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セッション2:バンダイナムコスタジオの3氏が「ゲーム屋さんと文字」をテーマに講演

「Type&(タイプアンド)2016」レポート

セッション2:バンダイナムコスタジオの3氏が「ゲーム屋さんと文字」をテーマに講演

Monotypeが日本で主催する、書体のセミナーやワークショップを行うトークイベント「Type&(タイプアンド)」が10月21日・22日の2日間、東京都渋谷区恵比寿の「Daikanyama The Room1」において開催された。

開催初日の21日、小林章氏による「ここが知りたい、フォントのカスタマイズの実際」に続き、午後4時から6時までは(株)バンダイナムコスタジオの指田稔氏、鈴木貴晴氏、大和宣明氏の3氏が「ゲーム屋さんと文字」をテーマに講演。1970年代末期から90年代、そして現在のビデオゲームを通して、「ゲーム屋」ならではの文字に対する視点を語った。

*スクリーンに表示されているゲームは、旧ナムコ(現:株式会社バンダイナムコエンターテインメント)の製品です。


「アタリフォント」が主流であった70年代末期〜80年代

講演の冒頭、鈴木氏は「ゲームというものは紙の印刷とは違い、家庭にあるテレビの大きさによって文字の大きさも違ってくるので、何センチの文字という絶対数では表現することができない。ゲームの世界ではそれをpixelという数値で表している」と前置いた上で、テレビの画面の細かさ(解像度)について説明していった。

鈴木氏は大きなものから、4K(3,840×2,160)、HV(1,920×1,080)、iPhone7(1,334×750)、SD(720×480)などの解像度について説明した上で、「今日はさらに解像度の低い256×224ドットで構成されたゲームから紹介したい」と述べ、70年代末期のビデオゲーム黎明期に登場したビデオゲームの画面をモニターに映し出した。

そして指田氏が「1979年、旧ナムコが初のビデオゲームとして、ジービー、ボムビー、キューティーQなどのゲームを開発した。ここから弊社のビデオゲームの歴史が始まった。これが画面解像度224×256ドットの世界で構成されるビデオゲームの始まりである」と紹介し、通称「アタリフォント」と呼ばれる文字について説明。これは、米国アタリ社が1976年に開発した、CANON BALLに搭載されたフォントであり、70年代末期における初期のナムコのビデオゲームに使用されている書体は、ほぼ「アタリフォント」を参考に作字されたものとなっており、その後80年代以降も基本的なフォルムを変えずに長く使われることになったという。

さらに指田氏は、「224×256ドットの世界では、文字に割り当てられるのは8×8ドットほど。実際にはスペーシングが入るので7×7ドット程度であった」と説明を加えた。

続いて、80年代アーケードゲームとして、画面解像度224×288ドットの「パックマン」(1980)、「ディグダグ」(1982)、「ギャラクシアン」(1979)、「ボスコニアン」(1981)などのゲームを紹介。記号の世界に毛が生えたような時代から、徐々に性能が向上してくる80年代は、今までイメージと表現が乖離していた「作品世界」を、制約も多い中できちんと画面で表現しようという傾向が見えてきたという。

ただし、文字に関してはまだ単にスコアを表示するだけのものとして切り離され、一部の見出しを除いて相変わらず、ほぼアタリフォントが使われていた。容量の問題もあり、日本語をシステムで持つことも難しく、アルファベット(大文字のみ)と数字だけでやりくりされていたようだ。

このあと、「ゼビウス」(1983)、「源平討魔伝」(1986)、「ドラゴンセイバー」(1990)を紹介し、「80年代後半になると、さらにゲーム基板の性能が上がり、表現の幅が広がってきた」と指田氏。より深い世界観を持ったゲームが登場してくるが、基本的には90年代の初頭までは、ゲーム内で使われるフォントに関しては8×8ドットの世界で、ある意味ゲームの画面を補足するための「表示物」としての役割が大きく、それほどこだわったものは少なかったようである。

