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第154回受賞作を大予想!(後編)

本文用紙と書体で予想する芥川賞&直木賞

第154回受賞作を大予想!(後編)

第154回芥川賞および直木賞、二大文学賞の受賞作を、本文用紙と書体から予想してみようというこの企画。雑誌『デザインのひきだし』の編集長、津田淳子さんとのやりとりに続いて、いよいよ受賞作の予想をします!

第154回芥川賞・直木賞 候補作一覧

というわけで、さっそく候補作の本文用紙と使用書体を見ながら、受賞作を予想したいと思います。はじめに候補作がどんな本文用紙、そして書体を使っているのかをご紹介します。まずは芥川賞候補作から。

第154回芥川賞候補

『家へ』

講談社/石田千著

『家へ』石田 千(Amazon)

  • 本文用紙:アルトクリームマックス(日本製紙)
  • タイトル:リュウミン + 游築五号仮名
  • 作者名:リュウミン
  • 本文書体:イワタ明朝体オールド
  • 装丁:有山達也

『異郷の友人』

新潮12月号/上田岳弘著

『シェア』

文學界10月号/加藤秀行著

『死んでいない者』

文學界12月号/滝口悠生著

『ホモサピエンスの瞬間』

文學界10月号/松波太郎著

『異類婚姻譚』

群像11月号/本谷有希子著


『家へ』以外は、選考の時点では未だ書籍化されていないため本文用紙と書体について調べることができず。つづいて、直木賞候補作をご紹介いたします。

第154回直木賞候補

『つまをめとらば』

文藝春秋/青山文平著

『つまをめとらば』青山文平(Amazon)

  • 本文用紙:OKプリンセス(王子製紙)
  • タイトル:正楷書CB1
  • 作者名:リュウミン B
  • 本文書体:秀英明朝L
  • 装丁:大久保明子

『ヨイ豊』

講談社/梶よう子著

『ヨイ豊』梶よう子(Amazon)

  • 本文用紙:ソリストN(中越パルプ工業)
  • タイトル:良寛E + 楷書MCBK1
  • 作者名:游築見出し明朝体 + 游築初号かな、欧文は Arnold Boecklin
  • 本文書体:リュウミン
  • 装丁:川上成夫+奥田朝子

『戦場のコックたち』

東京創元社/深緑野分著

『戦場のコックたち』深緑野分(Amazon)

  • 本文用紙:OKライトクリーム(王子製紙)
  • タイトル:リュウミン + 秀英5号 B
  • 作者名:ゴシックMB101 EB、欧文は Courier Bold + Courier Regular
  • 本文書体:リュウミン(ルビにはルビ字形を使用)
  • 装丁:藤田知子

『羊と鋼の森』

文藝春秋/宮下奈都著

『羊と鋼の森』宮下奈都(Amazon)

  • 本文用紙:アルトクリームマックス(日本製紙)
  • タイトル:イワタ明朝体オールド + たおやめ
  • 作者名:イワタ明朝体オールド
  • 本文書体:リュウミン
  • 装丁:大久保明子

『狐狼の血』

KADOKAWA/柚月裕子著

『狐狼の血』柚月裕子(Amazon)

  • 本文用紙:アルトクリームマックス(日本製紙)
  • タイトル:A1明朝(平体2)+ 築地体三号細仮名
  • 作者名:A1明朝
  • 本文書体:リュウミン
  • 装丁:坂詰佳苗

いよいよ、受賞作の予想です!

第154回芥川賞受賞作は?

まず芥川賞なんですが、発表のタイミングで書籍として出版されているのは毎回少ないんですよね。今回は『家へ』一作のみ。

そうなんです、だから予想はできませんね。すみません。

そうですね、残念ですが。「予想できず」ということで。

第154回芥川賞受賞作は?

では直木賞行ってみましょう。まずは津田さんから、本文用紙による受賞作予想お願いします!

