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『今月のもじうご』を振り返る〈中編〉

今月のもじうご

『今月のもじうご』を振り返る〈中編〉

連載『今月のもじうご』の振り返り。前編に続き、中編では2017年12月から翌3月までの4ヶ月を振り返ります。


ポップに! 賑やかに!

師走は個人的に一番気に入っています。ちょっと変わった形だったし。3D感が分かりやすかったのか、反応も良かった気がします。

賑やかだしね。ハイチュウっぽい質感でポップにやろうって話してました。あんまりこういうポップなのを描いたことが無かったから少し悩んだな……。これも動きが先に決まっていたので、全部直線にしたら同じ切り口になってつまらないかもと思って、少し変化をつけたりしました。

気持ち的には安売りのポスターなんだけど、大特価みたいな……。色はその当時のtype.centerカラーにして、バキバキ感もあってキャッチーになったかなと思います。

「キャッチー」はすごい意識してたよね。年末の忙しすぎるイメージで憂鬱にならないように。作字する時にも陽気な色をつけてやったな〜。

type.centerの色にしようっていうのは年末っぽいめでたい感じもあるからいいかなと思ってやった気がします。動きはただ円形状に押し出してるだけだから、あまり手間はかかっていません。文字数たくさんあってもいけそう。『今月のもじうご』は文字数が少なかったから画が持つようにするのもなかなか大変でした。文字数が多ければ多いほど栄えるは栄えるし。

文字は骨格だけで等幅とか、エレメントがシンプルな方が簡単かな。まあでも、慣れればって気もする……。最初のうちは「ここはどう解釈しよう?」って迷うけど、100字とか200字とか作ると「ここはこう」ってどんどん決まっていくから迷わなくなる。

動きもそんな感じかな。最初の「どうやってやるんだろう? どうやったらこう見えるんだろう?」みたいなのが一番時間がかかって、一度動きさえ作っちゃえば応用できるから、あとはせっせと細かい歪んだところとか動きが不自然なところを直すのみって感じ。最初のどういう動きにしようが一番難しい。そりゃそうか……。

なんでもそうだよね。『今月のもじうご』は字数が少なくて慣れるほどはやらないから、一番難しいところを繰り返してた(笑)。

あとこれは、手描きでトレースをしてみました。

あっ! これ、かわいかった〜。

手描きでもう1回トレースするのありかなって。文字の精度はちょっと出ないけど、水彩感みたいなのも出しやすいし、いい感じにコンセプトと合ったらいける気がするなって。

手描きの秒アニメシリーズ好き。空からうさぎ降ってくるやつとか、お寿司が生まれるやつとか。「もじうご」ではないけど(笑)。

1月は干支の移り変わりにしようって決めて。とにかく、めでたく「戌」を描いてみようって。年賀状にあるような、縁取りとか、ハンコっぽいのとか、いくつか描いた中からこれが一番動かしやすそうっていうことで、ハンコっぽいのになりました。

下描きの端の方に酉1027とか戌380って書き込まれてるけど、この数字は何?

それは書道字典のページです。書道字典はよく見てます。そのまま採用するとか倣って描くってことではなく、いろんな形をざーっと眺めていて、目に留まるところがその時の気分なのかなって。「かわいいのを作るぞ〜!」って思って眺めて、「これとこれかわいい、そっか、筆画短めのやつが今回の『かわいい』なんだな〜」みたいな。考えを整理する用です。

文字は「戌」の4画目の右ハライ以外は等幅なんだよね。

そうそう。等幅はよくやってるから、ちょっとだけ何かやってみようかな、1箇所くらいなんとかなんないかな〜って。めでたいといえば末広がりみたいな。

どうにかした気がする。

どうにかしてもらいました! データを差し替えてるって言ってたよ。

あ〜そうだ。基本全等幅の方がやりやすいはやりやすいけど、まあ。これも9月の『夜』と一緒でスプライン全つなげです。ハンコっぽいっていうのがあったからインクの滲みたいなのをなんとなく表現したくて、移り変わる瞬間だけ線がちょっと有機的な形になっています。

「酉」が変わる時にちょっと絵の犬が見えるのかわいいな。あとパーンパーンっていう花火みたいなやつも。このパーンってやつみたいに字が出るのもできたらいいよね。

あ〜確かに。弾けるみたいな。それもありだな。一番賑やかしを意識して作って、年始のめでたい感がよく出せたのではと思ってます。

1月だけ毎年使い回せないんだよね。

そっか。「亥」作んなきゃダメか〜。

毎年やると12個必要になっちゃうじゃん(笑)。

「元旦」とか汎用性高いやつを作った方がいいかもですね〜。

文字はキャラクター

2月は藤田がいくつか言葉を挙げてくれたんですけど、2月にしては春意識が強くて……北海道出身の人からしたら2月の東京は春なのかなって思いました(笑)。

それはある! 北海道は2月が一番寒いんだけどね。東京なんて、もう春だろみたいな。

この時は太さの変化をやろうということで、太いのと細いの2種類の「雪」があって、まず太い方を作って、その中に収まるように細い方を描いたはず。この太い方の字がけっこう気に入ってます。ゆきんこ。顔みたいでしょ?

