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『楽書』薄田泣菫

文字文学

『楽書』薄田泣菫

文字にまつわる小説・随筆などを青空文庫収録作品から一冊にまとめた『文字文学Ⅱ』(type.center 編)掲載作品から薄田泣菫の『楽書(『茶話』より)』冒頭部分をご紹介いたします。


楽書

薄田泣菫

 京都といふ土地は妙な習慣のあるところで、少し文字をつた男が四五人集まると、屹度きつと画箋紙ぐわせんし画絹ゑきぬをのべて寄書よせがきをする。亡くなつた上田敏博士は、そんな時にはきまつたやうに、ヘラクリトスの、

「万法流転」

といふことばを書きつけたが、それが少し堅過ぎると思はれる場合には、『松の葉』のなかから、気の利いた小唄を拾つて来てそれをさら/\と書きつけた。

博士は詩歌もうまかつたし、警句にも富んでゐたから、自分の頭から出たそんな物を書きつけたらよかりさうなものだのに、うしたものか、何時でも「万法流転」と『松の葉』の小唄を借用してゐた。

むかし王羲之わうぎし蕺山しふざんといふところに住んでゐた頃、近所に団扇売うちはうりばあさんがゐた。六角の団扇で一寸洒落た恰好をしてゐた。ある時王羲之のうちへも売りに来たが、こゝの主人は、唯の一本も買はないで、加之おまけにその団扇へべた/\楽書をした。(どこの国でも文学者や画家ゑかきなどいふてあひは、滅多に物をはないで、直ぐ楽書をしたがるものなのだ。


つづきは『文字文学 Ⅱ』にて。BCCKSの機能を利用して、このままお読みいただくことができます。


他の作品も一冊にまとめた『文字文学 Ⅱ』は、各電子書籍ストアで配信されているほか、BCCKSでの電子書籍版『文字文学 Ⅱ』の閲覧は無料、文庫本サイズの紙本を注文し購入することもできます。収録作品はtype.center bcck storeでご覧いただけます。文学であじわう文字をお楽しみください。

2018年3月29日

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