文字による文字のための文字のサイト

サイラス・ハイスミスさん(米国/MPDO)

世界のタイプ道

サイラス・ハイスミスさん(米国/MPDO)

世界各地にひろがるタイポグラフィーの世界を覗いてみませんか?

当連載「世界のタイプ道」では、世界各地の書体デザイナー、プログラマー、教育者、ベンダー、そしてこの書体を愛するコミュニティの基礎を支える多彩な方々へのインタビューを通して、タイポグラフィーという世界の魅力をお伝えしていきます。

今回は「Morisawa Providence Drawing Office(モリサワ・プロビデンス・ドローイング・オフィス)」(以下、MPDO)でクリエイティブディレクターを務めるサイラス・ハイスミスさんにお話を伺いました!

高品質のオリジナル書体を作ることを第一に

1.ご自身について教えてください。

Cyrus Highsmith

サイラス・ハイスミス(以下、CH): タイプデザイナー、グラフィックアーティスト、教師、著者として活動しています。ロードアイランド州プロビデンスにあるMPDOでジューン・シン、ジェム・エスキナージ、マリエ・オオツカの3人と一緒に仕事をしています。現在はモリサワブランドとなっているOccupant Fontsを設立しました。


2.モリサワ社の一員となり、MPDO(モリサワ・プロビデンス・ドローイング・オフィス)が開設されて約1年経ちました。新しい環境での1年間はいかがでしたか。

CH: 素晴らしい一年でした。我々4人はとても強いチームとなりました。4人合わせると英語、韓国語、日本語、トルコ語、スペイン語を話すことができます。それぞれ、異なる専門分野(美術、グラフィックデザイン、プログラミング、ビジネス、カリグラフィー、教育)での経験があります。ですが、全員共通して文字をドローイングすることが好きです。

モリサワは今まで西欧にデザインオフィスを持ったことがありませんでした。Occupant Fontsを買収し、クリエイティブディレクターとして私を起用したのはとても大きな決断だったことでしょう。ですが、私たちは「高品質のオリジナル書体を作ることを第一にしている」という共通の信念を持っており、常に同じゴールに向かっていると思います。私はすごくラッキーだと思います。

MPDOにて。サイラス・ハイスミス、ジューン・シン、ジェム・エスキナージ、マリエ・オオツカ。


3.2019年のMPDOの計画を教えてください。

CH: 二つの新しい欧文書体を作成していて、バリアブルフォントにも挑戦しています。また、私たちのウェブサイト(occupantfonts.com)の開発を行う予定です。 出張の予定もあります。私自身はモリサワのタイプデザインコンペティション2019の審査のために5月に来日します。9月にはMPDOのスタッフと一緒にATypI 2019 Tokyoに参加します。スタッフ全員ではないですが、ISType(イスタンブール)、Typographics(ニューヨーク)などに行く予定もあります。


4.好きなアルファベットはどれですか?

CH: 素晴らしい言語が世界中に溢れています。私は韓国語のロジックや形が好きですし、アラビア語はとても美しい言葉だと思います。それでも私が一番好きなのはの普段から使っている欧文アルファベットですね。

欧文アルファベットが様々な言語で使われていることもステキだと思います。例えばフランス語、スペイン語、イタリア語などのロマンス語。英語、オランダ語、ドイツ語などのゲルマン語。アイルランド語やウェールズ語などのケルト語。チェコ語などのスラブ語。例を挙げればキリがありません。


5.新しいスタイルをデザインする時はどの文字を最初にデザインしますか?

CH: スケッチはするその時に描きたいものをドローイングします。アイディアによっては簡単に具体的なグリフを視覚化できることもあります。単にその時に頭に浮かんだものをドローイングしています。

実際に新しい書体の作成に取り組む時は、だいたい‘n’, ‘o’, ‘p’から始めます。これらの文字から取り組むことで、基本的なテンポ、形、リズムの一部を把握することができます。多くの欧文書体デザイナーがこれらの文字をまずデザインしています。

スケッチブックより。小文字アルファベット。


6.公開可能な範囲で現在取り組んでいるプロジェクトを教えてください。

CH: 今は新しいセリフ書体をデザインしています。主に欧文開発に重点をおいていますが、日本語やハングルなど多言語展開の可能性もあると思っています。そのように考えて取り組むことで私自身のデザインプロセスに新たな一面が加わりました。どのようなコラボレーションいなるのか想像するとワクワクします。


7.デザインしてみたい言語はありますか?