確かにキャラ感がある。動かす時はキャラ感大事ですね。愛着が湧きやすい。「ここかわいい!」みたいなのがある方がやりやすい気がします。

雨冠は顔っぽい。他の書体でも割と顔みたいに見えることがよくあります。

そう考えると悲しい「もじうご」だな。消えゆく……。

成仏だよ……。字を作っていて、顔に見えたり、動物に見えたりっていうのがめちゃくちゃあるんだけど、他の書体デザイナーの人はそういうの無いのかな〜って思う。「あっこれうさぎさんみたい!」とか(笑)。

顔か〜(笑)。

あっ『デザインあ展』の「名は顔をあらわす」の後遺症的なこともありますね(笑)。

「文字」のことを「キャラクター」って言うので。

文字じゃなくてアイコンとかマークとか作ってる時とかも、顔に見えたりとかすごいある。これ顔みたいだねってなる時はよくあるから、みんな思ってる気がします。それ動かしたらいいんじゃないかな? 文字が喋ったり。

確かに! 会社で書体を作っている時に、パーツを動かしたり、形を変えたりしていて、このままこの動きを「もじうご」にできるかもって思うこともあります。パーツをうっかり間違えて反転させちゃったやつとか、1つポイントを動かすと面ごとぐるーんって動くやつとか、動画で残しているけど制作中の書体だから見せられない……。

それいいね、文字ありきの動きな感じがして。ひょうきんそうでいい気がする。

悩ましい制約

この時は私から提案しました。筆画と違うパーツで構成した文字を作ってみたいなと思って。動かしやすいだろうし。「そういうのどう?」っていう感じで色鉛筆でざっくり描いたのを見せて。

これは2Dで動かしています。透明のセロハンみたいな質感にして、パーツが風に舞う感じのふわっとした動きにした。

軽やかな感じで良かったね。構成するパーツ自体は割と単純だからどんどん描いていけて、これは字数が多くても描けそうだなって思いました。

先端がシュッてなってるのはちょっと動かしづらかったな。尖った形問題あるよね。動かす時に鋭角のところがめちゃくちゃ尖りすぎて飛び出ちゃうとか。柔らかい形の方がおこしやすいんだよね。なんとかなんないかな~。

細かいところで文字側のソフトと動き側のソフトで解釈が違っている問題はたまに発生するよね。骨格データで先端をラウンドにして肉付けした時、パスの先端が弧の中心になっているのが、3Dソフトで読み込むと弧の頂点になるのとか。作字した後、そのデータに合わせてパスを弧の頂点まで伸ばす作業が必要になっちゃう。なんとかなんないのかね~。

アプリケーションに制約されちゃうの?

まあまあ制約されますね。なんとかできないことはないですが、パスの分割を増やせば増やすほど動きの制約が増えるし。

内側がうるうるした感じの形とかも難しいんだよね?

内側をうるうるってどういうこと? 滲みみたいな?

交差部分をラウンドにするの。かわいくなるし、ちょっとレトロな雰囲気とかも出せるし、使いたい時もあるんだけど、何回か試してもらってこれは難しいって悟りました。うるうるを使わずにかわいさとかを出せるようにがんばっています。

そう、スプラインに対して肉付けしてるから、ぐちゃってなっちゃう。動き的につじつまが合わないんだよね。きれいにモデリングするだけだったらがんばればいけるんだけど、動かす時にね。もしかしたら解決策があるかもしれないけど……。私が知らないだけで。

うるうるしてないのを動かして、止まった時にうるうるしたやつと差し替えるとかならできるんだよね? まあでも、そこまでしてうるうるさせたかったことはまだ無い(笑)。

そこらへんの兼ね合いはありがち。

お互い譲り合いながらやっています。


3月まで8ヶ月分振り返りましたね〜。

だんだんいろんな記憶が蘇ってきました……! 塚田さんも引き続き……次回はさらにたくさんの突っ込みをお願いします!

もじろんです!

今回はここまで、次回で完結です!

2018年11月22日

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映像作品『夜は』で東京TDC賞2017 RGB賞を受賞した宇野由希子と藤田すずかによる、実験的な共同作業を続け、2017年8月よりお届けしてきた『今月のもじうご』。1年を終え、新たな「もじうご」の制作に入る前に、この1年を大日本タイポ組合塚田哲也さんをまじえて振り返ります。