文字による文字のための文字のサイト

3月のもじうご報告

今月のもじうご

3月のもじうご報告

映像作品『夜は』東京TDC賞2017 RGB賞を受賞した宇野由希子と藤田すずかが2017年8月より月1回お届けしてきた『今月のもじうご』。1年の連載を終え、充電期間を経て、新作に取り掛かりました。type.centerでその制作の様子を定期報告します。


宇野(もじ担当):さて、前回は大竹さんからの文章(仮)の雰囲気をもとに、少し文字を描いてみたところまででした。文章の「宇宙の誕生」から展開していく内容と、文字の成り立ちを重ねてはどうかと話していましたね。

藤田(うご担当):文字の成り立ち、宇宙の誕生とanimationの語源であるanima(生命・魂)を紐づけて、有機的ないろんな動きを試してみようということになりました。与えよanimaですね。


捉えようのない緻密な世界

かねてより、人間の肉眼では捉えることのできないような緻密な世界のことなどが個人的には興味があったんですけど。 大学の卒業制作でも、大きくてもほんの数ミリしかない雪の結晶が自然のルールに基づいてものすごく緻密で美しい形をしているのがすごいなと思って雪の結晶ができるまでみたいな映像を作ったりしました。

卒制展の時はひと部屋を貸し切って上映してたよね。よく覚えてる。ずっと見ちゃうような感じでした。

降り積もる雪を黒い布の上なんかに乗っけると、ちっちゃい結晶がものすごく綺麗な六角形からなる形をしていたりして、それが一面に降り積もってるんだと思うと今自分が生きている世界ってものすごいなと思ったりなんかしますよね。そういう気が遠くなるような世界の広がりみたいなのを表現できると良いなあと思います。

卒制展のたくさんの作品の中でも特に印象に残っていた作品だったけど、そういう緻密な世界への興味に共感する気持ちもあったのかも……。
小さなひとつが積み重なって広がっていく感じは確かに今回の制作にもつながりそうですね。

身近にあるはずなのにあいまいで捉えどころのない世界みたいなものを表現できないかなと思いまして。ものすごく小さいものを観測しようとすると、どうにも不確かで揺らいでいる、または揺らいでしまう。というところから着想を得て、ゆらぎの動きを色々やってみようと思います。


ゆらぎの動き

とりあえずざっくりとゆらぎテスト。ゆらぎというよりジタバタした感じだな…。ちょっとスピード感も早すぎますね。

「ジタバタ」ってちょっと生き物っぽいね(笑)。細かい線が集まってひとつの画になっているところが少し毛筆っぽくもあるかも。「かすれ」の表現とか……。

スピード感などを調整してもう少し文字数多めでテスト。少し構造が見えた方が物質感が伝わるかなと思い、近くで見るとポリゴンのラインが見えるようにしています。硬質な物質のゆらぎ感はちと出てきたかなあ?

そうだね、「ジタバタ」じゃなくなって、文字の存在が固定されてないみたいな、ゆらぎ感出てきた気がする。
ひとつ目のゆらぎテストを見て「かすれ」のことを少し考えた時に、「かすれ」も同じように見えて、筆を速く動かして書かれた「筆勢を感じるかすれ」とか少ない墨で擦り付けるように書いた「筆圧を感じるかすれ」とかいろいろな書き方があると習ったことを思い出しました。もちろん映像の中の文字なので「毛筆っぽくかすれさせよう」という意味ではなくて、「ゆらぎ」の「ゆらぎ方」にもいろいろあるんじゃないかなって。

見えない動き

画と画の間の見えない部分の動きも文字の要素の1つだと思いついて、実線として書かれていないところで手がどのように動いているかをたどる線も作ってみました。この部分を線が移動する様子を見せたり、ゆらぎを実線の無いところまで広げたりしてみたらどうだろう?

なるほどね〜。完成した書体を見るとあまり想像しないけど、文字と文字の間にも書いてる時の次の文字へ繋がる手の動きがあるわけだもんね。軌跡をうまく表現できると、有機的な感じが伝わるかも。

細い軌跡のみテスト。繊維っぽい感じですね。つむぐ感。

線が細くなると、静かな印象だね。密やかなゆらぎ感。
行末から次の行頭に向かう線は無くて良かったかも。ちょっと嘘っぽかったな、実際に書く時にこんなにまっしぐらに同じような弧を描いて次の行頭に向かわないよね……。

太めの結晶っぽい構造と、繊維っぽい細い軌跡を重ねあわせてみたテスト。

太さや動き方が1パターンじゃないと、有機的になるね〜。文字の形だけじゃなくて、ゆらぎによって別の形が見えてくるのが不思議な感じ。

映像で見せると、完成した文字の形だけでなく、今までは見えなかった部分の手の動きなども重ね合わせて見ることができるというのは良いね。文字の形ははっきりと見えなくとも、重なり合う軌跡で脳内で文字を形づくっていくことができるのは面白いかも。ちょっとそういう視点も踏まえてもう少し動きの試作をやってみよう。


それはそうと、こんなに生っぽい状態をインターネットにお披露目していくのはやはりなかなか恥ずかしいですね。でもこういうのをドンドン出していくのが大事なのかもしれませんね。晒していくスタイル。

ここは失敗だったな〜でも本番でうまくやればいいか〜ってところも見せちゃうのはかなり恥ずかしいですね。
それに、まだ試作しかしていないから、本当に完成するか心配だ。恥ずかしさに負けずに、ドンドンやってドンドン晒していきましょう……!


今月は「ゆらぎ」に注目して試作を重ねました。来月ははさらにいろいろな表現を試していくつもりようです。引き続き、温かく見守ってください!

2019年3月8日

シェア

今月のもじうご

連載記事一覧
今日
昨日
おととい
ちかごろ
あいうえお かきくけこ さしすせそ たちつてと なにぬねの はひふへほ まみむめも やゆよ らりるれろ わゐゑを ん がぎぐげご ざじずぜぞ だぢづでど ばびぶべぼ ぱぴぷぺぽ 0123456789.
連載記事一覧
連載記事一覧
今月のもじうご
『今月のもじうご』を振り返る〈前編〉
『今月のもじうご』を振り返る〈前編〉
映像作品『夜は』で東京TDC賞2017 RGB賞を受賞した宇野由希子と藤田すずかによる、実験的な共同作業を続け、2017年8月よりお届けしてきた『今月のもじうご』。1年を終え、新たな「もじうご」の制作に入る前に、この1年を大日本タイポ組合塚田哲也さんをまじえて振り返ります。