ただ、厳しい制約の中でも、これら3つのゲームにおいては文字のデザインも作品としての世界イメージと合わせることで、より統一された美しさを追求する意識も散見されたようだ。

ゼビウス」では、それまで重要視されていなかった、ゲームにおける独自の「世界設定」が深いレベルで用意され、ゲーム画面やサウンドもそれに準ずる形で、全体を統一した雰囲気でまとめることに成功した作品で、「今までのアタリフォントではなく、SF的な雰囲気を持つ通称『ゼビウスフォント』と呼ばれる独自のフォントが作成された」と指田氏。このフォントはこの後、様々な作品で使用されることになったという。

また、「源平討魔伝」は、全編和風のデザインで統一することが念頭に置かれたため、従来であればアルファベットとアラビア数字で済ませていた表示も、漢字で統一する試みが行われたという。

そして「ドラゴンセイバー」では、一部ではあるがファンタジーの世界に合わせたフォントが作られ、8×8ドットの世界の中でもセリフのついた装飾性の高い表現が試みられたという。

※=バンダイナムコエンターテインメントの製品です。


文字をグラフィックデザインの一部の要素として扱い始めた90年代

引き続き、90年代のゲームとして、はじめに「テクノドライブ」(1998)を紹介。これは、プレイステーション互換基盤を使用して作られたアーケードゲーム。「個人でもフォント制作が可能になり、個人作家が作成・販売していたフォントや、独自に制作した書体をフォント化したものを使用し、文字を単なるスコアなどの情報としてだけではなく、画面のグラフィックデザインの一部として、大きな構成要素として扱うようになった」と指田氏。

従来、バラバラに進行していた製品全体のデザインを統括したディレクションを施すことで、ゲーム筺体のデザインと画面内のデザインに統一感をもたせているという。

続いて、「エースコンバット3エレクトロスフィア」(1999)を紹介。これは、近未来の世界観で、ストーリーを重視したプレイステーション専用のフライトシューティングゲーム。ゲームの進行はすべて未来のネットブラウザ越しに進行するという特異な設定で、グラフィックデザインやフォントも完全に世界観を補強するためにデザインされ、極力「ゲーム」である客観と、ゲームの世界の境界をなくすための工夫がなされている。

2040年と設定された世界だが、サイバーな表現がありつつも、1960〜70年代に想像されていたようなレトロな雰囲気を持つ未来観を混在させるコンセプトでまとめられている。

「フォント選定にあたっては、まずは世界観のコンセプトが固まってから、それに沿うような形でグラフィックデザインを行い、最新テクノロジーと回帰したレトロ感の混在するイメージに合わせて、Helveticaなどのオーソドックスな書体と、いかにも未来風のオリジナル書体をフォント化して混在させている」(指田氏)。

さらに、プレイステーション用ゲーム「ミスタードリラーシリーズ」(1999)を紹介。このゲームでは、キャラクターの「雰囲気」とトーン&マナーに重点を置いた文字が使用された。全体を通してクラシックカートゥーンの雰囲気と、ヴィヴィッドな色使いの90年代末期のキッズファンシーイメージの混在したカラフルなイメージが特長で、オリジナルで制作したフォントも、カートゥーンイメージでまとめられている。

※=バンダイナムコエンターテインメントの製品です。


解像度の向上により、さらに見やすく、自由な表現が可能になった2000年以降

引き続き、2000年代のゲームを紹介。指田氏は、「ここから一気に解像度が向上し、表現の自由度も上がった」と前置いた上で、まずは「機動戦士ガンダム 一年戦争」(2005 PS2)を紹介。

機動戦士ガンダムというコンテンツは、ひとつのアニメーション作品を元に、長年にわたり実に多様な商品開発がなされており、デザインの展開においては様々な方向のバリエーションが試されている。このゲームは、ガンダムを操ってストーリーを進めるというオーソドックスなタイプのものではあるが、まずは新規性を感じさせるための差別化が念頭に置かれたようである。

