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【前編】フォントデザインのプロセス/グラフィティと文字

TDC DAY 2016・RGB賞受賞作と文字周縁(やんツー×塚田哲也)トークまとめ

【前編】フォントデザインのプロセス/グラフィティと文字

RGB賞受賞作品《SEMI-SENSELESS DRAWING MODULES #2 - Letters》と文字周縁あれこれ

【前編】

6月4日、DNP五反田ビル1Fホールにて開催された「TDC DAY 2016」。その年のTDC受賞者が登壇し、プレゼンやゲストを招いたトークセッションをおこなう、毎年恒例の長時間に渡る文字づくしのカンファレンスイベント。その日トップバッターとなるトークをつとめたやんツー(yang02)と、ゲストの塚田哲也[大日本タイポ組合]が、自ら当日のトークの様子をここに再現、まとめサイトをつくりました。

自己紹介・イントロダクション

ということで初めまして、やんツーです。今日はRGB賞受賞作品の《SEMI-SENSELESS DRAWING MODULES #2 - Letters》(以下SDM2)を制作するまでの経緯と、少し複雑で難解な作品そのものについて詳しく、そして文字のデザイン以前や文字の未来、文字にまつわるあれこれについてお話したいと思います、よろしくお願いします。

はい、よろしくお願いしまーす。塚田です。TDC DAY当日は、聞き役とボケを担当しました。そこで出てきた話の中で、参照サイトが多かったりしたんで、いっそのことtype.centerで記事書いてよ、ってことで今こうして再現っぽい感じでテキスト化している、というワケですね。どの時間軸で書いたらいいのかよく分かんなくなってますけども、まずは自己紹介的なことから行きますか。

はい、僕は多摩美術大学でメディアアートを学び、普段はデザイナーではなくアーティストとしてデジタルメディアを用いたアート作品を制作して展覧会で発表する活動をメインに、デザインチームのTYMOTEやアート・デザインの情報サイトCBCNETのメンバーとしても活動しています。
受賞作のSDM2は、現在ロンドンでレジデンス中で本日は残念ながら来ることができなかった、アーティストの菅野創と制作しました。

菅野くんはここに居ないから好き勝手やられてる感じだけど、この紹介画像で問題ないのかな。ただのメキシコ人にしか見えないけど。

去年(2015年)の夏に制作したSDM2ですが、6月27日までギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催中の「TDC 2016」展を含めると、これまでに5つ展覧会に出展してきました。
作品では今なにかと話題の人工知能、を実装する一つの方法である機械学習という、システムがデータを学習して賢くないっていくという仕組みを取り入れています。そのせいなのか、それは関係ないのかわかりませんが、多くのお客さんにかなり難解で複雑な作品という印象を持たれます。
ということで、僕たちが作品でやりたかっとことを端的に説明するための動画を最初に紹介しておきます。

お、タモさん。髪切った?

そう、これはタモリさんの有名な芸の一つ「声帯模写」。SDM2はこれの文字版、文字の「形態模写」を人間ではなく機械にやらせようという試みです。

それではいったんCMでーす。

TDC 2010 RGB部門入選作品 《Urbanized Typeface: Shibuya08-09》- フォントデザインのプロセス

実は、ぼくはTDC 2010に大学院の修了制作《Urbanized Typeface: Shibuya08-09》をRGB部門で応募して入選してるんです。かなり自信があったのにその年に話題になったexonemoの《ANTIBOT T-SHIRTS》という作品にRGB賞をとられ本当に悔しい思いをしました。なので今回は悲願の受賞となりました。

このプロジェクトは、都市を移動したその軌跡で文字をデザインしようという試みです。例えばShibuyaというフォントなら渋谷区全域を移動可能範囲と指定し、GPSデータロガーで1秒に1ポイント位置情報を記録していき、そのGPSデータをGoogle Mapにプロットすると巨大な文字が現れます。1文字デザインするのにだいたい3~4時間自転車をこぎ、そのデザイン作業をアルファベット26文字+数字分繰り返して、最後にフォントデータとしてパッケージを作成しました。

僕がやんツーと初めて会ったのはこの作品のときですね。ICCで展示してたのみて。あのときは上から目線でモノ言ってすみませんでした(渋谷の地図を俯瞰で見ながら)。

左:AppleがデザインしたOsaka 右:やんツーが自転車をこいでデザインしたShibuya08-09

どうやら伝統的に、よく出来たフォントは都市の名前がついているようで(Helveticaはラテン語で「スイス」を意味するHelvetiaの形容詞)、Appleによってデザインされた、Macintoshにプリンストールされてる多くのフォントに都市の名前がついてるのはそのせいだと考えられます。

Appleで最近開発された書体はSan Franciscoだしね。
関係ないけどtype.centerのtwitterアカウントでは、書体っぽい地名の天気を毎日ツイートしてます。Osakaとか、ヒラギノとか、フォント帖とか。