直木賞ですが、ズバリ『つまをめとらば』[OKプリンセス]が受賞すると思います!

おお。その作品じゃなくて紙が受賞するような言いっぷり、シビれますね。

ここ数年、日本製紙や中越パルプ工業、そしてPB品を出している紙の卸商などの本文用紙が受賞していて、王子製紙が全然とっていないんです。正直に言うと、王子がとってないというのはある意味当然というか、私の個人的な目からすると、どうにも王子製紙は紙に本腰入れてないんじゃないかと思えてしまうような感じがしていて、新製品もあまり出ないし、逆に廃番とか受注生産品に格下げ(?)されてしまう紙が多くて。それにラインナップされいてる紙でも、いざ使おうと思うと在庫がなかったり。こういうことが続けば、全体的に使われる機会が減ってくるわけで、そうなれば候補作に使われることだって少なくなってきますよね。

でもそうした中、昨年出た久しぶりの新製品が[OKプリンセス]。なんとなくこれが受賞するような気がします。王子製紙に紙をもっと頑張って欲しいという応援する気持ちが、無意識にも入っているのかもしれませんが。

なるほどー。愛憎こもったといいますか、紙への想いが熱く込められた予想ですね。ありがとうございます。

では、type.center が予想する、直木賞の受賞作です。 直木賞候補は、ほとんどが装丁にモリサワフォントを使用しているんですね。それだけ大勢力であるとも言えるわけなんですが。しかも、おもしろいことに漢字書体と仮名書体を混ぜて使用しているものがほとんどなんですね。これだけ小説がたくさんあると既成フォントをそのまま使わないぞ、というこだわりが感じられます。そんな中、『羊と鋼の森』は、漢字に「イワタ明朝体オールド」を、そして仮名部分に欣喜堂の「たおやめ」を使っています。これはなかなかレアケースで、注目したいところです。

それともうひとつ、『つまをめとらば』は、すべてが仮名文字なので必然的に漢字と混ぜて使うことができません。その楷書体一本で行こう、というストレートさが逆に際だって良いな、と。作者名の「リュウミン」も素直な選択でしょう。本文書体を見ても、他の作品がどれもリュウミンを使うものが多い中、唯一「秀英明朝」を使用しており違いを感じます。ま、津田さんの予想に乗っかったというのもありますけど。

ということで、『羊と鋼の森』『つまをめとらば』のダブル受賞と行きたいと思います。書体でいうなら「イワタ明朝体オールド」+「たおやめ」「正楷書CB1」が受賞するでしょう。

第154回直木賞・本文用紙による受賞作予想

『つまをめとらば』の「OKプリンセス」(王子製紙)

『つまをめとらば』青山文平(Amazon)

第154回直木賞・書体による受賞作予想

『羊と鋼の森』の「イワタ明朝体オールド」+「たおやめ」

『羊と鋼の森』宮下奈都(Amazon)

『つまをめとらば』の「正楷書CB1」

『つまをめとらば』青山文平(Amazon)


というわけで、本文用紙と書体による芥川賞・直木賞の受賞作予想でした。1月19日の受賞作発表の結果は、はたして……。こちらでどうぞ

※ 使用書体は当サイトによる独自調査によるものです。書体見本などと照合したものになりますが、実際の使用書体とは異なる可能性があります。ご了承ください。

2016年1月18日

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人物プロフィール

津田淳子

編集者。1974年神奈川県生まれ。編集プロダクション、出版社を経て、2005年にグラフィック社入社。2007年『デザインのひきだし』を創刊する。デザイン、印刷、紙、加工に傾倒し、それらに関する書籍を日々編集中。
http://dhikidashi.exblog.jp/

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塚田哲也

大日本タイポ組合のひとり。新世界タイポ研究会のメンバーでもある。ソロ活動として、デザイン関連ダジャレコンテスト「グッドデザイソ」をtwitter上で開催中。

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