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Notegrahyについてのインタビュー(後半)

開発インタビュー

Notegrahyについてのインタビュー(後半)

Notegraphyが誕生するまでの前半に続き、後半はいよいよNotegraphyの実際の使われ方や、今後の展開などについての話。

R: Rafa Soto / Notegraphy
F: Philippe Rouger / Notegraphy
T: Tetsuya Tsukada / type.center 編集長
S: Tomoko Sakamoto / インタビュアー(文責)


デザイナーが「普通の人達」に対してできること

S: 私自身はほんの数日前から使い始めた新米ユーザーなのですが、個人的にはこれを使ってツイッターやフェイスブックでメッセージを投稿するのはちょっとかっこ良すぎて恥ずかしいというか、躊躇があるんです。でも、友達や家族など、具体的な個人に当てて書くパーソナルなメッセージにこれを使うのは、すごく楽しい。クオリティ・オブ・デイリーライフが向上されたってそんな気さえしたくらいです。

コレクションのデザイナーはどのように選ぶのですか?

R: それはフィリッペの仕事で、彼が選んでくれるんだけど、僕らはデザイナーの人たちに、これがいかに野心的なプロジェクトか、っていうことを伝えるよう心がけている。僕らが対象としているユーザーは、デザイナーとか、デザインに興味がある人達だけじゃなくて本当に普通の人達。つまりこれは、世界で最も優れたデザイナーたちが「普通の人達」に対して一体何ができるかということを明確に示すことができる、すごいツールなんだ。「楽しんでもらう」というレベルを超えた、もっとずっとシリアスなプロジェクトだ、っていうことを理解してもらいたいから。

左がラファ・ソト、右がフェリッペ・ロジェー

F: 今は、40種類の「コレクション」(スタイル)があって、ひとつのコレクションにはそれぞれ3つのバリエーションが用意されているから、ひとつテキストを書くと、それに対して120通りのカスタマイズが出来るようになってるんだ。そのすべてのうち、半分くらいはここ、バルセロナのデザインチームで作っている。そして残りのもう半分は、世界のトップデザイナーに依頼している。つまり、ローカルと国際的なデザイナーを、半分づつ、ということになるね。

S: ユーザーから何か面白い反応などはありましたか。個人でも、企業やプロの人たちからでも。

R: 興味深いリアクションは二つあったよ。

一つは、Notegraphyのユーザーの多くは、インスタグラムも使っているんだよね。インスタグラムって、僕もそうだったんだけど、写真のプロが使うツールじゃないんだよね。写真をこう、パシャリと撮るわけじゃない?対象は何でもいいんだけど、それでまあ、くだらない、ありきたりな写真が撮れるわけ。だけど、そこにフィルターで効果を加えると、WOWっていう(笑)ゴージャスな写真になるじゃない。でもそこですごいのは、その体験の後、ユーザーが次に写真を撮るときに、もっといい写真を撮ろうとするようになる、というところなんだ。フレーミングとかにも気を使うようになって、ちょっと写真家みたいな目線で、考える始めるようになる。Notegraphyもそれと同じで、これはあるユーザーが言ってたことなんだけど、何でもいいから思いついたことをNotegraphyに書くじゃない。それにスタイルを与えると、WOWっていう、かっこいいイメージが出来ちゃう。で、それを見ると、テキストの内容も、もっといいものに修正したくなる。それってすごいことで、嬉しい反応なんだよね。Notegraphyのビジョンの一つは、ツールが人々を触発して、もっと多くの、もっと良い文章を書きたいと思うようになることなんだ。だから僕らもやっててそれがうれしいよ。

Notegraphyで使えるコレクションのひとつ。Alex Trochutによる「Raw」

それからもう一つの反応は、これを聞いて、ちょっと修正が必要かもと思って今その作業中なんだけど、テキストを書いて、スタイルを与えた時に、そのかっこよさが過剰になっちゃうことがあるっていうこと。くだらない、フランクな文章を書いたのに、それがすっごくかっこよくスタイル化されちゃうと、恥ずかしいっていうか、やり過ぎな感じに見えてしまう。で、いまはそれを改善するために新しいコレクションを作っているんだけど、そこではこれまでの他のコレクションみたいに文頭にどーんと大きなデザイン文字があるんじゃなくて、もうちょっとカジュアルで楽しいものになっている。


