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『今月のもじうご』を振り返る〈前編〉

今月のもじうご

『今月のもじうご』を振り返る〈前編〉

2017年8月より月1回お届けしてきた『今月のもじうご』。

映像作品『夜は』東京TDC賞2017 RGB賞を受賞した宇野由希子と藤田すずかがその後も実験的な共同作業を続け、「もじうご」として発表してまいりました。1年の連載を終え、新たな「もじうご」の制作に入る前に、これまでの1年の振り返りを宇野と藤田、ツッコミ係の大日本タイポ組合塚田哲也さんの3人でお送りします。


ということで、「もじうご」のもじ担当の宇野です。文字を作って暮らしています。

「もじうご」のうご担当の藤田です。動きを作ったり作らなかったりして暮らしています。よろしくお願いします。

はい、よろしくお願いします。塚田です。不定期に出てきて突っ込みます。

それではさっそく連載1回目から順に振り返っていきましょう~。

「もじうご」制作の流れ

文字を動かす「もじうご」は、最初はtwitter上で個人的に公開してたんですよね。映像作品『夜は』の制作終了後、もう少しいろんな文字や動きを試してみようということで制作を続けていて、それをtype.centerで記事にしてもらったことをきっかけに、月に1回その季節に合わせた「もじうご」を作るという連載が始まりました。ありがたや……。

連載1回目の『しゅわしゅわ』は、データとしては文字の骨格だけ。それに等幅に肉付けして見せています。骨格データはこれ以前の『夜は』や『パチパチ』で作っていて、下描きの時に等幅のつもりで描いても実際は等幅に描けていないから骨格データで再現できないということが分って。『しゅわしゅわ』では下描きで肉付けせずに骨格だけを決めてIllustrator上で本当に等幅に肉付けをした状態で形を調整していきました。

「もじうご」は画面上のものだし、動きに合わせた制約もあるので、下描きで突き詰めすぎずに、完成の姿が想像できたらIllustratorに移行した方がいいような気がしています。連載中はいろんな作り方を試しました。

上がってきた文字の先端がラウンドだったので、全部が球で構成された文字をまず3Dソフト上で作りました。それが液体のところまで達すると球がバラバラに散っていくという仕組みになってます。

ちなみにこれ、最初は球の大きさが均一なのを、しゅわっとなる瞬間に大きさをばらつかせてます。その方が弾ける軽やかさが伝わるかな~と思いまして。全部が均一だとぐちゃっともなるので……。

そうなんだ! 知らなかった~。お互い、動画の細かいところ、文字の細かいところはお任せでやっているんです。

よしなに感が強めでやっているよね。お互いそれぞれの分野はあまり知らないままやっているけど、その分、担当の範囲が明確に切り分けられているのでやりやすいというのもあるかも。

9月の『夜』もデータは骨格だけです。モチーフの動きのイメージで運筆してみようと思って、光がヒュンって動くみたいにしました。当時のメモによると、グラデーションを入れるって作字する前から決めていたみたい。

光をやりたいねって感じだった気がする。私がその頃ちょうど初めてホタルを見たからホタルにしようって。この時は異なる形の2つの「夜」の字を同じスプライン上でつなげてます。

あ~そうやってできてたのか。

骨格となっているスプラインを肉付けするオブジェクトの長さを変化させてます。ホタルの有機的な動きが表現できるように、線のつなぎ方も柔らかく、速度もばらつかせて生き物っぽい動きになるようにしました。

新しい動きの模索

文字から文字の変化じゃなくて、もっとダイナミックな動きの変化が出るように文字から図形の変化がやりたいなと思い、10月の『りんご』を作りました。

食欲の秋だし、食べ物でやろうっていう話もしていたんだよね。カボチャとかサツマイモとかモコモコしているものはおいしいけど動きにしづらいかな~って。

そうそう。モサついてるから動きの派手さがなくてね。なのでリンゴにして、ポム感を出そうということになりました。あと『パンダコパンダ』を意識して作った覚えがあるな。

そうだ。この頃、私が『パンダコパンダ』のDVDを買って。オープニングで白い玉がぎゅんって大きく伸びた後、きゅんって縮んでパンダになる動きがすごくかわいいって話をして、それをもうちょっとシャキっとした感じにしようってことになりました。

これまでの「もじうご」は3Dソフトで作成してましたが、『りんご』は2Dの変形のみで作成してます。文字の各エレメントがリンゴに変形する動きを何段階か作りました。

それぞれの段階の間は自動的に作られるの?

