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ストリートに根ざした文化を背景とした手書き文字の世界「MOJITEN 1」

イベントレポート

ストリートに根ざした文化を背景とした手書き文字の世界「MOJITEN 1」

堀切菖蒲園にあるHHH galleryにて、7月2日から24日まで(土日のみ)開催している「MOJITEN 1」について、主催者で出展者の一人であるUsugrow氏に展覧会や自身の作品についてインタビューをおこなった。ストリートカルチャーを背景として独自に進化するカリグラフィー(手書き文字)の魅力に迫る。

ストリートに根ざした文化を背景とした手書き文字の世界「MOJITEN 1」

Usugrow インタビュー

薄:Usugrow氏
tc:type.center

「すべてが画一化して行く中で、地域、人々が持つ文字を無くしてはいけないと思った」

tc:

今回の文字展のコンセプトと企画した経緯を教えて下さい。

薄:

文字が好きなので。いろいろな文字を紹介したいと思っていました。 各民族や各地域には歴史や伝統を伝える書道があり、グラフィックデザインには人々に目的をわかりやすく伝える、興味を持たせる為のタイポグラフィがあり、そして、美術の世界でもその文脈の一部となってきた、ストリートアート(この言葉は好きではありませんが)にも、アーティストの自由な個性が詰まった文字をクリエイトする文化があります。それらをひとまとめに文字好きの人にみてもらいたい、というのが今後も続く文字展の企画意図です。

もう一つ重要なテーマとして、グローバルスタンダードといってすべてが画一化して行く中で、地域、人々が持つ文字を無くしてはいけないと思ったからです。多くの人が持つくせ字にしても、それは愛おしい個性です。違った文字に興味を持ち、触れるというのは、相手の文化や個性を受け入れようとする気持ちがないといけません。そういった気持ちが世界に今とても必要なものだと思っているんです。

tc:

今回アーティストをキュレーションするにあたって、意識したことや何か意図したことなどはありますか?

薄:

今話した文字展の第一回目として、まずは僕の身近な世界からと思い、グラフィティやストリートカルチャーをルーツに持っている一線のアーティスト、文字そのものにスタイルがあり、アクティブに活動しているアーティストに参加して頂きました。

左:PITC、右:MAYONAIZE

母国語のアクセントを引きずって発音するように、癖を書体に落としこむ

tc:

CRYPTIKの梵字のようなスタイルや、アラビア文字を思わせるようなUsugrowさんの文字の装飾など、それぞれの作家で個性的なスタイルは確立されつつ、そのルーツになる字体があるように感じました。例えばUsugrowさんの場合はどのようにしてあのようなデザインの書体に行き着いたのですか?

薄:

例えば僕は、漢字、書道のフロウ、ヴェニスのタギング、LAのチョロスタイルといったグラフィティのレタースタイルに当初影響を受け、そこが基礎となりました。アラビア書道に興味を持って少し習っていましたが、描いていてとても気持ちのよいラインがあってそれをながれるまま自分の書体に取り入れてみました。

僕は主に英語を描いているのですが、外国にいくと中華系の人が話す英語、日本人が話す英語、アラブ系が話す英語、メキシカンが話す英語などなど、それぞれ母国語のアクセントを引きずった英語を話すのがとても面白いな、といつも思っていました。まるで自分の書体みたいだなとある時思いました。英語という同じ言語を話しているのに聴こえ方にそれぞれの母国語が透けてみえる感じ。今はそれを書体にしてもっと詰めたら面白いなと思ってます。各言語のアクセントがいろいろと見え隠れする書体。書体を形にするにあたっては、規則性を大事に、どのような道具でも矛盾無く描けるように考えています。

Usugrow氏のカリグラフィ

薄:

一つのセンテンスだけでなくどんな言葉を書いても繋がりに違和感が無いように。A-Zのウェイトが等しくなるようになど。僕は音楽も好きなのですが、文字の羅列がリズムの気持ちよさと共通する事も見つけました。

CRYPTIKもA-Zのアルファベットですがチベット文字のエレメントが入ってます。彼はLAのチベットアートのコミュニティと関わりがあります。BIG SLEEPSは彼自身も話している通りLAギャングのレタースタイルに彼のオリジナリティが加わっています。

皆、一つの言葉を形として成立させれば良いロゴでは無く、規則性がある書体として成立させています。

CRYPTIK氏のチベット文字のエレメントを取り入れたカリグラフィ

可読性/可聴性 - 例えば文字にメロディをつけるように

tc:

意味や音を記譜するための媒体である「文字」をモチーフとして扱いつつも、もはやどの作品もその原型をとどめないほどにデフォルメされ「読めない文字」に昇華してると感じるのですが、文字の可読性についてはどの程度意識されていますか?

薄:

TPOというかその場その場にあった文字があると思います。
文字は意味や音を記譜するための媒体であると出ましたが、唄に例えることができます。メッセージを文書、資料のように記すのではなく、メロディをつけるように装飾したり、想像をかき立てるように書く(描く)んです。アナウンサーがニュースを伝えるときはしっかり聞き取れるように話さなければいけません、シンガーはメッセージが多少聞き取りずらくてもメロディにのせ美しく唄ったり叫んだり、韻を踏んだり。そして心に訴えかけます。

tc:

多くの作家がグラフィティライター/ストリートアーティストとしてのバックグラウンドをもっているようで、生で大きなミューラル作品を見たいと強く思いました。 MOJITENの今後の展開があれば教えて下さい。

薄:

今回参加したアーティスト全員、キャンバス同様ミューラルも描いています。彼らのミューラルも是非みて欲しいですね。
今後は、最初に話した2番目の文字展を企画中です。


MOJITEN 1

  • 会期:2016年7月2日(土)〜7月24日(日)
  • 会場:HHH gallery
  • 時間:12:00〜20:00 土日のみ開廊
    入場無料
  • 住所:東京都葛飾区小菅2-21-17

2016年7月13日

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人物プロフィール

Usugrow

パンク、ハードコアシーンでのフライヤー制作から始まったUSUGROWのアートは、 繊細なイラストレーションと共にレタリングも追求していた。

当初、日本の書道、LAのチョロスタイルに影響を受けていたレタリングスタイルは、 各地への旅、歴史、宗教、文字への学びを経て、独自の変化を遂げてきた。

漢字、アラビック、ラテンアルファベット等の要素を織り交ぜたレタリングスタイルの一つをCosmopolitan(世界主義者)と名付け、歴史、自然との対話をテーマにキャンバス、ミューラル作品を制作している。

http://usugrow.com, https://www.instagram.com/usugrow/

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