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第5回:北朝鮮の巻

定番カレンダー!の旅

第5回:北朝鮮の巻

何やらこのところ国際ニュースで注目されている国、北朝鮮。

その国内の様子はいつもミステリアスなイメージが漂っていますが、さてカレンダーはどんなものでしょう?

今回、そんな北朝鮮のカレンダーを手に入れることができたので、さっそく中身を見てみましょう。

下に「朝鮮映画輸出入社」と書いてあるから、おそらく愛国映画ポスター的なカレンダーですね。厳密にいえばこの連載で扱っている「定番カレンダー」とは違うものということになります。でもまあせっかくだから、今回は番外編ということで進めます(笑)。

一番上に書いてある文字は「偉大なる金日成同志と金正日同志は永遠に我々と共におられる」、政治的なスローガンですね。

今年、西暦2018年は、朝鮮の元号では主体(チュチェ)107年となります。実は朝鮮は1997年まで西暦紀元だけを使っていました。金日成の3年忌のときに、金日成の誕生年である1912年を主体元年とする主体紀元を新たに作って使用開始、いきなり主体86年からスタートしました。そして今日まで至ります。

カレンダーの中身です。映画写真のカレンダーだから、写真の面積がでかいですね。しかし、やはり私が注目するのは下のカレンダーの部分です。


ページの一番下の❶は二十四節気など。それぞれ7月7日が小暑、7月23日は大暑、7月17日は初伏、7月27日が中伏。

記念日などは直接コマの中に書くようで、例えば7月3日は「戦略軍節」、7月12日は「海洋の日」となっています。黒字なのでたぶん休日ではないでしょう。

朝鮮も少しだけ旧暦の行事が残っているため(旧暦新年など)、カレンダーに旧暦の表示が存在しています。ただ重要性は減っているせいか、新暦の1日と旧暦の1日(7月13日の所)だけに記載され、他の日は自分で計算しなさいって感じ(❷)。


だけどこのカレンダーで一番の楽しむべきところは、曜日が書かれている❸の部分ですね。北朝鮮っぽい特徴がいっぱい出ているんだ、ここ。

まずこのハングル(厳密にいえばハングルではなく「チョソングル」だけど)が、漢字の明朝体っぽい書体になっています。この書体が北朝鮮では「光明体」と呼ばれ、結構使われています。まあ韓国にもこのような書体はなくないですが、どちらかというとディスプレイ書体の分野で、正式的な場合に使うことは多くないです。

次に「ㅌ」という字母は「ㄷ」の上に横線を一本足した形で表記されています。でも実際韓国では「ㄷ」の天地の真ん中に一本足した「E」のような形で作られている書体が多く、むしろ「E」が多数派です。北朝鮮では必ず横線と「ㄷ」は分けていて、「E」の形になることはありません。

それから、それぞれの曜日の右下の英文の頭文字が入っていますが、いちばん右側の「S」の字、印刷の色ずれが激しいですよね…。

こうして見ると、カレンダーも出版物も、紙と印刷の品質は本当にその国の経済事情をそのまま反映していると言っても過言ではありません。たとえば前に紹介したミャンマーのカレンダーは、紙の手触りは日本のトイレットペーパーより粗く、結構安価なパルプが使われているだろうと想像していますが、ここでも同様に、分かりやすい程の色ずれが起こっています。まあこれはこれでこのカレンダーの魅力だと思うんですけどね。

そうやって見てみると、赤い日曜日の日付(❹)は若干左側に、そして明らかに下にずれているのが分かりますよね。


さて次に、❺は何の日でしょう? この月の唯一赤字の休日なのに、休日の名称などコマの中にも、カレンダーの下にも書かれていないぞ!? 謎すぎるじゃん……。

あちこち探したところ、結局、なんとページの一番上に書いてあるじゃないか(❻)。おいおい、これは離れすぎるぞー(苦笑)。

7月27日は何の休日か、正解は「祖国解放戦争勝利の日」と書かれていました。実際は休戦協定の日なんですけどね。

こちらのコーナーは歴史上の重要(?)日付が整理されており、例えば金日成の命日、金正恩が元帥になった日や、抗日運動家の誕生日などが書かれています(歴史事件の日というよりは全てが人の誕生日・命日ですね)。

ここでポイントなのは、北朝鮮の文書では「金日成」「金正日」「金正恩」の名前は他より一回り大きく書かなければならないこと(❼)。下の英訳の部分も、Kim Jong Unの文字が前後の文字より大きいのが確認できます。

その流れて1枚目の写真をもういちど見てみてください(このカレンダーの表紙)。スローガンの中の将軍の名前は、やはり大きかった!


今回は北朝鮮の、一味違うカレンダーを見ました。

今度はどの国のカレンダーかな(ネタ切れ中)。

他の国の定番カレンダーを絶賛募集中なので、twitterで連絡ください。ハッシュタグは #定番カレンダー で!

2018年7月19日

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定番カレンダー!の旅

柯 志杰

柯志杰 (But Ko)
書体研究者、本職はプログラマー。街文字などで盛り上がるFacebookグループ「字嗨」の設立・管理者。共著に『字型散歩:日常生活的中文字型学』(臉譜出版、2014)がある。『タイポさんぽ 台湾をゆく』(誠文堂新光社、2016)コラム担当。

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