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TDC DAY 2016・RGB賞受賞作と文字周縁(やんツー×塚田哲也)トークまとめ

【後編】学習、人工知能、創造性

RGB賞受賞作品《SEMI-SENSELESS DRAWING MODULES #2 - Letters》と文字周縁あれこれ

【後編】

6月4日、DNP五反田ビル1Fホールにて開催された「TDC DAY 2016」でのRGB賞受賞者やんツー(yang02)と、ゲストの塚田哲也[大日本タイポ組合]とのトークを本人たちが自ら再現。これまでの経緯を語った前回につづいて、いよいよ東京TDC賞2016 RGB賞受賞作品の《SEMI-SENSELESS DRAWING MODULES #2 - Letters》の解説へと進みます。

《SEMI-SENSELESS DRAWING MODULES #2 - Letters》- 学習、人工知能、創造性

ということで後編です。「TDC 2016」展は6月27日(月)までだし日曜休みだから、この記事を読んだ人が展覧会行ける日ってめっちゃ少ないじゃないですか。とっとと受賞作の説明してください。

展覧会の案内をさりげなく入れていただきありがとうございます!
ここでようやく本題の受賞作品《SEMI-SENSELESS DRAWING MODULES #2 - Letters》(以下SDM2)についての話になります。
昨年、ぼくと菅野は「人間固有の創造性とは何か」というテーマのもと、3つの新作ドローイングマシンを制作しました。SDM2はそのシリーズの中の一つで、文字というモチーフが登場する前に「学習」というキーワードがまずテーマとしてありました。

SDM2のドローイング

共同制作をはじめた当初は”SENSELESS”と名がつくように、機械には全く知性がなかったのですが、いかに自律的に振る舞う装置をつくるかという問題設定から、昨今のブームより若干早いタイミングで人工知能に興味を持ち始めました。
そして今回のSDM2で良いご縁があり、日本ユニシスのプログラマー坂本さんの協力のもと、機械学習システムを実装したドローイングマシンの制作が実現しました。

この作品でシステム+装置がやっていることは要するに文字を構成する線の解体と再構成です。人間の手書き文字を座標データとしてデータベースに蓄積し、一画一画の線に一度解体、その線の種類や組み合わせを分類し、文字らしい線の組み合わせや間隔を学習した上でそれらを再構成しています。

僕がこの作品を好きなのは、「書かれた文字」を解体して、それを解析した後に、もう一回、機械が「書く」ってところなんですよね。
ボールペンでおなじみのBIC社が、平均的な書き文字フォントをつくるみたいなプロジェクトをやったことがあったんですけど、平均的な字って、なんとなく想像ついちゃいますよね。だから、すげぇビッグデータを扱って、いや、BICだからビックデータか、、、

せっかくマジメな話になってきてるんだからボケなくてもいいですよ!

んーと、そういう大量のデータを集めたとしても、答えはなんとなーく思ったとおりでつまんない。そもそもちゃんとした手書きじゃなくマウスとかトラックパッドで書かれたデータだったりするし。 僕は、それだけたくさんのデータを集めるんだったら、予想できそうな「平均値」をわざわざ出すんじゃなくて、逆に「どこまでが文字として読めるか」の際を見極める、みたいなことを探ったほうが面白いと思っちゃうんです。んで、おそらく、そういった「文字とそうでないものとの差異」みたいなものを、このSDM2は狙ってる。

はい、そういう差異を考えつつ、一方であまりにも膨大なデータが集まってシステムが賢くなりすぎちゃったら普通に読める文字を書いてしまうのでは、という期待もあったりしました。最終的なアウトプットの見え方はけっこうシステム任せみたいなとこがあります。

そっか、でも、それが「文字に見えてしまう」ことがあるわけですよね。見る人の知識がそうさせちゃう。しかも、人が手書きした字を元に解析して、機械がいちいち物理的に字を「書いて」る。このマシンのパーツも、この装置のためにわざわざ図面起こしたとか?

そうです。メカの設計は菅野が担当していて、パーツは全て3Dプリンタで刷るかレーザーカッターでアクリルを切り出してます。

ね。そこまでしてわざわざ「書く」。そこにはもちろん紙の材質とか気温、湿度とか、どんなペンか、インクの量とか、そういうのに影響されるわけですよね。環境に。リアルに環境変数が変わる中で、書いていく。そこは人間と何ら変わりないっていうか。唯一、感情が無いってことになるんだけども、その機械がけなげに書く姿に、感情すらも見出してしまうっていうかね。これは筆とか鉛筆とかの延長線上にある「書く道具」なんだなぁと思ったり。

なんか、前編と比べてマジメに語っていただきありがとうございます。

ただのダジャレおじさんで終ってしまうのもシャクだし、ていうか前編はあらすじみたいなもんですからね。受賞作についての文字量を増やしていこう!


