文字による文字のための文字のサイト

type.center

「かなのいろは」小塚×鳥海 対談(後半)

和文と欧文 「かなのいろは」レポート

「かなのいろは」小塚×鳥海 対談(後半)

和文と欧文

「かなのいろは」テーマに小塚昌彦氏と鳥海修氏が対談

前半「鳥海氏が「かな」の歴史を紐解く」から引き続き、小塚氏と鳥海氏の対談の様子をお伝えする。


小塚氏が「かな」における横組み(横書き)の矛盾に迫る

続いて小塚氏にマイクが渡された。小塚氏は、「タイプフェイスを手掛けて60年以上。その間、如何に既成概念を排除し、束縛から逃れるかに終始した」とし、縦組みで作られた「かな」を横組みでも使用する日本語組版の難しさを「我々は十字架を背負っている」と表現。「かな」における横組み(横書き)の矛盾に迫った。

まず小塚氏は、「当用漢字字体表やJISなどで、漢字の字体は規制されているものの、『かな』の形には一切規制がない」とした上で、とくにカタカナの属性について、「カタカナは現在、外来語に限って使い、漢字と同格に使われる。つまり『アメリカ合衆国』では『アメリカ』と『合衆国』が同じように見えてほしいわけだ。しかし、カタカナの『カタ』とは『不完全』を意味し、漢字の一部を取って作られたもの。昔は主に漢文の送り仮名に使われた」と説明。本居宣長直筆の「古事記伝」を例にとり、カタカナが小さく書かれていることについて「戦後作られたリュウミンなども本来カタカナは小さかった。現代では、使い方の違いから、新聞を中心に『できるだけ大きく』という傾向がある」と解説した。

一方、一般的な新聞や雑誌における文字の使用頻度については、ひらがなが37%、カタカナが5%、約物が5%で、残りのおよそ半分が漢字であることを示した上で「漢字は、普通2500字ぐらいあると新聞や雑誌の99.98%を組版できるとされている。たった0.02%のために3,000〜5,000の外字を持たなければならないことは、日本の組版の『泣き所』と言っていいだろう」と語った。

そして話は本題の「『かな』における横組み(横書き)の矛盾」に。

小塚氏は、聴講者に「あめのちうつろやゆらりわけみず」という文字列を横書きで書かせ、非常に書きづらいことを説明。「これは、文字のテールが、右から左下にはらうように終わる字が圧倒的に多く、始筆は左上が圧倒的に多いため」とし、縦書きを前提に作られたひらがなの属性にふれた。そして「横組みに適したひらがなのタイポグラフィがないということは、日本のデザイナーが本気になってまだチャレンジしていないからだと思う。『お前がやればいいじゃないか』と言われるかもしれないが、年齢的に遅すぎた。ぜひ、皆さんにこの志を引き継いでもらいたい」と訴えた。

次は、同氏のタイプデザインプリンシプルについて。「1万字前後の文字を新しく作るわけだから、簡単に途中でコンセプトを変えたりできない。したがって、使用目的と訴求対象、そして時代背景の把握が大切である」とし、デザイン要素として「ウエイト」「重心の取り方」「懐の広さ」「エレメントの表情・性格」「線質」の5点を、またタイプフェイスの機能として「一列に並ぶ(Alignment)」「情報を正確に伝達する(Text)」「視覚的イメージを表現できる(Display)」の3点を挙げた。

最後に小塚氏は「私にとってのタイプフェイスは、組版で文章をデザインする、あるいは文章を起草する作家の心を読者に素直に伝える媒体であると考えている。したがって、文字そのものが目立つことはなるべく避けたい」と述べ、そのタイプデザインプリンシプルを「息遣いのあるタイポグラフィ」と表現し、およそ2時間にわたる対談を締めくくった。

8ミリフィルム「母型のできるまで」を上映

対談終了後には、小塚氏が昭和32年に毎日新聞社で撮影した8ミリフィルム「母型のできるまで」を特別上映。映像には、活字の母型の製作で使われていたベントン母型彫刻機をはじめ、当時の毎日新聞社の社内、町の様子などが収められており、聴講者はおよそ5分間の貴重な映像に釘付けとなった。


2014年10月14日

シェア

人物プロフィール

小塚昌彦

タイプデザインディレクター。1929年生まれ。1950年から、毎日新聞社技術本部において1984年に定年退職するまで毎日新聞書体のすべてのデザイン制作・開発に従事。1985年から1992年、株式会社モリサワの常勤タイプデザインディレクターを務め、新ゴシックほか主要な書体のディレクションを行う。1992年~2002年、モリサワ賞国際タイプフェイスコンテスト審査員。1992年からアドビ システムズに勤務し、日本語タイポグラフィ・ディレクターとしてアドビ社のオリジナル書体 小塚明朝・小塚ゴシックを開発。1979年~1997年、愛知県立芸術大学 非常勤講師。1974年から国際タイポグラフィ協会(A.Typ.I)会員。2007年 第6回佐藤敬之輔賞(個人)受賞。

鳥海修

1955年山形県生まれ。多摩美術大学GD科卒業。1979年株式会社写研入社。1989年に有限会社字游工房を鈴木勉、片田啓一の3名で設立。現在、同社代表取締役であり書体設計士。大日本スクリーン製造株式会社 のヒラギノシリーズ、こぶりなゴシックなどを委託制作。一方で自社ブランドとして游書体ライブラリーの游明朝体、游ゴシック体など、ベーシック書体を中心に100書体以上の書体開発に携わる。2002年に第一回佐藤敬之輔顕彰、ヒラギノシリーズで2005年グッドデザイン賞、 2008東京TDC タイプデザイン賞を受賞。京都精華大学特任教授。

和文と欧文 「かなのいろは」レポート

type.center編集部

type.centerの編集部です。文字関連イベントをレポートしたり役立つ情報を発信できるよう努力してまいります。よろしくお願いします。

連載記事一覧
今日
昨日
おととい
ちかごろ
あいうえお かきくけこ さしすせそ たちつてと なにぬねの はひふへほ まみむめも やゆよ らりるれろ わゐゑを ん がぎぐげご ざじずぜぞ だぢづでど ばびぶべぼ ぱぴぷぺぽ 0123456789.
連載記事一覧
連載記事一覧