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第1章:前扉と本扉 (本の入り口) 又は Schmutztitel & Innentitel

本の虫

第1章:前扉と本扉 (本の入り口) 又は Schmutztitel & Innentitel

「本は表紙で決まる」と考える人が多いかと思います。本屋さんに並ぶ数々の本の中から、一冊を選び手に取る行動に繋がる視覚的な刺激は確かにカバーや表紙のデザインから来ていると思います。 内容は別として、実際に「欲しい!」という勢みがつくためには細部にまでデザインが行き届いているのか気になります。


表紙の次にくる、本の1ページ目をドイツ語では Schmutztitel(シュムッツティテル/直訳:汚れ・表紙)または Vortitel(フォアティテル/前扉)と言います。それに続く見開きの2と3ページ目は Innentitel(インネンティテル/本扉)になります。

1ページ目の 前扉には本のタイトルに加え、執筆者の名前が記載されていたり、又は出版社のロゴのみが挙げられています。文字のサイズは小さく、至ってシンプルにデザインされているものが多いです。

この一枚のページには機能性から来る伝統的なルーツがあります。かつて出版社(印刷所)から表紙も無しに中身の本文のみが販売されていた時代がありました。本扉を守る役割からの由来で前扉にはSchmutztitel(シュムッツティテル)という名称がついたとも言われています。新書を手に入れた者はこの本文の束を製本屋さんに預けて自らの図書のデザインに合わせて上製本に仕上げてもらっていました。

今では表紙を覆うカバーと帯、更にビニールまで被され完全に密封状態の本が店舗に並び、前扉は不要になってしまったと言えるでしょう。実際にドイツでもこの一枚のページを節約する出版社が増えて来ていると思います。

中身を守る役割からは解放されていますが、前扉に続き本扉の計3ページは、読者への「おもてなし」を表しているのではないのでしょうか? 本を建築に例えるならばカバーや表紙は建物の外壁、前扉と本扉は入り口や玄関に思えます。本題に入る「ゆとり」が好きです。この空間をこれからも大事にしていきたいです。

前扉に本のタイトルのみを配置。淡い青と前扉の空白のバランスが良い。本扉には執筆者名、タイトル、詩集であること、出版社などの情報が載せられている。
[Sandig, Ulrike Almut (2007) Streumen. Connewitzer Verlagsbuchhandlung Peter Hinke, Leipzig]

前扉には出版社のロゴのみ。本扉には執筆者名、タイトルと出版社名が載せられている。
[Pechmann, Alexander (2007) Die Bibliothek der verlorenen Bücher. Büchergilde Gutenberg, Frankfurt am Main]

シュムッツティテルの日本語の名称を探した結果、遊び紙や前扉が出てきました。しかし、遊び紙は見返しと本文用紙とはまた違った紙を使用しているケースもありました。 手元にある近年日本で出版されている本の中には前扉と本扉、両方とも含んでいる書物はなかなかありません。

前扉、本扉をどちらとも含んでいる装丁ではこのように表紙を前扉で形どっている物がある。逆に本扉が簡素であり、ドイツのデザインと逆である。
[平野甲賀(2006)もじを描く SURE]

又、本扉にてタイトルの次に「目次」を予告していたケースが数件あった。
[さくらももこ(1991)まるむし帳 集英社]

2018年8月27日

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本の虫

髙木毬子

(タイポグラファ、本の制作者/デザイナー、大学教員) 大の本好き。本のコレクターでもあり、本を創る(内容から外装まで)に生き甲斐を感じる。 日本人の父とドイツ人の母の間に生まれ、ドイツで育ちグラフィックデザイナーの道を選ぶ。当初から作品のテーマや研究内容は日本と西洋の文化や文字に集中している。

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