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Notegraphyについてのインタビュー(前半)

開発インタビュー

Notegraphyについてのインタビュー(前半)

もっといいテキストを書きたくなるアプリ、Notegraphy

R: Rafa Soto / Notegraphy
F: Philippe Rouger / Notegraphy
T: Tetsuya Tsukada / type.center 編集長
S: Tomoko Sakamoto / インタビュアー(文責)

herraizsoto&co. のオフィススタジオ

スペイン、バルセロナの中でも現在特に再開発が進むグローリアス広場、その真南に面するデザイン・ミュージアム(DHUB)から3ブロックほど海へと向かったところに、クリエイティブ・エージェンシーHerraizSoto&Co.の入っている建物がある。街路へと続くメインの入り口は非常用勝手口かと思うほどの小ささだが、一歩足を踏み入れると、元々は飛行機のプロペラを作る工場だったという大空間が目の前に現れる。内部には、彼らのスタジオに加えてこのNotegraphy(ノートグラフィ)のプロジェクトのためのスペース、外部のフリーデザイナー達も使えるシェアオフィス、パーティ会場やチルアウト・ラウンジなどが集い、パラソルや衣装、玩具?など何に使うのかオフィスらしからぬオブジェがあちこちに点在している。

Notegraphyというアプリケーションは、「デザインを通じて、書くこととそれをシェアすることを再考する携帯およびウエブ用のアプリ」と定義されているが、このプロジェクト自体がそもそも、HerraizSoto&Co.の日々の仕事の中から生まれた、彼らのためのツールでもあるという。その生い立ちや発展、今後の展望について、Notegraphyの開発者でありHerraizSoto&Co.のクリエイティブ・ディレクターであるラファ・ソトとNotegraphyのフェリッペ・ロジェーに話を聞いた。

Notegraphyの開発者でありHerraizsoto&Co.のクリエイティブ・ディレクターであるラファ・ソト

S: そのラファさんが着ていらっしゃるTシャツ、Notegraphyでデザインしたんですか?

R: そうだよ。他のデザインもあるよ。

S: なるほど、画面で見るだけでなく、こんな風にも使えるんですね! では早速聞かせてください。Notegraphyは、どんなアプリなのか、どうやって生まれたのか、生みの親であるラファさんの言葉で説明していただけますか。

R: Notegraphyがどんなアプリなのかを説明するには、どうやって生まれたかを先に話したほうがいいと思う。僕らHerraizSoto&Co.は、主にデジタル広告を作る仕事をしているけれど、それはつまり、メッセージを構築することと、それによってブランドとユーザーをつなげるということなんだ。で、その「つなぎ方」みたいなものをもっと良くするにはどうしたらいいのか、ということを考えながら仕事をしていたら、いつの間にか、メッセージそのものよりも、そのメッセージを伝えるためのツールが必要だと思うようになったんだ。

CAMPER(カンペール)のために作ったアプリ、“Have a Camper Day”。

例えばこれを見て。靴メーカーのCAMPER(カンペール)のために僕らで作った天気予報アプリなんだけど、晴れとか雨とかっていう天気のアイコンで、楽器を作ったんだ。晴れマークなら、こんな風に、赤と黄色の紐で出来た太陽光線を指で弾くと(なぞると)ハープみたいな音が出たり、雨マークなら、雨水をはじくと雨音で音楽を奏でることができたりする。こんな感じで僕らは、メッセージを作ることから、ツールを作ることへと、仕事の手法をシフトさせていくようになったんだ。そして「ツールがユーザーをハッピーにする」ことにも気付き始めていた。そしてメッセージやオブジェとユーザーの間にインタラクションを起こすことができるツールを作りたい、と考えるようになったんだ。


集中する、という体験のために開発されたワープロソフトOmmWriter

ミニマリスティックなデザインのOmmWriterの画面。

僕は、この仕事、クリエーターとしての責任とは、みんなの生活を美しく、かっこよくすること、だと思っている。その一つがこの、OmmWriter(オムライター)というワープロツールだ。今、僕らってみんなマルチタスキングで、常に複数の仕事に追われているよね。頭の中はいろんな案件でごった返している。そんな状況の中でこのツールは、ただ、「目の前の一つのことに集中できる環境を作る」という目的で作られたワープロアプリなんだ。

