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10人が取り組んだ書体づくりの過程「文字塾展 ―かなりこれはいい漢じ―」

展覧会レヴュー

10人が取り組んだ書体づくりの過程「文字塾展 ―かなりこれはいい漢じ―」

10人が取り組んだ書体づくりの過程

「文字塾展 ―かなりこれはいい漢じ―」

「書体をつくりたい」という思いを持った10人の塾生が書体設計士・鳥海修(字游工房代表)のもとに集まり、1年かけて自分の書体に向き合う文字塾。その第三期生の1年間の成果を発表する展示「文字塾展 ―かなりこれはいい漢じ―」が、6月7日(日)から開催されている。

文字塾展DM

文字塾展キービジュアルは、10人の塾生それぞれの制作書体で構成されている。

文字塾では明朝体のかな(ひらがな、カタカナ)をつくることを基本としているそうだが、塾生たちが生み出す書体は、いわゆる「明朝体」から想像する範囲におさまらない(今期はゴシック体を制作している塾生も)。初めて書体づくりに取り組む学生からプロの書体デザイナーまでバックグラウンドも多様な塾生が生み出す書体は、まさに十人十色で、自身の個性と思いが投影された闊達な表現が並ぶ。壁に展示されている「成果」としての完成書体、その組み見本を見ているだけでも書体の可能性に胸踊るが、この展示のキモはここではない。

会場には、各塾生がそれぞれの書体に真摯に取り組んだ過程を詰め込んだ制作ファイルが展示されている。文字塾に通い始めて、まずは近年ではすっかりやらなくなってしまった「文字を手で書く」ということに慣れるために、あるいはつくりたい文字の骨格をつかむために、繰り返し鉛筆で文字を書き続ける。骨格がかたまったら、20mm角の大きさに筆で50音の文字を書く。ここでも、「筆で文字の形をつくる」ことに苦労を重ね、時間を費やす塾生もいる。 以降は、目指す書体にたどりつくまで、48mm角で形を調整したり、逆に小さいサイズでチェックしてみたり、あるいは一度デジタルデータ化して文章を組んでみて粗をチェックしたり。最初の「骨格を書き、20mm角に筆で50音を書く」過程以降の文字のつくり方は、各塾生によってさまざまだ。

さらに制作ファイルを読み込んでいくと、塾生と鳥海塾長とのやりとりが垣間見える。最初は筆運びもおぼつかなかった塾生の文字が、ある時点から急に化けて、まとまり始める。その過程に、鳥海塾長のやさしく、ときに熱いアドバイスがある。「この書体はまさにここで生まれたのだ」という誕生の瞬間が、そこにおさめられている。さらに、最終段階で各塾生に送られた小宮山博史氏(書体デザイナー/活字書体史研究者)からの直筆の講評が胸を打つ。この内容と照らし合わせながら完成した書体を見ることに、どれほどの学びがあるかしれない。

「文字」「書体」をつくってみたいと思っている人はもちろんのこと、デザイナーなど使う側の人たち、読む人、書く人……、文字に接するさまざまな人たちに、ぜひ見てほしい展示だ。会場には、第一期〜三期までの塾生の作品をおさめた冊子や、各フォントベンダーの見本帳もずらりと並び、持ち帰れるようになっている。


展覧会DATA

  • 展示作家:伊藤 庄平/岡野 邦彦/狩野 宏樹/小澤 祥/西塚 涼子/       鳥海 修/直井 薫子/田中 裕梨/半田 藍/平井 玲子/廣澤 梓
2015年6月9日

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人物プロフィール

鳥海修

1955年山形県生まれ。多摩美術大学GD科卒業。1979年株式会社写研入社。1989年に有限会社字游工房を鈴木勉、片田啓一の3名で設立。現在、同社代表取締役であり書体設計士。大日本スクリーン製造株式会社 のヒラギノシリーズ、こぶりなゴシックなどを委託制作。一方で自社ブランドとして游書体ライブラリーの游明朝体、游ゴシック体など、ベーシック書体を中心に100書体以上の書体開発に携わる。2002年に第一回佐藤敬之輔顕彰、ヒラギノシリーズで2005年グッドデザイン賞、 2008東京TDC タイプデザイン賞を受賞。京都精華大学特任教授。

展覧会レヴュー

雪 朱里

フリーランスライター・編集者。デザイン、文字、印刷、くらしの歴史のまわりで活動中。著書に『文字をつくる 9人の書体デザイナー』、編集・執筆に『文字講座』、『活字地金彫刻師・清水金之助』、大日本印刷『一〇〇年目の書体づくり―「秀英体 平成の大改刻」の記録』、小塚昌彦『ぼくのつくった書体の話』、雑誌『デザインのひきだし』など。

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