今まで取り立ててフォーカスされていなかった、ガンダムの持つ「ハイテク感」「未来感」「宇宙感」をキーワードとして強調し、カラースキームやフォントを含めたグラフィックデザインでまとめられている。ここで使用されたフォントについて指田氏は、「全体のトーン&マナーに合わせて、宇宙感を強調するために独自に製作されたフォントは、NASAのワームロゴを意識して作られた」と解説した。

続いて、「7(セブン)〜モールモースの騎兵隊〜」(2000 PS2)を紹介。「解像度が向上したことにより、雰囲気を出すために市販のデザインフォントを使えるのではないかという話になり、このゲームではデザインフォントが使用されている。今では当たり前だが、これにより印刷とゲームの画面において、同じフォントを使えるようになった」と鈴木氏。

また、RPGとして「テイルズオブレジェンディア」(2005 PS2)を紹介し、非常に多くの文字(シナリオ)情報を読むことになるRPGジャンルについて鈴木氏は、「世界観を楽しんでもらうため、吹き出しの中はスタンダードな文字を選択。世界観を象徴する架空文字などは、個性的なもので制作されている」と解説した。

さらに鈴木氏は、「これまで様々なゲームを紹介してきたが、まだ液晶テレビは登場しておらず、ブラウン管の時代である」と続け、ゲームを開発するにあたりブラウン管の時代に苦労したこととして、「ゲーム用として用意したデータがそのまま表示されない。にじんだり、縮んで見えたりする。ゲームの中で作った絵が横に伸びたりすることもある」と振り返った。

そしてその上で、2016年に発売した「テイルズオブベルセリア」(PS4)を紹介し、「ハイビジョンが当たり前の時代になったゲーム画面」(鈴木氏)と、時代とともに高精細になり、文字も読みやすくなっていく様を、モニターを通して紹介した。

このあと大和氏が、自身が担当する「機動戦士ガンダム エクストリームバーサス マキシブーストON」(2016 AC)について紹介。これはゲームセンターで遊ぶゲームであるが、大和氏はそのロゴについて、「ゲームセンターは薄暗いので、視認性よりも目立つことをコンセプトに制作した」と説明。また、フォントについては「目立つところのフォントはオリジナルで作っている。ガンダムのデザインと合うように制作した」と説明した。

続いて、VR(バーチャルリアリティー)時代のゲームとして、「サマーレッスン:宮本ひかり セブンデイズルーム(基本ゲームパック)」(2016 PSVR)を紹介。これはかわいい女の子と部屋で一緒に過ごすというゲームであるが、VRのテキスト表示について大和氏は、「既存のゲーム画面と比較して、VRは視認性が落ちる。その要因としては、レンズを通して見るので歪みが生じたり、3D空間に表示するのでドットバイドットではないということ、ライティングや背景エフェクトの影響を受けること、表示の向き(プレイヤーに対して正面を向いているか)や、白色が膨張することなどが挙げられる。また、3Dモデルに貼り付けるテクスチャーとして表示されるため、従来のような○○ptという単位が基準値として機能しないなど、従来の基準が通用しなかった」と述べ、開発当初は手探りのスタートであったと振り返った。

そして大和氏は、「そんな中、視認性を高めるためには白い板に黒い文字を書いたらいいのか、それとも黒い板に白い文字を書いたらいいのかなどを比較検証するとともに、視認性を補えるフォントを探すなどしながら制作を進めていった」と説明した。

左から 指田氏、鈴木氏、大和氏

最後にまとめとして指田氏は、「ビデオゲームという媒体は、時代の最先端の技術に寄り添う形で進歩してきたが、時代の節目、節目に新技術が登場したとき、可読性や機能性についての模索がはじまり、そして新技術が成熟してくると、今度は世界観やデザインについての模索がはじまる。しかし、技術革新のスピードは加速度的に速くなっているので、VRにおける視認性の問題などもすぐに解消され、VRデバイスならではの文字表現が現れるだろう」との見解を示した。

※=バンダイナムコエンターテインメントの製品です。


2016年11月25日

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