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4月のもじうご報告

今月のもじうご

4月のもじうご報告

映像作品『夜は』東京TDC賞2017 RGB賞を受賞した宇野由希子と藤田すずかが2017年8月より月1回お届けしてきた『今月のもじうご』。1年の連載を終え、充電期間を経て、新作に取り掛かりました。type.centerでその制作の様子を定期報告します。


宇野(もじ担当):前回は「ゆらぎ」のイメージでいくつかの動きを試しました。結晶みたいできれいだったな。

藤田(うご担当):今回はまた少し違った動きをいろいろ試していきたいですね。


字の立体は堅画にあり

中国清時代の笪重光の書論に「筆の執使は横画にあり、字の立体は堅画にあり」という言葉があります。映像の中で空間を作るものとして縦方向の動きに注目してみるのはどうだろう。

こんな感じかな。ガビガビ感強めで。無機質ながらも一瞬の形などちょっと面白いものが出てきてるかも……。

抽出されると文字としてじゃなく、形としての印象が強くなるね。縦だけではなく何かの部分に注目した表現もいろいろ取り入れるといいかも。

文字も粒子の集まり

初回で文字の成り立ちと宇宙の成り立ちを結びつけて表現できたら良いな〜という話をしていましたね。 文字を書く時の筆が紙に触れて点になり、言葉になっていく様を考えると文字も粒子の集まりと言えるな?ということで、粒子っぽい表現も試してみました。

文字になりきらない、あいまいな感じがいいね。

ちょっと粒子の感じがまだ荒くて生っぽいけど、繊細な感じを表現するのに使えるかも。 もっと緻密な感じにできると良いですね。

文字を構成するいろいろ

文字を書いていない部分も文字を構成する要素だと思います。

書いていない部分?

「ふところ」とか。余白は余白で意味を持っているというか……。作字をする時も形や太さと同じくらい線と線の間隔に気を配ります。その部分を可視化してみるのはどうかなって。

なるほど。もう少し文字そのものが動いているというより、それぞれのパーツを図形的な捉え方ができると動きの幅も広がると思う。幾何形態が譜面のように動く表現を必然性と奥行きを持ってできるといいかなあと。
書き始めとかにドットを置いてみるのはどうかな?

音楽とうまく組み合わせられると良さそう。書き始めのトンと筆が置かれるリズム感みたいに見えるかも。

文字のふところ、文字の書き始めに座標のようにドットを置く、文字の縦の流れなどを置いてみたテスト。記号的なような、譜面っぽいような、地図っぽいような雰囲気が出ますね。

そうね、地図も地形とか高度とか、同じ場所に対していろいろな要素が示されるよね。それぞれが違った部分に注目しているけれど、重ねていくことで表現している文字の存在に近づいていく感じがします。

言葉を囲むグリッドも活かせないかなと思ったりしている。スケール感の変化を伝えるために統一した指標があると良くて、一定の間隔でグリッドが出てくると表現しやすいかな。

なるほど。マス目に書くのと行書きするのでは配置とかバランスが変わると思う。グリッドを前提にすると、例えば2文字を続けて書くこととかをしないことになるけど、グリッドがあって文字の大きさが揃っている方が視線が拡大していくという展開には合うのかもしれないね。前回「ゆらぎ」に注目していくつか試作をしたけど、グリッドに沿った状態を基本として、行やグリッドの「ゆらぎ」があってもいいかも。

あとは組版が移り変わる時にもっと響きあう感じ、つながりみたいなのを持たせられるといいかな。

何か意味を持って連動する部分を作るってこと? 

そうそう。ただ重なるだけではなく、何かルールがあるといいな。

そうだな……。今ちょうどtype.centerでもインタビュー記事が公開されている、円城塔さんの『文字渦』を読んでいて、『緑字』の中で四季の和歌が書いてあるものの太く大きく書かれている部分を「季節を代表する言葉を強調」していると解釈している場面がありました。書道作品だと抑揚表現は文意よりも全体の視覚的バランスによるものが多いと思うけれど、今回の組版の重なりや奥行き方向の動きは書く動作や見た目より文章の展開の方が関連性が強いので、文意に合わせた動きを入れたらどうだろう?

は〜なるほど、強調したい語と線太さが連動していれば、その語と語の間を行き来する粒子が自ずと多くなるとかはできそう。


映像と音

さて、ここで神田さんから楽曲の試作も到着しました!

メロディの印象はあまり強すぎず、無機質で神秘的なイメージ、ということでお願いしていました。

音の響きがあって、空間が広がっていくような感じがするね。文章の内容や構成とも重なります。

映像の構成を考えるにあたって音楽ってすごく重要で、前の作品を作った時は映像がほぼ完成した後にそれに合う音楽を探したので音楽から構成を広げることができなかったのだけど、今回は映像作業の前に楽曲を作っていただけることになったので、そこから構成や動きも広げていけるのがとてもありがたいですね。 音楽の専門的なことはわからないので、漠然としたイメージだけ伝えて作ってもらったんですがニュアンスを汲み取っていただいて、とても素敵な楽曲を作っていただけました。ありがたや。


試作をいくつかやって、曲もできて、そろそろ本制作に移りたいところですね。せっかくだからこの曲を聴いてイメージを膨らませながら作字してみようかな。

ゆるゆると試作をしつつ、全体の構想があるような、ないような……という感じですが、こういうのはとりあえず作ってみないとわからないですね! 手を動かしつつ、考えつつ、でやっていきましょう! わっしょい!


いろいろな試作を重ね、来月はいよいよ本制作に入ります! ご期待ください!

2019年4月1日

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『今月のもじうご』を振り返る〈前編〉
『今月のもじうご』を振り返る〈前編〉
映像作品『夜は』で東京TDC賞2017 RGB賞を受賞した宇野由希子と藤田すずかによる、実験的な共同作業を続け、2017年8月よりお届けしてきた『今月のもじうご』。1年を終え、新たな「もじうご」の制作に入る前に、この1年を大日本タイポ組合塚田哲也さんをまじえて振り返ります。