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レポート1:聶永真(アーロン・ニエ)氏

「台湾ブックデザイン最前線」レポート

レポート1:聶永真(アーロン・ニエ)氏

2015年台湾文化光点計画

「台湾ブックデザイン最前線」レポート(1)

東京藝術大学美術学部は11月9日、上野校地 中央棟2F 第3講義室において、台湾を代表する聶永真(アーロン・ニエ)氏と何佳興(ホー・ジァシン)氏の2人のデザイナーを招聘し、両氏の講演と日本人デザイナーとの交流シンポジウム「台湾ブックデザイン最前線」を開催した。その中から今回は、聶永真氏の講演をレポートする。

デザインは「絶対的感性」がモノを言う 聶永真 氏

「クールな世界」への憧れ

台中出身の聶永真氏。彼の学生時代は、大人への憧れ、そして都会に憧れを抱いて過ごした日々だった。コカコーラやMTVなど、現在の彼のデザインの源流となる「クールな世界」に感化された青春時代である。

大学時代は、アルバイトをしながら勉学に励み、賞金が出るデザインのコンペに参加するようになる。そこで誠品書店のコンペで大賞に輝き、2年間にわたって誠品書店と企画デザインの仕事ができる権利を獲得。これが大きな転機となり、ブックデザイン、さらにはCDジャケットといったパッケージデザインの世界にも足を踏み入れる。

彼の卒業制作は「本」だった。「当時はインターネット環境が整い始めた頃。周りが3Dや映像といったニューメディアに走る中、平面のグラフィックデザインを手掛けることに不安があったのも事実」と当時を振り返る。それから半年後にその本が刊行され、それを機に、出版や音楽など、様々な業界からのアプローチがあった。「大学院に籍を置きながら、運良くデザイナーとしてのキャリアをスタートすることができた。それから15年になる」

聶永真氏 ブックデザイン1

「自己期待」と「不安」

「自己期待」の重要性を訴える聶永真氏。その思いを聴講者へ次のように語った。

「自分が『良いデザイナーである』ということを自らに言い聞かせてきた。私にとってこれは不変的なスタンス。裏を返せば、情熱をもって創作を続けていく中で、良くないものを決して創らないという決意でもある。優秀なデザイナーはたくさんいる。それが自分にとって『不安』でもあるわけだが、多くの素晴らしいデザイナーがいるからこそ、自分も学べ、豊かな経験が積めることに気付くのも重要だ。そういう気持ちの調整を行った上で、常に刺激を受けつつ、自分も良いものを作り続けていくことを自分に約束する」

聶永真氏 ブックデザイン2

「ポップカルチャー」と「言語、母国語」

彼は「ポップカルチャー」と「言語、母国語」に大きな影響を受けている。「言語、母国語が自分のデザインのコアになっている」と語る聶永真氏は、文字の持つ個性や表情、意味に加え、視覚的な記号としての機能にも着目している。

自分が使い慣れていない言語の場合、また違う効果が表れたり、それがおもしろかったり、おかしかったりする。文字本来の意味に共感しているわけでなく、たまたまその形自体が美感センスをくすぐることもあるわけだ。

「個人の生きてきた経験によって培ってきた美感センスが最も重要だと思う。私たちがデザインを手掛けるとき、その意図を重視することもあるが、多かれ少なかれ、そこでは『絶対的な感性』がモノを言う」

聶永真氏 ブックデザイン3

作家と会わずにブックデザイン

「我々はデザイナーであるとともに、一読者でもある。読者として本を読んだ後にデザイナーとしてどうデザインに置き換えるかというところでは、自分の一番軟らかい感性を用いて作り上げていく」という聶永真氏。彼は、ブックデザインにおいて、作家と会ったりコミュニケーションを取ることを避け、編集者とともに本を最終的にデザインしていくという。

「なぜ、作家と会わないかというと、彼らは結構面倒臭い人種だからである。作家は自分の作品に対して様々な創造を主観的に持っている。私はすべての読者によっていかに客観的にその本が再解釈されるかに期待しているからだ」

一方、彼は翻訳書のデザインも多く手掛けている。基本的にそのブックデザインは原作とは全く違うものになっている。「本が異なる言語のマーケットに行ったときに、その現地のデザイナーがそのマーケットに最も適している言語表現で客観的に再現することがベストだと考える」


「ブックデザインの最大の役割は、書店に並ぶ膨大な本の中からデザインの力によって手に取ってもらい、即座に理解してもらうこと。本と読者の新しい繋がりの橋渡しになりたい。どのデザインにもメッセージは重要だが、それはシンプルでいいと思っている。なぜならそれが一番記憶に残るからである」(聶永真氏)


「台湾ブックデザイン最前線」レポート2は後日掲載いたします。

2015年11月17日

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