ある程度は。各エレメントの形からそのままりんごの形に変形させるとぐちゃっとなるので1回円の形をはさんでます。ヒュン……ポムッて感じです。伝わりにくいですね。

バリアブルフォントみたいだ。丸になる直前の小さい「ん」がかわいいね。

基本的に、動かす時には文字の起筆部分から動きがスタートするようにしています。逆らう時もあるけど、書き順をベースにした方が自然な動きになりやすい。

やっぱり普通に文字を書く時の動きを見慣れているから、その方が誰が見ても自然に見えるような気がする。何か意図がある場合は別として、理由なく逆らわない方がいいなって思います。文字の形を考える時も。

でも、全部書き順そのままでやるとちょっとだれる時もあるし、そこの塩梅が難しいなという気持ちもあります。容量の制限もある中で、短い尺でどのくらい見せよう?みたいな。書いてる動きにちゃんと合わせつつっていうのと、動きのポップさとか変化量の大きさとの兼ね合いをどうしようかな~というのはいつも考えています。

はい! やっと出てきました。塚田です。11月の『もみじ』はすごかったなって。動きと字の形がどういう順番で行われているのか、かなり僕は興味を持ちました。

これは動きありきで作りましたね。ベタの強い色面の形状をガラッと変えて派手にしたいというのがありました。

私はめちゃめちゃ難しかった記憶がある……。藤田からこういう動きにしたいってスケッチをもらって、画面を分割するように字を描くことになったけど、面を増やすのが大変で。

面の数を決めてたってこと?

面の数は決めてないんだけど、ただ字を書いただけでは面ってほとんど無いじゃないですか。かといって、図形を組み合わせたり、マス目を塗りつぶしたり、といったことではないやり方でがんばろうという意地?みたいなものもあって……「この画とこの画は続けて書くこともあるからここをつなげてウェーブみたいにしてそのまま伸ばせば1面増えるぞ!よし!」みたいな(笑)。なかなか面が増えていかないんですよね。

これが一番動きに合わせた文字の制約が大きかった気がする。線と色面どっちも考えなきゃいけないから割と大変だよね。上がってきた文字の細かいパーツ分けはこちらでやりました。Illustrator上で「もみじ」と「紅葉」を重ねて、「この線と線を連携させて、この面と面を連携させて……」と整理していきました。

ベクターのデータを色面と線でパーツ分け

これはポップな感じで色も変えられて華やかにしやすいので、今後も使えそうな気はしています。

既存のフォントだとできない動きだから描きがいもあるかな。描くのは難しいけど(笑)。1面に10文字とか、もっと文字数がたくさんある方が分割しやすかったかもしれない。

確かに文字数が少なかったね。グリッドで何文字もあるみたいなやつの方が見栄えもするし良さそう。リズム感とか出すのにいいなって感じ。現代的だし、リリックビデオにオススメです。

リリックビデオ作ってみたいな~オススメです!


さて、ここまでで4ヶ月分。けっこうなボリュームになりましたね。一旦お茶でも飲みましょうか。

あっ……そうだね! 今回は塚田さんがほとんど登場しませんでしたが……次回はもっと突っ込んでくれるといいですね! ではまた次回!

初回からの4ヶ月を振り返ったところで今回はここまで。中編に続きます。

2018年10月24日

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映像作品『夜は』で東京TDC賞2017 RGB賞を受賞した宇野由希子と藤田すずかによる、実験的な共同作業を続け、2017年8月よりお届けしてきた『今月のもじうご』。1年を終え、新たな「もじうご」の制作に入る前に、この1年を大日本タイポ組合塚田哲也さんをまじえて振り返ります。