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第156回受賞作を紙と書体で大予想!

本文用紙と書体で予想する芥川賞&直木賞

第156回受賞作を紙と書体で大予想!

第156回芥川賞と直木賞、二大文学賞の候補作が発表されています。それぞれの賞の選考および発表は2017年1月19日。

もはや恒例となりつつある、雑誌『デザインのひきだし』の編集長、津田淳子さんによる「本文用紙による受賞作予想」を今回も掲載します。受賞作を連続的中記録更新中の津田さん、はたして今回はどのような予想で来るのか。
今回もtype.centerからは大日本タイポ組合の塚田哲也が聞き手として、また「文字」のサイトならではの、書体による受賞作も予想(連続不的中記録更新中)してまいります!


予想の根拠はどこにある?

【塚田】さてさて今回もやってまいりました。よろしくお願いします。

【津田】よろしくお願いします。半年に一回のペースなんで、もう来たか、って感じですね。

そんな前回ですけども。また当てましたねー。

第155回直木賞の『海の見える理髪店』荻原 浩(Amazon)。本文用紙は「オペラクリームマックス」、タイトル書体は「A1明朝」

いやぁ、自分でもビックリしました。実は受賞作発表の日にちをあんまりよく覚えていなくって、台湾から帰ってくる飛行機の中にいるときに受賞作が決まったんです。機内でWifiも繋いでなかったんで、羽田に降りてスマートフォンを見たら、いくつもTwitterのメンションが飛んできてるし、メールもきてるし、それも「パウルきた!」とか「またまたあたりましたね!」とかで、一瞬「?」と思っていて、「あ、今日発表だったのか。うわー、また当たったの!?」と自分でも少し怖くなったくらいでした。

「パウル津田」の呼び名は定着してるんでしょうか(笑)
というか、ほんと怖いです。もはや外れる気がしないんですが。

うーん、根拠のない予想なだけに、なんていっていいかわかんないですよ(苦笑)。私の実力とか努力とかじゃ、どうしようもないことなんで。

まあね。実力だったらマジで怖いわ(笑)。

そうですよね(笑)ところで塚田センパイの書体予想はどうだったんですか?

う……。『家康、江戸を建てる』(門井 慶喜 作/祥伝社/装丁・かとうみつひこ)の「凸版文久見出し明朝 StdN EB」と予想してたのですけど、まぁ玉砕ですわ。

でも、受賞作となった『海の見える理髪店』『家康、江戸を建てる』の二作で決戦投票になり、僅差だったというニュースでしたね。惜しかった。

二位じゃダメなんですよ!

いやでもほんとに、なんていっていいかわからないとしかいえないです(笑)。もともと、本文用紙銘柄だけから予想するって、めちゃくちゃなんですから。

それが的中しちゃってるから、めちゃくちゃじゃ済まなくなってきてるんですけどね(笑)。
ところでいまあらためて、津田さんから送られてきた今回の受賞予想の書かれたメールを見たんですけど、これ「本文用紙占い2017上」ってファイル名ですね。「占い」なんだ、って(笑)。

そうです(笑)。

なんかそれで納得いきました(笑)。

それでは今回も占っていただきましょう。まずは候補作とその本文用紙と書体のご紹介です。まずは芥川賞候補から。


第156回芥川龍之介賞候補作品

『キャピタル』

文學界 12月号/加藤 秀行

『ビニール傘』

新潮 9月号/岸 政彦

『縫わんばならん』

新潮 11月号/古川 真人

『カブールの園』

文藝春秋/宮内 悠介

『カブールの園』宮内 悠介(Amazon)

  • 本文用紙:オペラクリームウルトラ(日本製紙)
  • タイトル:凸版文久見出し明朝EB
  • 著者名:凸版文久見出し明朝EB
  • 欧文書体:Neue Helvetica Cond Bold
  • 本文:イワタ明朝体オールド
  • 写真:渞 忠之
  • 装丁:石崎 健太郎

『しんせかい』

新潮社/山下 澄人

『しんせかい』山下 澄人(Amazon)

  • 本文用紙:オペラクリームマックス(日本製紙)
  • タイトル:ヒラギノ角ゴオールド
  • 著者名:ヒラギノ角ゴオールド
  • 本文:秀英明朝
  • 題字:倉本 聰
  • 装幀:新潮社装幀室

芥川賞候補作は選考の時点では書籍化されているもののみご紹介となります。つづいて、直木賞候補作をご紹介いたします。

第156回直木三十五賞候補作品

『十二人の死にたい子どもたち』

文藝春秋/冲方 丁

『十二人の死にたい子どもたち』冲方 丁(Amazon)

  • 本文用紙:OKライトクリーム(王子製紙)
  • タイトル:本明朝新がな
  • 著者名:筑紫Aオールド明朝
  • 欧文書体:Cheltenham™
  • 本文:リュウミン
  • アートワーク:矢部 弘幸
  • 装丁:関口 聖司

