文字による文字のための文字のサイト

type.center
殿

そしてプリンスはシンボルとなった

ほぼ二字コラム

そしてプリンスはシンボルとなった

プリンスが57歳でこの世を去りました。もちろんその音楽もさることながら、“to”を「2」、“for”を「4」、“you”を「U」、“are”を「R」と表記したり、言葉遊びというかタイポグラフィ的というか、当時高校生だった僕にはめちゃめちゃ新鮮で、グラフィカルにも興味そそられまくりの一因でもありました。もっと言うと、“I”を「eye」にして目の絵で表わすとか、ポール・ランドより先にプリンスから教わったのです。


プリンスと文字といえば忘れられないのがやっぱり改名とその表記でしょう。それは1992年のアルバムタイトルとして初めて使われ(読めないんだけど日本では『ラブ・シンボル』と呼ばれる)、その後1994年にこのシンボルそのものに改名します。

呼び方のないこの記号となった彼は、「元プリンス」(The Artist Formerly Known As Prince)あるいはさらに略した「ジ・アーティスト」(The Artist)と呼ばれるようになりました。ラジオなど口頭で言うだけなら楽ですが、困ったのは雑誌や新聞といった「文字」を扱うメディア。当時契約していたレコード会社、ワーナーはこのデータをフロッピーディスクに入れていちいち送付して対応していた、という逸話もあるとか。ま、元はといえばワーナーとプリンスの契約のいざこざから勃発したこの改名騒動、詳しくは各自ググってご確認ください。


で、とにかくそのアーティスト名、文字データを持っていない人は「The Artist Formerly Known As Prince」を略して「TAFKAP」としたり、スマイリーのように「O(+>」と表記したりしていました。英文だったり横組みの文章ならいいですけど縦組みだと「O(+>」はちと厳しいかな。当時のロッキング・オンではワーナーから入手したのか分からないけどちゃんとそのデータを組み込んで表記していたのを覚えてる。

いっぽうそのころユニコード・コンソーシアムのメーリングリストでは、この記号を文字として登録するかどうか、という議論がなされていたようです。そんな中、1999年10月20日にMarco Cimarostiという人が、結合文字列(Combining Character Sequence)としてこのシンボルを表示させることに成功したという投稿をしています。

  • U+01AC(LATIN CAPITAL LETTER T WITH HOOK)Ƭ
  • U+030A(COMBINING RING ABOVE)◌̊
  • U+0335(COMBINING SHORT STROKE OVERLAY) ̵
  • U+032C(COMBINING CARON BELOW)◌̬

この4つを合わせたのがこちら。

Ƭ̵̬̊

テキストなのでコピペもできますよ。

その後、2000年にワーナーとの契約が切れると同時にふたたびプリンスに戻りました。当時は上記のように結合文字列を使って表記するしかなかったあのシンボル、いまの時代であれば、技術仕様的にも要望的にもUnicodeに登録される可能性がなきにしもあらず、という気がしちゃってます。

以上、プリンスで思い出される文字ばなしでした。話の次はやっぱり曲。これから、“Alphabet St.”を聴こうと思います(この曲が入ってるアルバム“LoveSexy”は全曲が1トラックにまとめられちゃってるから頭出ししづらいんだよなー)。R.I.P.

2016年4月22日

シェア

ほぼ二字コラム

塚田哲也

大日本タイポ組合のひとり。新世界タイポ研究会のメンバーでもある。ソロ活動として、デザイン関連ダジャレコンテスト「グッドデザイソ」をtwitter上で開催中。

連載記事一覧
今日
昨日
おととい
ちかごろ
あいうえお かきくけこ さしすせそ たちつてと なにぬねの はひふへほ まみむめも やゆよ らりるれろ わゐゑを ん がぎぐげご ざじずぜぞ だぢづでど ばびぶべぼ ぱぴぷぺぽ 0123456789.
連載記事一覧