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2月のもじうご報告

今月のもじうご

2月のもじうご報告

映像作品『夜は』東京TDC賞2017 RGB賞を受賞した宇野由希子と藤田すずかが2017年8月より月1回お届けしてきた『今月のもじうご』。 全12回の連載の振り返りを後編に分けてお送りしました。

振り返り後編では1年の連載を終えて、少し長めの作品に挑戦したい気持ちを語っていた2人。充電期間を経て、新作に取り掛かろうと動き始めました。type.centerでその制作の様子を定期報告します。


宇野(もじ担当): 『今月のもじうご』でいろんな「もじうご」経験が溜まって、ちょっと長めの制作に挑戦したい今日この頃……。

藤田(うご担当): そうだね〜。数文字だけじゃなくてストーリー展開のあるようなものをやってみたいな。

和歌巻みたいな感じとか? そういうものを作るなら、これまでは既存の文章を組み合わせて構成したり、単語だけだったりしたけど、この作品のための新しい文章があったらいいな。文章に合わせて文字や動きを作ることをしてみたい。

動き担当としては「音」も重要だと思う。『夜は』の時は既存の音源を利用して、『今月のもじうご』は無音だったけど、作品に合わせた「音」があると動画の展開を考えやすいし、テンションも上がるので……。


ということで、文章を書いていただける方、見つかりましたね!

作曲をしていただける方も見つかりました。

文章はグラフィックデザイナーの大竹竜平さんに書いていただきます。チーム夜営で劇作家としても作品を発表している方です。

私はもともとチーム夜営の舞台が好きで何度か見に行ったことがあり、文章を書ける人……って考えた時に思い当たりました。劇作家でもグラフィックデザイナーでもあるから、映像作品としての構成なども含めて考えていただけるのではないかと……。
そして、音楽は神田聡太郎さんにお願いしました。スヤスヤレコードwagaciで作曲、演奏をされている方です。

音楽の知識がほぼ無いので上手に説明できないけど、奥行きがあるような、空間を感じるような……そんな印象の曲を作曲されていて、映像にぴったりな曲を作っていただけそうです。
『夜は』の時は初めての制作だったこともあって、文字を作って、動きが決まって、文章を構成して、音をつけて……って、ひとつひとつ順番にできていったけれど、今回は一緒に作っていくことでお互いに影響を受けながら考えを深めていけたらいいなと思います。

そうですね。がんばりましょう〜。


宇宙の誕生と文字の成り立ち

さて、大竹さんから文章(仮)が届きました!

文章はまだ秘密です

無の状態から素粒子があり、宇宙が誕生し、銀河があり、地球があり、都市があり、人がいて……と視線が拡大されて展開していくようになっています。

文章を読んで宇宙の誕生から、文字の成り立ちと、animationの語源であるanima(生命・魂)を紐づけて、いろんなものの成り立ちを抽象的に描くことはできないかなと思いました。

なるほど。筆先が紙に触れて点ができて、それがどんどん続いて画になり、部首になり、文字になり、文字が集まって言葉になり……という過程が文章の内容と重なるね。文字も粒子の集まりって言えるのかも。文字を書き上げる感触や感覚は手書きならではのもので活字になると失われるという考え方もあるとは思うけれど、今回の「もじうご」で映像の中での文字の生まれ方というか、在り方というか、そういう文字を取り巻くものについてを何か形にできたらいいな。

それぞれの場面が正方形の組版になるようにできていて、文章の視線の変化に合わせて組版の字数、情報量も変わっていく、という構成も合わせて大竹さんから提案してもらいました。視点とスケールの変化みたいなものをうまく映像で伝えられたら良さそう。見せ方をいろいろ考えてみたいです。

そういえば、決まった組版を頭において作るのは、いつもの書体作りとはちょっと違うところですね。その点を生かして何かできるのでは……1文字だけではなく組版全体をひとつの文字として見るような、まとまりを持った作り方ができるといいのかな。字数の多い正方形の組版を遠目に見てビャンビャン麺のことを思い出しました。

ビャンビャン麺とは?