『蜜蜂と遠雷』

幻冬舎/恩田 陸

『蜜蜂と遠雷』恩田 陸(Amazon)

  • 本文用紙:アルトクリームマックス(日本製紙)
  • タイトル:太ゴB101
  • 著者名:太ゴB101
  • 本文:秀英明朝
  • 装画:杉山 巧
  • ブックデザイン:鈴木成一デザイン室

『室町無頼』

新潮社/垣根 涼介

『室町無頼』垣根 涼介(Amazon)

  • 本文用紙:アルトクリームマックス(日本製紙)
  • タイトル:正楷書CB1
  • 著者名:見出しゴMB31
  • 欧文タイトル:Adobe Garamond
  • 欧文著者名:Garamond Premier
  • 本文:秀英明朝
  • 装画:吉田 史朗
  • 装幀:新潮社装幀室

『また、桜の国で』

祥伝社/須賀 しのぶ

『また、桜の国で』須賀 しのぶ(Amazon)

  • 本文用紙:嵩高書籍55A(三菱製紙)
  • タイトル:游築見出し明朝体
  • 著者名:リュウミン+游築見出し明朝体
  • 欧文著者名:Garamond Premier
  • 本文:ヒラギノ明朝
  • 装画:永井 秀樹
  • 装丁:多田 和博

『夜行』

小学館/森見 登美彦

『夜行』森見 登美彦(Amazon)

  • 本文用紙:ソリスト(N)(中越パルプ工業)
  • タイトル:筑紫Aオールド明朝
  • 著者名:秀英初号明朝
  • 欧文著者名:Monotype Baskerville
  • 本文:リュウミン
  • 装画:ゆうこ
  • 装丁:岡本 歌織

本文用紙は定番化されてきた

はい、そういうわけで今回の候補作が並んだわけですけども、本文用紙の傾向のようなものはありますか?

今回だけじゃなくここ何年もずっとですが、直木賞候補も芥川賞候補もすべて 嵩高紙 かさだかし と呼ばれる、密度が低い、厚みはあるのに軽い紙が使われてることですかね。候補作以外も含めて、近年、嵩高紙じゃない本文用紙を使っている本を探すほうが難しいくらい。

なるほどー。声に出して読みあげたい紙ですね。「かさだかし」。

あとは日本製紙の紙が多かったなとちょっと思ったくらいでしょうか。逆に意外な紙が全然なかったです。定番が来たというか。

書体のほうで言うと、モリサワの書体がやはり多くて、本文も「リュウミン」が定番どころではあるんですけど、今回の候補作は「秀英明朝」が多めです。新潮社にその傾向があるのかな、と。『新潮』の本文が「秀英明朝」ですからね。
あと『また、桜の国で』の本文に「ヒラギノ明朝」が使われていて、この企画で初エントリーでした。ここは注目していきたい。

あと、これも別に候補作だけの話じゃないんですが、やはり文芸書はクリーム書籍用紙が多いんですね。今回の候補作もすべてクリーム書籍ですが、一時期、白い書籍用紙を使った本が目につくなと思っていたんです。でもそれはノンフィクションだったりエッセイだったりしたのかな(記憶が危うい)。

クリーム書籍用紙にマッチする本文書体選びというのも、けっこう重要かもしれないですねー。

紙が先か、書体が先か。

つぎにタイトル書体のほうですが、こちらもモリサワが強くて、いわゆる見出し系書体から選ばれることが多いのですが、とくに歴史ものは「正楷書CB1」を使うことが多いかも。使いやすい楷書体なのかもしれないですね。それと、「筑紫Aオールド明朝」がちょいちょい使われてきている。

第156回直木賞受賞作は?

じゃあ、予想いきましょうか。
なんと今回は0.1秒で決めたとか!

そうなんですよ。前回の予想のとき、「オペラクリームマックス」を使っている『海の見える理髪店』が受賞して予想も的中だったわけですが、そのときにちょっと迷っていたのが三菱製紙の「嵩高書籍用紙55A」を使っている『家康、江戸を建てる』と、「メヌエットフォルテクリーム」『ポイズンドーター・ホーリーマザー』だったんです。中でも「嵩高書籍用紙55A」はどうにも捨てがたい……と思っていて、次はこれが来るんじゃないかなと思っていたんです。

僕が予想した『家康、江戸を建てる』だ。

そう。そして、今回の候補作の本文用紙銘柄を並べてみたら、あるじゃないですか、「嵩高書籍用紙55A」が。もう何も考えずに「これ」で決まりですよ(笑)。

えーと、つまり……

『また、桜の国で』(須賀しのぶ著/祥伝社/装丁・多田和博)です。

何も考えずに決まりだよ、と(笑)。

そう(笑)。根拠なんてないです。ただ単に、前回「次は、嵩高書籍用紙55Aがくる」という思いが浮かんでいたので、それに従ったまで、というか。こういうのは考えてもどうにもならないんで、もう直感で。後付で考えれば、三菱製紙の紙は品が良いというか、上質感があっていいなと最近特に思ってるからかもしれません。

