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エンブレム最終4候補を書体でみてみる

ほぼ二字コラム

エンブレム最終4候補を書体でみてみる

東京2020大会エンブレム最終候補4作品が4月8日に発表されて、25日に最終決定されるとか。前にも書いたようにエンブレムそのものはもちろん、それに伴って開発されるオリジナル書体もホントは注目していきたいところ。最終候補に使われている書体はどんなもんなんでしょうか。軽く調べてみました。


東京2020大会エンブレムデザイン募集のご案内(募集要項)(PDF)によると、「ワードマーク等について」という項目があります。アレ「ワードマーク」って言うんですね。以下に内容を引用します。

ワードマーク等について
ワードマーク(②)はすべて大文字で「TOKYO 2020」としてください。オリンピック・パラリンピックともに同じ書体とし、既存の書体ではなくオリジナルの書体を開発してください。なお、応募段階では汎用の書体の使用も認めますが、最終的にはオリジナルの書体が必要なため、採用にあたっては修正をお願いすることがあります。

では4つの案に使われている書体について、どんな書体っぽいかひとつづつ見ていくことにします。なおサンプル画像として貼り込んでいる組み見本は、MyFontsの試し打ちをそのまま貼ってるのでカーニングとか細かい調整はしていませんのであしからず。

A

DIN 1451 Mittelschriftで組んでみた

「A. 組市松紋(くみいちまつもん)」の案のワードマークに使われているのは、「DIN 1451」系の書体。「DIN」というのは「ドイツ工業規格(Deutsches Institut für Normung)」のこと。日本でいう「JIS」みたいなもんですね。その規格番号1451番がこの書体。1931年につくられたこの書体は道路標識に使われたり、直線と曲線の単純な組み合わせから機械彫刻にも使われてます。

B

こちらMyriad Pro Semibold

「B. つなぐ輪、広がる和(つなぐわ、ひろがるわ)」の下に配されているのは、「Myriad」のセミボールドあたりを元に、セリフを付けたかんじ。「PARALYMPIC GAMES」のほうはセリフ付いてませんね(あったとしても小さくて見えない)。 Adobeから1992年にリリースされたこの書体は、Adobeのコーポーレートや製品ロゴ、そしてAppleもつい最近、オリジナル書体「San Francisco」にする前は、やはりこの書体を使っていました。

C

Trebuchet MS Bold Italicで組んだもの

「C. 超える人(こえるひと)」で使われている書体、これがなかなか分からなかったです。シンプルなくせに特徴あって、すぐに分かりそうなんだけども……。「TOKYO 2020」はオリジナルで書き起こしてるのかなー。デザインした本人がこの記事読んでたらコッソリ教えてください。イタリックで組まれた「Paralympic Games」に使われているa, i, e の形も特徴的で、ヒューマニスト・サンセリフ体の「Trebuchet MS」っぽくもあるんだけど。TrebuchetはMicrosoftのフォントで、その名は攻城用の投石機から由来してるとか。

D

こちらTrajan Pro Bold

「D. 晴れやかな顔、花咲く(はれやかなかお、はなさく)」に使われてるのは、「Trajan」あたりを元に、いくぶん直線的にしたかんじですかねー。説明するまでもない、「トラヤヌス帝の碑文」に基いてデザインされたド定番書体です。


Clarendon Com

ちなみにサノケンのやつは「Clarendon」かなーと思ったのですけど、どうやら少し違うらしい。でも同じスラブセリフ系(ていうかもはやClarendon系といってもいい)のFont Bureauの「Belizio」がいちばん近いとか。当初発表された修正案では「TOKYO」でしたけど、後日公開された原案はCap & Lowで「Tokyo」ってなってましたね。


Avenidaはアールデコ書体。

もいっちょついでに原さんのやつ「Avenida」っぽいけどたぶん違ってそう。これアールデコ系の書体だからAとか個性の強い形が合わないかも。一から書き起こしてるだろうなきっと。


Helvetica Extra Compressedで組んでみた。亀倉エンブレムとは「K」の形とか違いますね。

そうそう、忘れちゃいけない1964年の東京オリンピック、亀倉雄策デザインのエンブレム。このとき日本で制定書体としてはじめて使われることになったNeue Haas Grotesk(後のHelvetica)は、亀倉デザインのポスターのクレジット部分や河野鷹思デザインのプログラムなどにも見ることができます。そのへんの詳細は、かつて柳本浩一さんが書いた記事へのリンクを貼っておきますね。柳本さんにもこのへんのこと語ってほしかったな。

さて、エンブレムに使われた「TOKYO 1964」のワードマークは何の書体を使ってたんでしょう? HelveticaのCompressedかなーと思ったのですけど、こちらのリリースが1966年らしいんですね(Wiki調べ)。ちなみにデザインはマシュー・カーター。細かいディテールも違ってるし、もしかしたら亀倉さんがレタリングで起こしてるのかもしれない。詳しい人情報プリーズ。


というわけで、4つの案、それと過去の案のワードマーク(なかなか言い慣れない)の書体を見てきましたが、ジオメトリック系、ヒューマニスト・サンセリフ系、ローマン系と、すこしづつ違ってるのが面白いですね。ていうか面白いじゃ済まなくて、一週間後にはこの中からどれか一つが選ばれちゃうわけなんですけども。書体として、どう展開されていくことになるのか、引き続き注目していきたいと思います。

2016年4月18日

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塚田哲也

大日本タイポ組合のひとり。新世界タイポ研究会のメンバーでもある。ソロ活動として、デザイン関連ダジャレコンテスト「グッドデザイソ」をtwitter上で開催中。

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