最後のはダジャレじゃないですか!
でも、GeorgiaやMonaco、Osakaといった都市名がつけられたフォントにはなぜその都市の名前がつけられたのか、必然性がありません。だとしたら「その都市の名前でなければいけないフォントをデザインしよう、しかもデザインのプロセスを全て記録して共有できるフォーマットも込みで」というのがこの作品をつくったモチベーションです。フォントをデザインするというのはどういうことか?と。

僕ら大日本タイポ組合も、“Real Osaka”って書体を考えたことあって。その書体で「ありがとう」って打つと「おおきに」って字が表示されるっていう。まぁ字っていうより翻訳か。

《SENSELESS DRAWING BOT》- グラフィティと文字

ぼくは高校のころからグラフィティ(スプレーやマーカーを使って公共圏に違法に書かれる落書き行為)に興味を持っていて、ストリートアートと厳密には異なる、ハードコアでマッチョな思想からの影響が、現在も自分の根底にあります。

うさぎ年の2011年の年始に描かれた縁起のいいグラフィティ「福」

いまでも一年に一回、年始に地元の友達と、祖母の家の納屋のシャッターにスプレーで描いてます(笑)この画像ではぼくは右側の「福」の文字を担当しました。
さっき紹介した《Urbanized Typeface》も最初は「世界一巨大なグラフィティを地球にボムしよう」みたいな発想からスタートしてます。

この、おばあちゃんちのシャッターに描かれたやつはGoogleストリートビューで観られるんだ、面白いねぇ。リンク貼っておきますね。

個人情報特定されちゃうんでやめてください。

東京の街に書かれたタギング

この画像は東京の街で見つけた、「タグ」とか「タギング」と呼ばれる、即興で瞬間的に書かれる類のグラフィティで、今日どこの都市でも目にする、ある種都市のランドスケープの一部となってます。これはライターたちが自分の名前を書いて「おれはここにいたぞ」なんて主張するためのものと言われますが、読めなくないですか? 読めませんよね? 少なくともグラフィティに興味がない人は読むの難しいと思います。

署名が独自に発展していった、花押みたいにも見えてきますね。

グラフィティのコミュニティの中では「オリジナリティが一番あるやつが最もクール」と信じられていて、オリジナリティにおける公開コンペ(審査員不在)みたいな状況でしょうか。それがいきすぎた結果、読むのが困難なデザインの文字にいきついてしまった。そんな激しいバトルがストリートで繰り広げられてるのとは裏腹に、グラフィティに興味がない人にとってそれはただの犯罪行為であり都市のノイズですよね。 「それってもしかしたら人間じゃなくてロボットみたいなものがめちゃくちゃに書いても本質的には同じことじゃないの?」みたいな問題意識から制作したのが《SENSELESS DRAWING BOT》(以下SDB)でした。

二重振り子の動きはカオス現象の一種で極めて複雑で再現性が低く、改造した電動スケボーが左右に動き、上に載った鉄フレームの二重振り子の振れ幅が大きくなっていきカオスな動きに入るとスプレーを噴射し、グラフィティのように見えるラインを一瞬で書き上げます。 グラフィティライターをシミュレートするというようなコンセプトでつくったこの作品ですが、グラフィティの形態模写的であり、後から振り返ると今回の受賞作品であるSDM2に大きくつながってきますね。

うん。大きくつながってくるんだけども。

はい。ここでようやく本題の受賞作品SDM2についての話になります。

だけどさ、ちょっとこれまでの話が長いよ。
ここでいったん区切って、続きは後でにしよう。

え……。「TDC 2016」展示期間おわっちゃうじゃないですか!


というわけで、受賞作品《SEMI-SENSELESS DRAWING MODULES #2 - Letters》についての話は、後編に続きます。

TDC 2016

  • 会期:2016年6月3日(金)〜6月27日(月)
  • 会場:ギンザ・グラフィック・ギャラリー (ggg)
  • 時間:11:00〜19:00 日曜・祝日休館
    入場無料
  • 住所:東京都中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル/tel.03-3571-5206
2016年6月23日

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人物プロフィール

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やんツー

1984年神奈川県生まれ。2009年多摩美術大学大学院デザイン専攻情報デザイン研究領域修了。デジタルメディアを基盤に、書やグラフィティなどの文字/身体にまつわる表現や、ストリートアートやパブリックアート等、公共圏における表現にインスパイアされた作品を多く制作。デザインスタジオTYMOTEのメンバーとしても活動している。

塚田哲也

大日本タイポ組合のひとり。新世界タイポ研究会のメンバーでもある。ソロ活動として、デザイン関連ダジャレコンテスト「グッドデザイソ」をtwitter上で開催中。

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