文字による文字のための文字のサイト
世宗生誕620周年記念国際カンファレンス「世宗の革新精神とタイポグラフィ」

後編:トミー・リー/ピーター・ビラク/塚田哲也

2017年5月6日(火)、世宗(セジョン)大王の生誕620周年を記念し、韓国国立ハングル博物館にて「世宗の革新精神とタイポグラフィ」と題した国際カンファレンスが開催。国内外のゲストを招き、創意的な事例とタイポグラフィデザインの未来志向な発展の可能性を論議する場となった。マシュー・カーターのビデオメッセージとネヴィル・ブロディ、アン・サンスの講演に続く第二セッションでは、トミー・リー、ピーター・ビラク、塚田哲也らが壇上に立った。


トミー・リー

「興味深いタイポグラフィは文化プロジェクトでしか作れないのか?」

2つ目のセッションのはじめは香港のトミー・リーデザインワークショップのトミー・リーが講壇に立った。「ブラックユーモア」と「大胆な視覚デザイン」で有名なトミー・リーは、香港・中国・日本・イタリアなど世界で活発に活動し、今までの活動を元に「興味深いタイポグラフィは文化プロジェクトでしか作れないのか?」をテーマに話した。

トミー・リー/トミー・リーデザインワークショップ

政府関連プロジェクトと一般商業プロジェクトの作業経験を例を挙げ、政府との協力プロジェクトはどうしても政府独特のデザイン感覚をもっていて、一般的にみるとデザイン面ではすこし物足りない部分がある。しかし、クライアントの意見を反映し相互の信頼をもって進めることで新たなデザイン感覚を生み出すことができると説明した。

トミー・リーは長年の歴史を持つブランドを現代にアレンジし直す作業をすることが多く、そこでは昔のイメージから離れ、現代の消費者に近づけるロゴやタイポグラフィのデザインが目立つ。みんなが簡単に共感でき、理解しやすいデザインを作るのが大事だと話した。

デザインにおける文化的要素と商業的な要素の調和方法について紹介し、これを活用したタイポグラフィのデザイン法について共有する場となった。


ピーター・ビラク

「タイポグラフィの可能性の拡張」

続いてTypothequeのピーター・ビラクが登壇した。現在、編集・グラフィックデザイン及びタイプフェイスデザインなどの分野で活動しながら教育にも力を入れているピーターは「タイポグラフィ可能性の拡張」というテーマで話を進めた。

Typothequeのピーター・ビラク。画面に写っているのは「Greta Sans」ファミリー

タイプデザイナーであるピーター・ビラクは思索的な個人プロジェクトから大規模公共プロジェクトに至るまで、多様な作業を行ってきた。「我々は無意識の中でも数多くの文字に囲まれている」と言い、彼は「数千個のタイプフェイスがあるが、実際に選択肢の幅はそれほど広くない。従ってもっと多くのタイプフェイスを作るための新しい理由を常に探している」と説明した。

また、「言語・技術・デザイン」、この三つの要素が調和良く混ぜあったときに良いデザインを作れる、しかし多くの人がこれを別々の要素と考える場合が多いので良いデザインを作るのが難しいと説明した。彼がタイプデザインを好きな理由は「興味深いから。長年その機能を失わず活用でき、持続性が魅力的」と明かした。タイプフェイスは永久的なもので、急いで適当に発表するのは控えてほしいと話した。

塚田哲也

「変化するタイポグラフィ」

次は大日本タイポ組合の塚田哲也が講壇に立った。グラフィック、ロゴ、装丁など多様な分野で文字の解体と再構成、そして文字の新たな意味の探索に関する活動を広げている彼は「変化するタイポグラフィ」というテーマで話を進めた。

大日本タイポ組合の塚田哲也。「type.setter」ハングル版を初披露。

「デザインで遊びながらデザイン作業をする方法」を実践してきた塚田哲也は、東京とソウルの街の風景を比較しながら文字が持つ意味について説明した。一見、どちらも風景は似たように見えるが、都市のすべての文字を消し去った「文字のない世界」という考察を通じて、看板の文字、表示板などで都市各自の個性が明らかになることを明らかにした。

日本のかな文字の形は縦書きから生まれたが、徐々に横書きが一般化されている今日において、横組みに適したかな書体の製作が求められている。しかしより根源的な、かな文字の形を横書きからあらためて生み出したらどうなるか。時代と共に変化するタイポグラフィの環境を反映してひらがなに対する再解釈を表したプロジェクトも公開した。