文字のように見える線を集積する、アセミック・ライティングと呼ばれる表現の手法があって、現代の作家だとストリートアーティストとしてのバックグラウンドをもつホセ・パルラなんかがその代表格なのですが、SDM2はそれを人工知能と機械で実践してると言えるかもしれません。

左がホセ・パルラの作品で右がグラフィティのタギング。ホセは上手くタギングの特徴を抽出し抽象化して表現してます。

前編でお見せしたタモリの声帯模写もわかりやすい例えで、他にもリサーチの段階で参照した作品で実は、塚田さんたちのプロジェクト、新世界タイポ研究会の《横書き仮名》があります。

あ、ありがとうございます。ていうかホセ・パルラとかタモリの声帯模写とかの「○○のように見える(けど違う)」ってのと同じ括りにされると、ちょっと違うんですけどね(笑)。けっこう真剣に「読み書きできる、実用性のある文字を作ろう」としてます。
文字が生まれる条件の、どれかひとつのパラメーターをほんの少し変えただけでも、結果はまったく違う文字になる。新世界タイポが扱ったパラメータは、字を書く方向に着目したってわけなんです。


文字を抽象化してく僕らの作品とは対極ですが、話の流れから関連のある面白いプロジェクトがエヴァン・ロスによる《Graffiti Taxonomy》。

彼はこのプロジェクトで無数にあるタギングの文字デザインを採取して細かく分類しようとしました。骨の折れる仕事ですね。。

1,000人いたら1,000通りの書き方があるからねー。しかも一人の書き方も常に一定というわけじゃないし。

言語や文字って基本的には長い年月をかけて自然に変化していって徐々につくられてきたものじゃないですか。それらを自然言語と呼ぶみたいですが。それとは逆にプログラミングの言語みたいに、合理的に考えられて人工的につくられる言語ってあるのかなと思って調べたら人工言語ていうのは確かにあるみたいで、ロジバンというのが中でも有名みたいですね。

後半に来てまとめに入ると思ったら急にいろいろ盛り込んできたな。

一方で、人工知能を応用したアート作品がこれからどんどん生まれてくると思うのですが、ぼくらの作品も今後アップデートをしていって、もっと高度な人工知能を使うようになったらシステムが自ら、機械同士がコミュニケーションをとるための超合理的で効率の良い文字を独自に開発してしまうんじゃないかとか妄想が膨らみます。人工知能言語的な。

うん。言葉は時代と共に変わってきているから、文字も当然変わってきてもいいと思うんですよね。だから、文字の未来みたいなもんを想像するのって結構好き。

そんな未来の文字なんかにも想いを馳せつつ、全然まとまりきらない感じですが、塚田さん最後になにかまとめ的にお願いします!(笑)

えー

えー、ってw

まぁ、なんだかんだ難しい話をしちゃうと、「難解で複雑すぎィ!」ってなっちゃうんで、「TDC 2016」展の会場で実際に動いてる、この作品を見てもらうのが一番だと思います。字って、書くものなんだな、というのをあらためて気付くっていうか。今、書かれる字ってのは、こんなところに居るんだな、というのを感じるというか。それだけでいいんじゃないですかね。

あ、すみません最後に告知になっちゃうんですが、SDM2はこれからコンセプト及びハード&ソフトウェア含めブラッシュアップさせて、8月11日から開催されるあいちトリエンナーレ に出展する予定です。10月23日まで開催してるので、その間名古屋に行くチャンスがあれば是非見に行ってみてください!

その前に「TDC 2016」の京都巡回展もあるでしょ。ギャラリートークもやるらしいじゃん。こんどは菅野くんも帰ってくるみたいし。ボケ役が楽しみですね!

菅野にムチャ振りしないでください。
きょうはありがとうございました!

はい、ありがとうございましたー


TDC 2016

京都dddギャラリー第209回企画展

  • 会期:2016年7月22日(金)- 8月27日(土)
  • 会場:京都dddギャラリー
  • 時間:11:00-19:00
  • 8月21日(日)の特別開館・土曜は18:00まで
  • 休館:8月21日を除く、日曜・祝日 入場無料
  • 住所:京都府京都市右京区太秦上刑部町10/tel.075-871-1480
  • 展覧会情報サイト

ギャラリートーク「TDC RGB賞 ドローイングマシン“SEMI-SENSELESS DRAWING MODULES #2 - Letters”をめぐって。」

  • 日時:2016年7月23日(土)14:30-16:00
  • 出演:菅野創+やんツー+井口皓太(TYMOTE/世界)
  • 会場:京都dddギャラリー
  • 入場無料、要予約、先着70名
    参加ご希望の方は、7/4(月)11:00よりこちらからお申込ください。
2016年6月23日

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人物プロフィール

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やんツー

1984年神奈川県生まれ。2009年多摩美術大学大学院デザイン専攻情報デザイン研究領域修了。デジタルメディアを基盤に、書やグラフィティなどの文字/身体にまつわる表現や、ストリートアートやパブリックアート等、公共圏における表現にインスパイアされた作品を多く制作。デザインスタジオTYMOTEのメンバーとしても活動している。

塚田哲也

大日本タイポ組合のひとり。新世界タイポ研究会のメンバーでもある。ソロ活動として、デザイン関連ダジャレコンテスト「グッドデザイソ」をtwitter上で開催中。

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