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その「おこだわり」、文字にもしたよ!!

ほぼ二字コラム

その「おこだわり」、文字にもしたよ!!

みなさんこんにちは、大日本タイポ組合の塚田です。このたび当サイトでかかえている連載のいくつかを放置したまま、「マンバ通信」というサイトで「字漫ばなし」というコラムをはじめてしまいました。

マンガで使われている文字について何か書きたいとちょうど思っていて、マンガのサイトと文字のサイトとどっちに書くべきかヘルベチカ……と思案した結果、あっちに掲載してもらったという次第です。当サイトとあわせて今後ともよろしくお願いします。


その「字漫ばなし」というコラムの第壱回では『伝染るんです。』『Dr.スランプ』という、僕に多大な影響を及ぼしたマンガをピックアップ。そこに使われている発音できない文字表記といったものをとりあげています。

『Dr.スランプ』は小学生のころ読んでほんとうにめちゃめちゃ影響を受けまして。あの書き文字、扉イラストに出てくる車をはじめとするメカの描き込み、スターウォーズ、そしてなんといっても耳の描き方。

それまでは『ドラえもん』を読んでいて「6」の形の耳の穴しか知らなかったから、鳥山明の線の多いの耳の描き方は衝撃的だった。じつは今でもラクガキするときつい、あの耳を描いちゃう。


……いや、マンガの話をするところでは無かった。文字の話をするサイトでした。

そういうわけで『Dr.スランプ』そして自分の中での第二次マンガブーム『伝染るんです。』(思い出話は割愛)、そして最近のマンガからも発音できない文字表記を使っているものとして『デッドデッドデーモンズデデデデストラクション』をとりあげました。この話の続きはあっちで読んでくださいね。

で、『伝染るんです。』も『デデデデ』も、スピリッツじゃん! と気付きまして。『Dr.スランプ』はジャンプだから集英社、スピリッツは小学館。僕ら大日本タイポ組合は週刊モーニングに掲載の清野とおるさんの『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』のコミックの装丁などしているのに、講談社のマンガをとりあげていなかった! 政治的にヤバいかな……twitterで告知したら監視されて仕事干されるかな、とビクビクしながらも、「発音できない文字表記を使ったマンガ」を講談社のコミックから新たに探すというニッチなミッションはインポッシブルと判断し、腹を括って公開に至ったのでした。


んで、その「字漫ばなし」コラムを入稿し終えて、ほっと一息毎週木曜のおたのしみ、お茶をすすりながら週刊モーニングを読んだんです。5月11日発売のNo.24。ひさしぶりの『おこだわり』も載ってました。「チーズグラタンコロッケバーガーの男」という話です。その後編。

と、読みすすめて行きますと、こんなシーンが目に飛び込んできたのです。

週刊モーニングNo.24『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』より

「チーズグラコロの男」ことSさんが、その美味しさのあまり、もはや「嬉しい」と発言、さらには自分は男なので「嬉しい」というより「※しい」と表記したほうが正確かもしれない、と、わざわざ新しい漢字を作字してまで発言するのです!

(※ は、男へんに喜)

これは……! なんということでしょう。講談社のコミックから面白い文字表記のマンガを探すのが大変だと思っていた矢先に、自分に比較的近いところでこんな面白い文字表記が生まれていただなんて……! 驚き半分、※しさ半分、入りまじった気分です。

(※ は、男へんに喜)


まぁ言われてみればたしかに「嬉」という字はどうして女へんなのでしょう。三省堂『漢辞海』によれば

遊び戯れる。たのしむ。[日本語用法]うれ-しい。心に喜びを感じる状態をいう。中世以降の用法。

となっている「嬉」。白川静の『字統』で調べてみると

喜は鼓楽して神をたのしませる意。[方言]に「江沅の閒、戲をいひて婬と爲す」「或いはこれを嬉というふ」とあり、婬戯を嬉という。

となっています。婬戯というのは男女のみだらなたわむれのことのようなんですが、でもどうして「女へん」なのかまでは書かれていません。


そんなところにまで目をつけて、このマンガでSさんは「美味しさ」を表現したかったのかと思うと、その「おこだわり」っぷりに感服すると同時に、ここで作られたこの新しい字は、昨今話題のジェンダー論についても一石を投じるものとなっているのかもしれない、そんな気すらしてきます。

先の「字漫ばなし」コラム第壱回には間に合わなかったものの、こうして紹介できてよかったと思ってるんですが、よーく考えてみると、この字も「発音できない」かと言われると「うれしい」と読める漢字なわけで、いずれにしてもとりあげるのは微妙だったかも。結論としては今回こちらのコラムに書くのが関の山といったところで丸く収めたい。


そんな『おこだわり』「チーズグラタンコロッケバーガーの男」が掲載された週刊モーニング、みなさんも見てみてね! と思ったらもう新しいNo.25が発売されちゃってるんですね。こちらも入稿のタイミングが遅れたか……。

でもたぶん電子版の「Dモーニング」とか、電子書籍版とかで読めますよね。べんりべんり。あとは、『おこだわり』の単行本化までお待ちいただければ、僕らも心をこめた装丁でお届けいたします(干されなければ)!

2017年5月18日

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塚田哲也

大日本タイポ組合のひとり。新世界タイポ研究会のメンバーでもある。ソロ活動として、デザイン関連ダジャレコンテスト「グッドデザイソ」をtwitter上で開催中。

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