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「亀倉雄策のデザイン 未来に向けて」生誕100年記念シンポジウム 後半

イベントレポート

「亀倉雄策のデザイン 未来に向けて」生誕100年記念シンポジウム 後半

写真提供:毎日新聞社/撮影:三澤威紀

亀倉雄策氏の生誕100年を記念したシンポジウム「亀倉雄策のデザイン 未来に向けて」(主催=毎日新聞社)前半に続き、レポート後半をお届けする。


グッドデザイン普及に貢献した「Gマーク」 青木史郎氏(日本デザイン振興会・常務理事)

写真提供:毎日新聞社/撮影:三澤威紀

デザインを通じて産業や生活文化を高める運動として定着してる「グッドデザイン賞」。その象徴ともいえる「Gマーク」は、亀倉氏によってデザインされたものだ。

青木氏は「Gマークは、グッドデザイン賞の理念を支え続け、大きな発展に導いてくれた。そして今日では、グッドデザインの範囲を超え、アジア各国との国際連携や被災者とともに歩む活動などのシンボルともなっている」と、「Gマーク」が果たしてきた役割を説明する

グッドデザインの制度は、1957年に開始された。青木氏によると当時の日本は、コピー商品の輸出で利益を出していたという。当然、国際社会からは非難され、政府としても、コピー商品ではなく、オリジナリティの高い商品を作ることで、国際的秩序に準じた貿易立国を目指すために、グッドデザイン活動がスタートした。

現在、「Gマーク」の認知度は80%で、青木氏は「単に認知されているだけでなく、そのデザインに対し、信頼が寄せられていることが大きな特徴」と語る。「Gマーク」が、生活者が商品に信頼を寄せるデザインとして確立できたことは、日本のデザイナーの大きな財産であると青木氏は強調する。

また、亀倉氏は「Gマーク」だけでなく、デザイン振興運動のマークについても制作している。「グッドデザイン制度の発足に前後するかたちで日本をはじめ世界各国でデザイナーの団体がいくつか誕生している。1973年には、京都で『世界インダストリアル会議』が開催されることとなり、そのシンボルマークを亀倉先生にお願いした。そのマークは、現在、当会のシンボルマークとなっている」(青木氏)


共感の時代に突入したデザイン  佐藤卓氏(グラフィックデザイナー)

写真提供:毎日新聞社/撮影:三澤威紀

高度経済成長とデザインとの関わり。そんなテーマで佐藤氏の講演がスタートした。「戦後、日本が豊になっていく中でデザインが大切になっていった。豊さは経済の指標であり、デザインが経済にのみ込まれるようなかたちで現在に至っているように感じる」(佐藤氏)     

商品が売れるためのデザイン。もちろん、デザインはその役割を担っており、現在もその機能が常に求められている。しかし、佐藤氏は、単に売るためのものでなく、デザインは共感の時代に突入していると説明する。

佐藤氏は「亀倉先生をはじめ先人達が切り拓いてきたデザインというものを検証していくことが必要になる」と述べた上で、その重要な取り組みとして「未知化」を挙げる。「未知化」とは、すでに知っていると思っていることを、いかに知らないかということに気付くきっかけをデザインで創ること。

佐藤氏は、「人は知っていると感じてしまうと、それ以上のことを知ろうとはしない。だが、世の中には知らないことの方が圧倒的に多いはず。デザインは、ものに色やかたちを与えるためだけにあるのではなく、いろいろなことに気がつけるきっかけを作れると確信している」と、これからのデザインが果たすべき役割について説明した。


伝統と文化を見直し新たな未来創造へ  原研哉氏(グラフィックデザイナー)

写真提供:毎日新聞社/撮影:三澤威紀

「デザインの役割は、希望的なビジョンを明確に指し示し、潜在的な可能性をかたちにしていくこと」。そう語る原氏は、工業国として戦後70年間を歩んできた日本は、今後、観光を含め、新たな価値を創っていく国になっていかなければならないと訴える。

日本政府が今年発表した日本への海外観光客数は、2020年までに3,000万人に達すると予測されている。つまり、観光という産業が、今後の日本の成長に大きな役割を果たすことが予想される。そのため原氏は、日本のこれからの使命として「テクノロジー」とは別に、日本の国土をベースとした美意識資源や伝統資源を使った新しい未来を創っていくことが必要であると訴える。「日本の美意識には緻密・丁寧・繊細・簡潔がある。また、日本には変化に富んだ四季があり、いたるところに温泉がある。さらに世界に誇れる食文化も有している」(原氏)

戦後の日本は国土を製造業のために使い、成長を遂げてきた。しかし、これからは海外からのお客様をどのように招き入れていくかを考えるのがデザインの役割であると原氏は語る。つまり、経済成長の時代は、プロダクトデザインの向上が求められてきたが、これからは「潜在しているものを目に見える様にしていくことが必要」と原氏は言う。「亀倉先生が教えてくれたことは、ローカリティーというバリューを把握することと、それを世界に打ち出していくこと。現在は、グローバル時代と言われているが、これは金融や貿易などでの経済用語となっている。しかし文化の本質はローカリティーの中にある。自分たちが生まれた国で、いかに価値を掘り出し、世界に発信していくかが大事である」(原氏)


今も生き続ける亀倉雄策の精神  浅葉克己氏(アートディレクター/日本グラフィックデザイナー協会・会長)

写真提供:毎日新聞社/撮影:三澤威紀

すべての講演の総括として登壇した浅葉氏は「総括は最も苦手」と宣言し、得意の書道で文字をしたため、亀倉氏との思い出を書で綴った。

浅葉氏が披露した書は「亀倉雄策」。会場は大いに沸いたが、浅葉氏は「生誕100年といわれると、そんなに遠くへ行っちゃったのか、と改めて感じる」と感慨深げに亀倉氏を振り返る。

続いては、「離陸着陸」。これは1972年に出版された亀倉氏のエッセイ集の題名であるが、浅葉氏は「僕も亀倉先生のサイン本をもらったが、読むのに2、3年はかかる。そのため当時、亀倉先生は本を贈ったのに誰からも礼状が来ないと怒っていた」と、浅葉氏らしく同書のエピソードを語る。

そして「日宣美」。これは浅葉氏も参画した日本宣伝美術会のことだが、その思い出を記した文章を浅葉氏は次のように朗読した。

「僕たちの青春は、B全ポスターそのものであった。B全ポスター畑を耕し続けたのである。日宣美に出品するために一年中、B全ポスターについて、その思想、その哲学のすべてをそこに注ぎ込んだ」

最後に披露された書は、浅葉氏が「本当に素晴らしい本」と評価する亀倉氏が編集長・アートディレクターを務めたデザイン誌のタイトル「クリエイション」。浅葉氏は、「なかなか掲載してもらえなかったが、15冊目にやっと載せてもらえた。何度、読んでも参考になり、また亀倉先生の文章を読むだけでも価値がある」と、グラフィックデザインの世界で今もなお大きな存在感を示す亀倉氏の功績を讃えるとともに、その意志は、今回の登壇者をはじめ、多くの後輩デザイナーたちに伝承されていると語り、総括を締めくくった。

2015年11月2日

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