上質感かー。

次点は「ソリスト(N)」を使った、『夜行』ですかね。ソリスト(N)は何回か前の直木賞をとっていると思うんですが、もうそろそろ来そうというか。

「ソリスト(N)」は、『流』(東山彰良著/講談社/第153回直木賞受賞作)で使われましたね。というか、作品タイトルじゃなくて紙の銘柄で話を進めるの、やっぱいいですね(笑)。

ははは。今それを考えてて思い出したんですが、私が予想し始めてからの直木賞は、連続で同じ本文用紙銘柄が受賞したことがないんですよね。なんでだろ?

今回の候補作に「オペラクリームマックス」はないので、どれが受賞しても連続受賞はないですね。ちなみに芥川賞候補の『しんせかい』が使ってますけど、これ、僕は芥川賞を取るだろうと予想を立ててるんです。

まぁ、そうなんですか! 芥川賞は毎回全ての作品が揃わないから予想は立てられないんですけどね。

はい。といっても紙で選んでるわけじゃなくて、もちろん書体なんですけどね。予想立てるときって、直木賞候補作しか揃わないのでその中で選ぶわけですけど、明朝体多いですよね。あと歴史ものが入ってくるから楷書系

さっきも言ってた、書体の傾向ですね。

明朝体、ほんとうに微差なので調べるのが大変で、この企画考えたはいいけど実はめちゃめちゃ億劫なことに気付きまして(笑)。だけど前回くらいから書体探偵ことakira1975が調べてくれるので楽になりました。
いっぽう書店で文芸書の棚全体を眺めると、けっこうゴシック系多いなぁと思うわけです。あのへんの装丁家やデザイナーが使ってんのかなぁと思いつつ見てるんですけどね(笑)。

あのへんの(笑)

だからここらでゴシックも欲しいなぁと思っていたところ、今回の候補作を見てみたら、ひとつだけゴシックがあった。なので迷わずそれです(キリッ)。

私と選び方おなじじゃん!(笑)

こっちは根拠ありますよ(笑)。唯一のゴシックを使っている『蜜蜂と遠雷』(恩田 陸著/幻冬舎/ブックデザイン:鈴木成一デザイン室)は、本文が「秀英明朝」。で、芥川賞受賞予想した『しんせかい』も、タイトルがゴシックで本文が「秀英明朝」だった。どっちもゴシックと「秀英明朝」だったので確信した! この組み合わせで決まりです!

それを根拠というのか(笑)。

根拠とさせて(笑)。本家の芥川賞・直木賞の選考の場となる築地・新喜楽にあやかって、きょうのランチは渋谷の喜楽でラーメン食べてきたんだから(笑)。

私は直木賞は新喜楽の2階座敷で選考されるのにあやかって、会社の近くの九段下、三希房の2階で中華食べましたよ(笑)。

二人ともあやかってる(笑)。

ということで、第156回直木賞、本文用紙と書体による、それぞれの受賞作予想が決まりました。


第156回直木賞・本文用紙による受賞作予想

『また、桜の国で』の「嵩高書籍用紙55A」(三菱製紙)

『また、桜の国で』須賀 しのぶ(Amazon)

第156回直木賞・書体による受賞作予想

『蜜蜂と遠雷』の「太ゴB101」(モリサワ)「秀英明朝」(DNP)

『蜜蜂と遠雷』恩田 陸(Amazon)

……以上、今回も白熱した本文用紙と書体による芥川賞・直木賞の受賞作予想でした。1月19日の受賞作発表の結果は、はたしてどうなるでしょうか。発表をお楽しみにお待ちください。
(1月19日追記:発表結果はこちら!)

※ 使用書体は当サイトによる独自調査によるものです。書体見本などと照合したものになりますが、実際の使用書体とは異なる可能性があります。ご了承ください。

2017年1月17日

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人物プロフィール

津田淳子

編集者。1974年神奈川県生まれ。編集プロダクション、出版社を経て、2005年にグラフィック社入社。2007年『デザインのひきだし』を創刊する。デザイン、印刷、紙、加工に傾倒し、それらに関する書籍を日々編集中。
http://dhikidashi.exblog.jp/

本文用紙と書体で予想する芥川賞&直木賞

塚田哲也

大日本タイポ組合のひとり。新世界タイポ研究会のメンバーでもある。ソロ活動として、デザイン関連ダジャレコンテスト「グッドデザイソ」をtwitter上で開催中。

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