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「かなのいろは」小塚×鳥海 対談(前半)

和文と欧文 「かなのいろは」レポート

「かなのいろは」小塚×鳥海 対談(前半)

和文と欧文

「かなのいろは」テーマに小塚昌彦氏と鳥海修氏が対談

関西において文字に関する勉強会や講演会を企画しているイベント「和文と欧文」は8月2日、中之島デザインミュージアム de sign deにおいて、小塚書体で知られる小塚昌彦氏と、ヒラギノ・游書体で知られる鳥海修氏による対談「かなのいろは」を開催した。

今回のイベントは、日本タイポグラフィ協会発刊のTypographics ti;(タイポグラフィックス・ティー)276号(7月22日発刊)の特集「かなのいろは」のスピンオフ企画として開催されたもの。同特集に掲載できなかった内容を中心に、より深く「かな」にフューチャーした対談が展開された。

漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベット、記号が混在する世界でも珍しい日本語組版。鳥海氏は、使用頻度から「かな」の役割の大きさを示した上で、「『かな』を変えれば組版イメージが大きく変わる」と述べ、時代とともに変化を遂げてきた「かな」の歴史を紐解いた。

一方、小塚氏は、「タイプフェイスを手掛けて60年以上。その間、如何に既成概念を排除し、束縛から逃れるかに終始した」とし、縦組みで作られた「かな」を横組みでも使用する日本語組版の難しさを「我々は十字架を背負っている」と表現。同氏のタイプデザイン原則「息遣いのあるタイポグラフィ」を説いた。

さらに、対談終了後には、小塚氏が昭和32年に毎日新聞社で撮影した8ミリフィルム「母型のできるまで」も特別上映された。


鳥海氏が「かな」の歴史を紐解く

対談の口火を切ったのは鳥海氏。「中国から伝わった漢字をベースに、日本人が作った『かな』。日本人によって作られた唯一の文字である」とし、「『かな』のデザインが、ある意味書体の善し悪しを決める」と断言し、本題に入った。

まず鳥海氏は、自らの文章を例にとり、文字の使用頻度について、ひらがな48%、カタカナ3%、漢字44%、記号5%、アルファベット0%と紹介。これらが混在する世界でも珍しい日本語組版において、およそ半数を占める「かな」の役割の大きさを示し、「『かな』を変えれば組版イメージが大きく変わる」と述べた上で、日本人の手で時代とともに変化を遂げてきた「かな」の歴史を紐解いた。

1世紀頃に伝わった漢委奴国王印(かんのわのなのこくおういん)や、5世紀頃に聖徳太子が書いたとされる法華義疏(ほっけぎしょ)、9世紀頃に空海が書いたとされる風信帖(ふうしんじょう)などの文字をスライドで紹介した上で、万葉仮名については、「朝鮮半島から伝わった考え方で、日本の話し言葉を漢字で書き表すことができる画期的な手法だった」と紹介。さらに、小野道風の書いた屏風土代(びょうぶどだい)について「抑えて、引いて、留めるという三折法で書かれている中国の文字に対し、これはS字を描くように書かれている」とし、骨や石などに彫って文字を書くことからはじまった中国と、紙に筆で書くことを前提にはじまった日本の違いを解説。その後も、漢字から「かな」に変わっていく途中の草仮名や、平安時代の高野切第一種(伝紀貫之)の上代仮名、鎌倉時代の藤原定家や親鸞の書いた文字、さらに江戸時代の本阿弥光悦が書いた文字、キリシタン版なども画像で紹介した。

一方、自らも参画した「嵯峨本プロジェクト」にも言及。これは、「嵯峨本の印刷技術の解明とビジュアル的復元による仮想組版の試み」に掲載された印字標本集をもとに、嵯峨本「伊勢物語」の古活字をデジタルフォント化するプロジェクト。2012年に発表した試作書体「嵯峨本フォントプロトタイプ」は、伊勢物語の一段と九段の全文を組むために必要と考えられる文字を選抜し、字游工房協力のもと試作したもので、鳥海氏はその過程を簡単に解説。「ぜひダウンロードして遊んで欲しい」と呼びかけた。


2014年10月1日

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人物プロフィール

小塚昌彦

タイプデザインディレクター。1929年生まれ。1950年から、毎日新聞社技術本部において1984年に定年退職するまで毎日新聞書体のすべてのデザイン制作・開発に従事。1985年から1992年、株式会社モリサワの常勤タイプデザインディレクターを務め、新ゴシックほか主要な書体のディレクションを行う。1992年~2002年、モリサワ賞国際タイプフェイスコンテスト審査員。1992年からアドビ システムズに勤務し、日本語タイポグラフィ・ディレクターとしてアドビ社のオリジナル書体 小塚明朝・小塚ゴシックを開発。1979年~1997年、愛知県立芸術大学 非常勤講師。1974年から国際タイポグラフィ協会(A.Typ.I)会員。2007年 第6回佐藤敬之輔賞(個人)受賞。

鳥海修

1955年山形県生まれ。多摩美術大学GD科卒業。1979年株式会社写研入社。1989年に有限会社字游工房を鈴木勉、片田啓一の3名で設立。現在、同社代表取締役であり書体設計士。大日本スクリーン製造株式会社 のヒラギノシリーズ、こぶりなゴシックなどを委託制作。一方で自社ブランドとして游書体ライブラリーの游明朝体、游ゴシック体など、ベーシック書体を中心に100書体以上の書体開発に携わる。2002年に第一回佐藤敬之輔顕彰、ヒラギノシリーズで2005年グッドデザイン賞、 2008東京TDC タイプデザイン賞を受賞。京都精華大学特任教授。

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