です。

そういえばタイのカレンダーを見たことがありますか?

このカレンダーは大きめで、よくタイの店舗の壁に掛けてあります。一番の特徴というと、中国語がぎっしり書かれていますね。

特に農暦(中国旧暦)が丁寧に表示されていますので、台湾でそのまま使ってもほぼ困っていません(まあ祝日が違いますが……)。これは中国系の人が使うカレンダーです。


東南アジアの国々には相当の数の中国系人口がいます。中国系は商売に強いので、バンコクの繁華街の店舗の多くは中華色に染まれています。ゆえにこの中華系のカレンダーの浸透率が高い。結構見かけます。

一方、中国語の読めない中国系人口が多数派になっているようで、もう10年、20年経つと、この定番カレンダーがもう定番ではなくなるかもしれません。

タイ人は占い好き。タイ系も、中国系も。そのため毎日の吉凶が明確に示されています。日本のカレンダーにある「大安」「仏滅」みたいなものだが、そもそもこのカレンダーは占い屋が手をかけているようで、かなり本格的です。

今年の2/16は、中国旧暦の春節(旧正月)であり、この日はタイの祝日ではないものの、中国系の人はお祝いするため、このカレンダーではあえて赤色で表記されています。

真ん中にある存在感の強い数字が西暦の日付で、右の漢字は中国旧暦、下にあるタイ文字はタイ旧暦の日付が示されています。

そう、「タイ旧暦」というシステムも実は存在しているのです。タイ旧暦も太陰暦の一種でありますが、暦のルールの違いで、この日は2日で、中国旧暦と一日ずれています。

つまり、一つのコマに、3つの暦の日付が共存していますね。

ミャンマーと同じ、タイは仏教国で、普段は西暦を使っているものの、年だけに関しては仏暦を使っています。❶はタイ数字(出た!)の年で、今年はタイ仏暦の2561年。(そして前回書いたように、ミャンマー仏暦では今月で2562年になっています。ややこしい……。)

❷のように、コマに仏像が描かれているのは「仏日」です。仏日にはお香を焚いたり、タムブン(寺への寄進)したりする慣習があるので、タイ人にとって大切な日です。しっかり示すべきです。

❸の日は、青色のため祝日ではないが、タイ語で何かが書かれていますよね。2/9、2/19、2/24はそれぞれ台湾でもおなじみの送神日・接神日・天公生であって、中国南部の文化です。


ところでこのカレンダーで一番の謎は、おそらく❹ではないでしょうか?

この奇形な数字ってなんだろう……? 気になってしょうがない!

一体なんだと思いますか?

実は毎月の1日・16日はタイの全国宝くじの抽選日です。つまりこの数字は「コーフワイ」、つまり霊感を得るための数字です! 普通の書体ならレジビリティー(読みやすさ)が重視されますが、ここではあえてレジビリティーを潰して読み手の想像に任せるような文字に作り上げられています。これぞ文字の魅力!


色んな暦、仏教信仰、中国民間信仰、占い、宝くじ。一つのページに多様な文化が共存している定番カレンダー。来月はどの国でしょう。

2018年4月18日

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定番カレンダー!の旅

柯 志杰

柯志杰 (But Ko)
書体研究者、本職はプログラマー。街文字などで盛り上がるFacebookグループ「字嗨」の設立・管理者。共著に『字型散歩:日常生活的中文字型学』(臉譜出版、2014)がある。『タイポさんぽ 台湾をゆく』(誠文堂新光社、2016)コラム担当。

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