「ビャン」の字がすごく画数の多い漢字として有名なの。この前、横浜中華街のお店で食べたんだけど、もちもちしててとっても参考になりました(笑)。先日、type.centerのイベントレポートにも登場していましたね。
「ビャン」みたいに本当にそれぞれを部首にしてひとつの漢字にしようとは思っていないけれど、せっかく文字の並びが決まった状態で描けるので、1文字だけじゃなくて組版全体でのバランスを考えるようにしたいです。

平たくて超幅広の長い麺です

なるほど〜。『夜は』の時は1文字ずつ、1画ずつ順番に書いていく動きにしたけど、組版全体での動き方とかも考えていけるといいかな。まずは、いろいろな動きに対応しやすい構造で文字を試作してもらいたい。

動きが表現している内容によっては、1文字目の1画目が動きの始まりでなくてもいいのかもしれないね。1年の『今月のもじうご』連載ではいろんな構造の文字を使ったけど、やっぱり一番動かしやすいのは骨格を作ってそれに対して等幅に肉付けする構造だった?

そうだね。それが一番いろんな動きに対応しやすいと思う。アウトラインデータを動かそうとすると、いろいろと動かし方を工夫しなくてはいけなくて、その工夫によって必要なデータの条件が変わってくるから。

では、まずはその構造で数文字を作ってみたいと思います!


文章と文字

書体デザイナーの人は小さい頃から書道を習っていたとか、レタリングの経験があるとか、そういう人が多いんだけど、私は大学に入るまでそういう「文字」に触れることがあまりなくて……でも本を読むことがすごく好きで、その影響は大きいのかなって思っています。本の中にある言葉が普段の生活でやりとりする言葉とは少し違う特別な感じがして好きだったんだけど、今回新しく文章を書いてもらって、そういう言葉に合わせて字を作ることになって、すごく贅沢だな〜って気がしてきました。

やっぱりオリジナルだとテンションが上がるよね。

文章にぴったりの文字が作れるといいな。文章がどちらかというと感情的ではなく淡々としている印象があって、明快でかっちりした字が合うような気がしました。キリッとして、でも素粒子に始まって宇宙が誕生して……ってそういう小さなところから広がっていく内容で、繊細な感じもあるような……。

文字の試作、骨格のみのデータ

もう少しキリッと、緊張感があるようにしたいな……。それでいて柔らかいところはもう少し柔らかく ……。
今は骨格だけを作っている状態で、本当に全部の線が同じ幅になっているので、やっぱり見た目が同じ幅に見えないですね。画数や密度によって濃さの差を感じる。本番では動き方や肉付けの仕方に合わせて、太さや形を調整しないといけない。

データの条件は動かし方によって違うからね〜。

太さを変えてみてもらってもいいし、もっと細くしていっぱい重ねるとか、いろいろ試してもらえると。本制作では動きとその条件に合わせて描いていきます。描き始めて気づいたんだけど、組版が正方形だと、どこからどの方向で読むのか一瞬では分からないね。

そうだね、文字の出現とか移り変わりは気をつけつつ、いろいろ動かしてみます!


というわけで「もじうご」の新作の制作がスタート。書き下ろしの文章からイメージを膨らませて試作が始まりました。今回は「もじ」のほんの駆け出しまで……次回は「うご」も始まります。どんな映像が出来上がるのか、まだ藤田も宇野も分かっていません。完成までの定期報告、お付き合いの程よろしくお願い致します。完成をお楽しみに!

2019年2月8日

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『今月のもじうご』を振り返る〈前編〉
『今月のもじうご』を振り返る〈前編〉
映像作品『夜は』で東京TDC賞2017 RGB賞を受賞した宇野由希子と藤田すずかによる、実験的な共同作業を続け、2017年8月よりお届けしてきた『今月のもじうご』。1年を終え、新たな「もじうご」の制作に入る前に、この1年を大日本タイポ組合塚田哲也さんをまじえて振り返ります。