そしてNotegraphyは、次なるステージへ

こちらはNon-Formatによるコレクション「SugarFactory」

S: このアプリのリリース前に思っていたことと、リリースした後に分かったことのズレ、みたいなことってありますか。

R: いい質問だね。これを作った時は、僕らはこれを一種の編集ツールだと思っていて、みんながブログのポストみたいにある程度長いテキストを書くと予想していたんだ。そういった長いテキストを書くために、ページを追加する機能も用意されていて、リリース初期の頃、ユーザーの一人がこれを使って小説を書いていたのを見て、僕らはハッピーな気持ちになった。Notegraphyは、ブログのプラットフォームのようになるだろうと思っていたんだ。だけどその後分かったのは、今見ればすぐに分かることだけれど、みんなもっとずっと短いテキストを書いている。これは実は僕らにとっては予想外だったんだけど、結果としては満足している。みんなすごい面白くて、かっこいい文章を書いているからね。コンテンツがすごくいいんだよ。それが意外だったことかな。

S: あと、先程もちょっと触れましたが、そのTシャツを見て思いました、Notegraphyって、Tシャツをデザインする最強のツールですよね。Tシャツを作るのに必要なのは、強いメッセージと、いいデザイン、でしょう。それを一瞬で作ることができるなんて、完璧なツールじゃないですか。

R: そう、実際Tシャツ作りもやっている。でもまだまだもっといろいろなアイディア、新しいビジネスモデルが欲しいんだ。例えば、みんなに、自分だけのかっこいいタグやサインを作ってもらって持ち物に貼るとか、マーチャンダイジングに使うとか。だってさ、自分が作ったものが気に入ったら、それを使ってTシャツやいろいろな物を作るのって楽しいじゃない。ノートブック、CDやレコードのカバーとか。あと、結婚式の招待状を作った人もいたな。ポスターとかね。

T: なるほど!Notegraphy for businessっていうのもあったよね。

S: Notegraphy for businessって個人向けとはどう違うのですか?

F: Notegraphy for businessというのは、そのクライアント専用のデザインを僕らが作るというサービスで、企業だけでなく、一時的なイベントなんかにも使用できる。最近だと、バルセロナのモバイル・ワールド・コングレスやパリのロエヴェというブランドのインターネット上のイベントで使われたりしたよ。

R: 今もいろいろテスト中だけど、たくさんの企業がこのアイディアには興味を持ってくれている。どんなテキストでも、その企業やイベントのテイストを持ったデザインになるということだから。例えばこれはロンドンのランダム・ハウスが推理小説のシリーズに関するニュースをSNSで流すのに使っているコレクション。

ロンドンのランダム・ハウスが推理小説のシリーズに関するニュースをSNSで流すのに使っているコレクション

T: PC用バージョンもあるの?

F: あるよ。(独立したアプリではなく)インターネットのブラウザ上でそのまま動くのでどんな端末でも使えるんだ。

これを見て。例えばここのページは「今日のノート」とか、僕らが選んだいいノートを集めてあって、インスピレーション、ユーモア、フィーリング、ストーリーといったカテゴリー別に見られるようにしてある。まあ、僕らが、っていうか実は僕が(笑)選んでるんだけど。ここに掲載されたノートを見た人が、「あ、この人いいこと言ってるな、フォローしよう」ってなるように。それからこっちはHOW TOって言って、ノートグラフィの新しい使い方のアイディアを集めてある。恋人と別れる方法(笑)、結婚のプロポーズ、新しい仕事を創る方法とか・・・。

「Notegraphy for PC」は、ブラウザ上でそのまま動くのでどんな端末でも使える

コレクションに関しては、見てもらえると分かるけど、クレージーな、あるいはアーティスティックなフォントもあれば、もっとノーマルでクラシカルなものやポップでデジタルな感じのもあって、すごく幅が広いんだ。

T: デザインしてあるのは最初の一文字だけであとのテキストはグーグルフォント?