CH: 難しい質問ですね。日本語をデザインしてみたいですが、私一人では出来ないので和文デザイナーとのコラボレーションが必須です。 モリサワと仕事をするようになってから、少しずつ日本語を学んでいます。毎年1〜2回は日本に行く機会があるのですが、行く度に少しずつ日本語がわかるようになっています。

また、私は迫村裕子氏と共同で制作した子供向けの本を文溪堂から出版しています。迫村氏が文を書き、私がイラストを描きました。まず、ひらがなの本『あり いぬ うさぎ』を制作し、次に数の数え方の本『1こ 2ほん 3びき』を制作しました。このプロジェクトを通して日本語について多くのことを学びました。また、イラストレーターとして、私はレタリングも手がけています。子供向けの本なので文章は全てひらがなです。絵を描く時に使う道具に似た道具を使ってテキストを書きました。モリサワの同僚が間違いがないかを確認してくれたのでとても助かりました。また、このプロジェクトを通して、3〜4歳児くらいの文章能力がつきました!

読み書きのスキルがタイプデザインやレタリングにどのような効果をもたらすかはわかりませんが、何かしらの影響はあるはずです。また一つの言語の知識を他の言語にも活かせるとは限りません。ですので、この強みをコラボレーションや教育にどのように活かせるのか、自分自身に問いかけています。

サイラス・ハイスミスが手がけた絵本より。

『あり いぬ うさぎ』より。


東洋と西洋の間でコラボレーションや互いに学び合う精神

8.仕事を始めるときのルーティーンはありますか?

CH: クリエイティブな仕事をするのは朝が最適です。たいてい朝早くに起きて、瞑想をしてから数時間仕事をします。その時に一番興味があることに取り組んでいます。そして家族全員の朝食を作ります。その後は締切のあるプロジェクトの作業、会議参加、メール返信などの対応をしています。

自身のスタジオにて。


9.ATypI 2019 Tokyoに期待することを教えてください。

CH: ここ2年間に北米とヨーロッパで開催したATypIではアジア各国のタイプファンダリの存在感が高まっています。そのようなファウンダリの努力のおかげで、東洋と西洋の間でコラボレーションや互いに学び合う精神が漂っています。ですので、2019年のATypIを東京で開催するのは今の業界の雰囲気にピッタリだと思います。 プロビデンスでも多くの仲間から「日本に行く機会を楽しみにしている」という声を聞きます。日本人デザイナーが海外の仲間たちと繋がりを持つ素晴らしい機会になると思います。


10.モリサワのタイプデザインコンペティション2019の審査員を務められます。コンペティションに期待していることを聞かせてください。

CH: 和文部門の審査委員である鳥海修氏にお会いするのをいつも楽しみにしています。お互い話す言語こそ違いますが、私は鳥海氏はタイプデザインにおける大先生として尊敬しています。新しい審査員の皆さんにお会いすることも楽しみにしています。 西塚涼子氏とは数年前にモリサワが開催したタイプデザインコンペティション特別セミナーでお会いしました。彼女のタイプデザインへのアプローチを聞き、多くのことを学びました。 私は田中一光氏の作品のファンなので、廣村正彰氏の田中一光デザイン室での経験をお聞きしたいです。 そしてもちろんロボットも! 北川一成氏には初めてロボットがスタッフとして働いた「変なホテル」のことを聞かせて頂きたいと思っています。

実を言うと、欧文部門審査の私自身の役割には少し緊張しています。今まではマシュー・カーター氏が私たちのリーダーでしたが、今回初めて私がリーダーを務めます。幸いなことに、マシューも特別審査員として参加されます。 また、欧文部門の審査員たち(インドラ・クッファーシュミット、イリヤ・ルーデラマン、ラウラ・ミセゲル)と一緒に取り組むことを楽しみにしています。全員が書体の見る目、揺るぎない意見をお持ちであることを個人的な経験から知っています。彼らの意見を聞けること、また、彼らから学べることが楽しみです。

ステンシルで描いた大文字アルファベット。

2018年12月26日

シェア

世界のタイプ道

type.center編集部

type.centerの編集部です。文字関連イベントをレポートしたり役立つ情報を発信できるよう努力してまいります。よろしくお願いします。

連載記事一覧
今日
昨日
おととい
ちかごろ
あいうえお かきくけこ さしすせそ たちつてと なにぬねの はひふへほ まみむめも やゆよ らりるれろ わゐゑを ん がぎぐげご ざじずぜぞ だぢづでど ばびぶべぼ ぱぴぷぺぽ 0123456789.
連載記事一覧
連載記事一覧
世界のタイプ道
米国 MPDO ジューン・シンさんとジェム・エスキナー…
米国 MPDO ジューン・シンさんとジェム・エスキナージさん(前半)
新連載「世界のタイプ道」、第1回は米国ロードアイランド州のプロブデンスに開設されたばかりの「Morisawa Providence Drawing Office(モリサワ・プロビデンス・ドローイング・オフィス)」(以下、MPDO)で活躍する若き書体デザイナー、ジューン・シンさんと…