とにかく余計なものを画面から排除した。静かな音楽、背景には落ち着く画像と色を使ったミニマリスティックなデザイン。テキストを書くスペースは、自分で画面上に自由に配置して決められる。いま目の前で自分が書いているそのことだけに集中できるように、そして他に余計なことを考えないで済むように、ツールバーもウインドウズも含めてほとんどのものを消してある(ワープロとしての機能を保証するために必要な、文字の大きさや色、フォントなどを変えるためのボタンはすべて隠されていて、マウスやタッチパネルを触ると現れ、離れると消えるようになっている)。背景は真っ白ではなく、落ち着くようなイメージを作った。光の効果を考慮して、クロムセラピー・カラーも使っている。アイディアを刺激したいときはこんな感じの赤、落ち着きたいときはこんな感じの青に、といったように。

それから繊細で微妙な雨音みたいな音など、心地の良いキーエフェクト、タップ音も数種類作ってある。すべては、ただ集中するという体験のためなんだ。もちろん書体にもこだわっている。これでテキストを書くと、本当に落ち着くんだ。僕なんか落ち着きたいがためだけにこれを立ち上げて(必要のない)タイプ作業をすることがあるくらいだからね(笑)。

S: たしかに、マイクロソフトのワードで文章を書くのとこれで文章を書くのは同じ文章を書くという行為でもまったく違った経験になりそうです。

R: でしょ。このアプリは4年前に開発したのだけれど大成功で、いままでに100万人以上のユーザーを獲得している。バージョンは現在1.45。すべての作業をここで行っているので開発はゆっくりしか進まないけれど、これでワープロの機械そのものを作ったりもしたよ。テキストを書くことしかできない、表面が木で覆われたデバイスなんだけど。

Herraizsoto&Co. のスタジオのところどころに、遊び心があふれている

この時くらいから、テキストを書くという行為やシーン、というテーマを深く掘り下げるようになった。そして3年前くらいに、ソーシャルネットワークが爆発的に広まった時があったよね。誰もが何かを書き、それをシェアする、という。人々は、大事なこと、素敵な言葉を紡ぐ。だけど僕らは、そういった言葉をかっこ良く表現するための、しかも誰にでも使えるようなツールがないことに気がついた。文字のビジュアルなデザインは、言葉の中身と同じくらい大事かもしれないっていうのに。

それで、チャンスだと思った。ブランドとユーザーを、人々と人々の言葉を、美しい、かっこいい方法でつなぐ。それがNotegraphyの骨子、と言えるかな。

S: つまり、個人と個人の間のプライベートのコミュニケーションと、マス・コミュニケーションの両方のためのツールなんですね。

R: その通り。


後半につづく。

2014年10月1日

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人物プロフィール

P
Philippe Rouger

フランス人ジャーナリスト、編集者。チリで7年間活動した後、1998年よりヨーロッパにバルセロナ在住。バルセロナを代表する広告代理店SCPFで9年間勤務した後、c de c(スペイン・クリエイティヴ・クラブ)の立ち上げ、オーディオ・ビジュアルとマルチメディアのプロダクション会社boolabのディレクションなどに関わる。2012年より、Notegraphyプロジェクトの総合オーガナイザーを務める。

R
Rafa Soto

コピーライター、デザイン・ジャンキー、トラブル愛好者。 広告代理店HerraizSoto&Coの共同設立者にしてクリエイティブ・ディレクター。Ikea、Nintendo、BMWなどの広告で、カンヌ・ライオンズはじめ数々の賞を受賞し、世界中で教育およびレクチャー活動も行っている。OmmWriterおよびNotegraphyの生みの親。

坂本知子

元建築家、編集者、デザイナー。 東京で建築を勉強した後、バルセロナに渡西。EMBT建築事務所で修行後、建築とデザインの書籍を出版するActar Publishersでエディターとして勤務。2012年にDavid Lorenteと共にSpreadを共同設立。ブックデザインと編集を中心に、様々な活動を行っている。

塚田哲也

大日本タイポ組合のひとり。新世界タイポ研究会のメンバーでもある。ソロ活動として、デザイン関連ダジャレコンテスト「グッドデザイソ」をtwitter上で開催中。

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