F: そう。そしてその最初の一文字のほとんどは、大文字のアルファベット。で、いま開発中なのが、さっきラファが話していた、もっとカジュアルに使えるように最初の文字の大きさを小さくしてあるバージョン。さらにもう一つ新しいラインがあって、そこでは文字じゃなくてアイコンを使っている。例えばグッド、ノーマル、バッド3種類のラブとか、このスマイル、ノーマル、アングリー・フェイスのアイコンのコレクションは今週リリースしたばかりだよ。

S: ご自分ではどんなことに使っていますか?

R: そうだな。僕は主に、自分の思ったことをソーシャルメディアでシェアするのに使っているかな。ほとんどのケースに置いて、Notegraphyを使ったテキストで公開すると、普通にテキストとして投稿するよりずっといいフィードバックが帰ってくるし。

S: そうなんですか!
現在ユーザーの数は何人くらいなのでしょう?

R: 今30万人以上。面白いのは、リリースしたての最初から、ユーザーのエリアが完全に国際的だったこと。ノートグラフィはバルセロナで作られたスペインのツールだけど、初めから、ユーザーの一位、24%はアメリカ。二位はメキシコ、その次がドイツ、そしてここ数ヶ月は中国からの新しいユーザーが増えているかな。

T: コンテンツとデザインの関連性とかってある?ユーモアのあるテキストに使われることが多いコレクションの傾向とか。

F: そうだな、クリアな差は見られないと思う。しかも、逆にというか面白いことに、ほとんど使われていないコレクションっていうものがないんだ。みんなが、全部を使ってる、という感じで。

R: そして僕が一番面白いと思っているのは、デザイナーではない普通の人たちが、このアプリを使いながら「デザインがテキストのためにできること」を理解できるようになる、というところ。テキストを書いて、それにいろんなデザイン(コレクション)を当てはめたり、マイナーなチェンジを与えていくと、次々に違う何かが現れる。それが瞬時に、直感的に分かるからね。

F: 最近ロンドンのモノタイプ(Monotype)と契約を結んだから、もうすぐ10種類のフォントをNotegraphyで使えるようになる。Helvetica、Futura、Garamond、Frutigerコレクションなど、あと一ヶ月位で使えるようにする予定だよ。フォントの名前がコレクションの名前だから、すごくシンプルに使える。

あとは、もっと先のアイディアとしては、アニメーション。まだ企画としてはオープンな段階だけど、是非これを君たち大日本タイポ組合にやってもらえるといいなって思ってるよ。漢字からアルファベットに変化するとか。アニメでなければ分からない文字を表現してほしい。是非、よろしく!

T: あっ、はい! 頑張ります!

S: 今日は本当にありがとうございました!

2014年10月9日

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人物プロフィール

P
Philippe Rouger

フランス人ジャーナリスト、編集者。チリで7年間活動した後、1998年よりヨーロッパにバルセロナ在住。バルセロナを代表する広告代理店SCPFで9年間勤務した後、c de c(スペイン・クリエイティヴ・クラブ)の立ち上げ、オーディオ・ビジュアルとマルチメディアのプロダクション会社boolabのディレクションなどに関わる。2012年より、Notegraphyプロジェクトの総合オーガナイザーを務める。

R
Rafa Soto

コピーライター、デザイン・ジャンキー、トラブル愛好者。 広告代理店HerraizSoto&Coの共同設立者にしてクリエイティブ・ディレクター。Ikea、Nintendo、BMWなどの広告で、カンヌ・ライオンズはじめ数々の賞を受賞し、世界中で教育およびレクチャー活動も行っている。OmmWriterおよびNotegraphyの生みの親。

坂本知子

元建築家、編集者、デザイナー。 東京で建築を勉強した後、バルセロナに渡西。EMBT建築事務所で修行後、建築とデザインの書籍を出版するActar Publishersでエディターとして勤務。2012年にDavid Lorenteと共にSpreadを共同設立。ブックデザインと編集を中心に、様々な活動を行っている。

塚田哲也

大日本タイポ組合のひとり。新世界タイポ研究会のメンバーでもある。ソロ活動として、デザイン関連ダジャレコンテスト「グッドデザイソ」をtwitter上で開催中。

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