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インドラ・クッファーシュミットさん(ドイツ)

世界のタイプ道

インドラ・クッファーシュミットさん(ドイツ)

 世界各地にひろがるタイポグラフィーの世界を覗いてみませんか?

当連載「世界のタイプ道」では、世界各地の書体デザイナー、プログラマー、教育者、ベンダー、そしてこの書体を愛するコミュニティの基礎を支える多彩な方々へのインタビューを通して、タイポグラフィーという世界の魅力をお伝えしていきます。

 今回はドイツのタイポグラファー、インドラ・クッファーシュミットさんにお話を伺いました!


── ご自身について教えてください。

インドラ・クッファーシュミット(以下、IK): タイポグラファーとして活動しています。また、ドイツの南西部にあるHBKsaar、University of Arts Saarbrückenのコミュニケーション・デザインの教授を務めています。


── 好きなアルファベットを教えてください。

IK: 小文字が好きです。アセンダーやディセンダーなど、バリエーションが豊富で、大文字よりも自然でくだけた印象があります。


── 新しいスタイルをデザインする時はどの文字を最初にデザインしますか?

IK: 最初に“n”をデザインすると、プロポーション(幅やウェイト)、ストロークの太さやコントラスト、ターミナルの処理(セリフ)などのアイディアが浮かびます。“n”のデザインが完成すれば、m, u, i, l, h, r などのデザインが楽になりますね。これらの文字を使って、スペーシングやテキストを入力してみることもできます。


── 公開可能な範囲で現在取り組んでいるプロジェクトを教えてください。

IK: ドイツ規格協会の書体分類を新訂するプロジェクトが近々再開されます。このプロジェクトには1998年より携わっているのですが、長い間中断されていました。プロジェクトの中断以来、どうすれば書体分類がもっと役立つか、というトピックについて本を執筆したり、私のウェブサイトに記事を書いてきました。今回はより機能的にプロジェクト委員会が構成されていると思うので、2020年中にはきちんとまとまると確信しています。1950年代から取り組んでいた書体分類がようやく終わるでしょう。1950年代には優れた欧文のサンセリフ書体の多くがまだリリースされていませんでした。

また、今年は長年取り組んでいる私のブックプロジェクトの一部を完了させたいと思っています。


── デザインしてみたい言語はありますか?

IK: ハングルのロジックやシステムにとても興味があります。やや四角く堅い印象がありますが。一方、丸みがあり、スタイルによってループがあるタイ語にも魅力を感じます。この二つの言語のデザインにいつか挑戦してみたいですね。でも仕事としてではなく。これらの言語を母国語とし、私よりもずっと仕事ができる、才能ある優れたデザイナーたちがたくさんいますから。


ATypIは初めて参加する時がきっと一番圧倒される

2011年のATypI Reykjavikにて。左からインドラ・クッファーシュミット、ペトラ・ワイツ(当時のFont Shop International CEO)、ヴェロニカ・ブリアン(Type Together) 写真:Frank Grießhammer

── 印象に残っているATypIカンファレンスを教えてください。

IK: 遠い場所やあまり知らない土地で開催されるカンファレンスが好きですね。言語に付加記号や文字がたくさんある国だとさらに魅力的です。なじみのない場所で開催されると、カンファレンスだけでなく、様々な出会いやアクティビティーが思い出に残ると思います。

2015年にサンパウロで行われたATypIは楽しかったですね。人々のあたたかさやクレイジーな環境、そして、Catherin Dixonの基調講演に感銘を受けました。いまだに1週間に1回はその基調公演についてじっくり考えています。カンファレンスのパーティーも、この10年ではずば抜けて素晴らしいものでした。

アイスランドのレイキャヴィークで行われた2011年のATypIも素晴らしかったです。当時のアイスランド大統領がオープニングの挨拶を行い、ビル・ゲイツにWindowsにアイスランド語を追加するように働きかけたことを話されました。また、会場となったハルパコンサートホールのファサードはオラファー・エリアソンがデザインしています。

2017年のATypIはモントリオールで開催されました。私はオラファー・エリアソンの作品が大好きなのですが、2017年はATypI会場のすぐ近くで彼の展示会が開催されており、とても嬉しかったです。

私が初めて参加したATypIはドイツのライプツィヒで開催された2000年のカンファレンスです。ATypIは初めて参加する時がきっと一番圧倒されると思います。参加している人の情報や、スピーカーのプレゼン内容について手探りな状態でしょう。3回目、10回目の参加となっていくと、ATypIとは友人がたくさんいる、自分が帰る場所のようになります。

2011年ATypI会場のハルパコンサートホール
写真:Frank Grießhammer

2011年ATypI会場のハルパコンサートホール
写真:Nick Sherman


── 毎年参加しているタイポグラフィーのイベントはありますか?

IK: TypoBerliin、ATypI、Typographicsには何度も参加しています。今年は、地元で開催されるイベント以外に、ポルトガルのポルトで開催されるFontstandに参加します。また、タイで開催されるBitsにも参加するかもしれません。今年参加すれば、Bitsに参加するのは3回目になります。

ATypI São Paulo期間中にサンパウロのマーケットにて一休み(2015年)
左からインドラ・クッファーシュミット、Julia Kravtsova、Elena Veguillas、CJ Dunn


── モリサワのタイプデザインコンペティション2019の審査員を務められます。コンペティションに期待していることを聞かせてください。

IK: 予想外のデザインやソリューションを目にすることを楽しみにしています。一年にたくさんの書体がリリースされると、飽きてしまうかもしれません。世の中には既に書体は十分あるじゃないか、と言われることもあります。ですがそうではありません。毎年、見たことのないような書体やワクワクさせられる書体に出会います。今までに見たことのないような面白い書体や、優れた機能を持ち、他の書体から際立つような書体を作ることはまだまだ可能だと思っています。


── 今年は日本にいらっしゃいますが、日本に対してどのようなイメージをお持ちですか。

IK: 日本は全てがとてもきちんとしていて落ち着いており、効率的で、時間に正確なイメージがあります。ドイツ人はとてもきちんとしている、というイメージを持たれがちですが、日本に行ったら私なんて支離滅裂な外国人だと思われるでしょう。

日本の美味しいお米、フルーツ、野菜などを食べるのも楽しみです!


── 紅茶派?コーヒー派?

IK: コーヒーです!

ATypI São Paulo後に開催されたレタリングウォーク(2015年)

2019年3月27日

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