また、編集長を務めている文字による文字のための文字のサイト「type.center」の紹介と、スマートフォンの画面上で文字を組み合わせ楽しむことのできる「type.setter」の紹介があった。これまで日本台湾で公開されていた「type.setter」だが、本講演に合わせ韓国語版も公開された。

「apple」「pen」と入力した文字がリンゴやペンの絵になり、それらを続けて入力するとペンのささったリンゴの絵になるなど、楽しみを与えられる書体を具現化した塚田哲也は、文字を通じてのコミュニケーションや、新たな形のタイポグラフィに適応できる方法を提示し、話を終えた。


イ・ジウォン

「体系デザインとしてのハングル」

続いて国民大学の教授イ・ジウォンが登壇した。視覚文化とグラフィックを扱うデザイナーであり、教育者でもある彼は「体系デザインとしてのハングル」について話した。

国民大学のイ・ジウォン教授

講演の焦点は今までのプロジェクトより、世宗の革新とハングルについて焦点をあて、展開された。「ハングルは聴覚的な印象に体系的な形を適用して形を再現する、その自体で独立した原理をもつ造形体系デザインである」と説明した彼は、発音器官の調音位置に着目したハングルの幾何学的造形システムの優秀性について話した。

ハングルの母音・子音は各自の加画の原理、陰陽の原理に基づいて拡張され、字素の派生に規則的に適用され、一貫的な造形性を形成する。「世宗大王が創製したのは単なるひとつの文字グループではなく、一連の体系をデザインしたのである。その体系に韓国を入力したのがハングルだ」と体系デザインでの側面からハングルを考察し、このような特徴を活かしたハングルタイポグラフィ作品を紹介した。

アン・ビョンハク

「Typojanchi2017」

本カンファレンスの最後は弘益大学教授、アン・ビョンハクが飾った。タイポグラフィとグラフィックデザインを教える彼は、「4242Works」を運営し、様々な分野でタイポグラフィとグラフィックに焦点をあて作業を進め、その領域を広げている。今回のカンファレンスでは彼が総監督を勤め、2017年の9月に開催される「Typojanchi2017」について紹介した。

弘益大学教授、アン・ビョンハク

「Typojanchi」は文字をテーマにした世界唯一の国際ビエンナーレであり、国際イベントとしての面貌を備えながらその重要性を高めている。今年のテーマは「身体」。「Typojanchi2017」は「身体と文字」を変化の中心に置き、連結・交換・連鎖・繋がり・転移性・関係・ゲーム・対話・変数・交渉・参加など代弁できる現在の多様な社会文化的な問題を文字とイメージで探検する遊びと実験の場となる」と紹介した。「Typojanchi2017」は来る9月15日に開幕し、「身体と文字」というテーマを解釈する多様な創意的な観点が好奇心を刺激し、自由な想像の機会を提供できると期待を表した。


最後に、大田大学のユ・ジョンミ教授を司会に、講演者と受講者との討論の時間が設けられた。討論時間では講演者が経験した問題に対する解決法、タイポグラフィの芸術性商業性、政治的な理念とタイポグラフィなど多様な話に広がり、またこれからのタイポグラフィデザインにおける新たな課題を与えてカンファレンスを終えた。

2018年6月1日

シェア

人物プロフィール

T
Tommy Li

Tommy Li Design Workshop ltd.代表。香港、東京、ロンドン、北京などを舞台に30年以上の間ブランドデザイナー、ブランドコンサルタントとして活動を展開。これまでの受賞は580作品にもおよび、うち2012年度D&AD賞でもペンシルを受賞。2005年よりAGI会員。

塚田哲也

大日本タイポ組合のひとり。新世界タイポ研究会のメンバーでもある。ソロ活動として、デザイン関連ダジャレコンテスト「グッドデザイソ」をtwitter上で開催中。

世宗生誕620周年記念国際カンファレンス「世宗の革新精神とタイポグラフィ」

type.center編集部

type.centerの編集部です。文字関連イベントをレポートしたり役立つ情報を発信できるよう努力してまいります。よろしくお願いします。

連載記事一覧
今日
昨日
おととい
ちかごろ
あいうえお かきくけこ さしすせそ たちつてと なにぬねの はひふへほ まみむめも やゆよ らりるれろ わゐゑを ん がぎぐげご ざじずぜぞ だぢづでど ばびぶべぼ ぱぴぷぺぽ 0123456789.
連載記事一覧
連載記事一覧