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5月のもじうご報告

今月のもじうご

5月のもじうご報告

2017年8月から1年間、月1回の連載『今月のもじうご』をお届けした、宇野由希子と藤田すずかによる新作制作の定期報告。
第4回目となる今回からは本制作に突入します。これまでの試作をもとに、まずは文字から作っていきます。張り切っていきましょう!


藤田(うご担当):さて、前回までの試作を受けていよいよ本制作ですね。

宇野(もじ担当):試作を重ねて作品全体の雰囲気も見えてきたので、まずは文字からどんどん作っていきたいと思います!


本制作をはじめます!

いろんなゆらぎの動きを入れていきたいけど、等幅の文字がゆらぐ動きで一旦全てを網羅したいな。 試作の時と同じく、黒地に白文字で。

等幅の文字をベースにして変化をつけていく感じだね。動きの繊細な雰囲気に文字のデザインももう少し寄せていきたいな。
線幅を文字のボディ枠に対して等幅にするか、それとも文字の表示サイズに関わらず画面に対して常に同じ幅にするかがあると思うけど、どうだろう?

それはボディ枠でいいんじゃないかな。文字が大きく表示されてる時は線も太くなる。

確かに、その方が視点の変化の印象も強まるかも。漢字仮名交じりで文字によって密度にかなり差があるから、等幅でも線ごとの太さは調整したいな。

OKです。線ごとに指定してもらえれば。全体として試作よりもう少し細くても良さそう。黒字に白だと映像で見た時に少し太ると思うし。

なるほど。背景色と文字の色のコントラストに合わせて作字できるのも「もじうご」ならではだな。
ではさっそく基本となる等幅の書体を考えていきます。


視点と字形

定期報告の1回目で少し触れましたが、この文章はひとつの場面ごとに正方形に組版することを前提に書かれています。無の状態から素粒子があり、宇宙が誕生し、銀河があり、地球があり、都市があり、人がいて……というように視線が拡大していくように展開していく内容で、つまり正方形の組版が切り変わるごとに場面が変わり視点が変化します。
組版は13個あって、正方形の1辺の文字数が1文字から7文字まで増えていき、その後、終わりの1文字に向かって減っていくという情報量の増減もあります。

文章はまだ秘密です

組版が後半に向かうにつれ、視線の変化とともに文章の雰囲気も徐々に柔らかく緩んでいくような印象です。

文章を書いてくれている大竹さんも「最初はちょっとシリアスでだんだん間抜けな感じです!」とおっしゃってましたね。

試作の時は同じ文字は同じ形を基本として、見た目の変化のために別字形を作るかどうかくらいに考えていたのだけれど、大竹さんとお話ししたり文章を読み込んだりしているうちに、組版ごとの視点の変化に応じた方がいいのかもと考えるようになりました。

そうだね〜。視点の変化があるというのは映像ならではの特性なので、それに合わせて文字自体も変化する方が見応えありそう。

同じエレメントを持つ文字でも、ふところの締まり具合とか、画の接し方などで変化をつけることができそうなので、同じ書体に見える範囲内で組版ごとに少し形を変えていってみようかと思います。やってみたことが無いからうまくできるか分からないけど……。


組版ごとの文章の変化と文字のデザインの変化

さらに文章を読み込んで、組版1から6までは視点が拡大しながら状況を淡々と説明していて、組版7で主人公が現れてそこから徐々に内容が身近で柔らかい印象になっていくなと感じました。
組版1から6まではトーンが一定だから同じ形で淡々と書き、7から徐々に形が緩んでいくように書いていこうかと思います。

等幅の時は骨格だけを下描きして、太さをつけた線でなぞるところから始めます

序盤は静かで緊張感のあるイメージなので、文字もかっちりと、筆画がしっかり接していたり、文字の中の空間が均等に近くなっていたり。かっちりすることでゆらぎの動きとのコントラストにもなるかな。試作の時に考えた縦画と立体・空間についても頭に置いていて、スッと立っているようなバランスにしたいという意識もありました。

序盤は暗い、冷えた、青いなどの言葉が多く、冷たい感じもあるね。硬質な基本形と、有機的なゆらぎのコントラストが出るとよさそう。

後半は少しずつ緩んでいくように、画と画の間を少し離したり、バランスに変化をつけたり、線を柔らかくしたり、内容が身近になっていくにつれて、風通しを良くという気持ちで作っていきました。

組版2と組版12の「張」
組版3と組版11の「た」

字の形は組版ごとに変えて、同じ組版の中では同じ文字は同じ形にしています。書では同じ面に同じ形が並んで単調にならないように形を変えることがあるけど、それとは違った別字形の使い方になりました。文章や構成が決まった上で描くとこういうこともできますね。作字数が増えてちょっとヒヤヒヤしたけど、楽しかったです。

文字数が多く、基本的な文字形のゆらぎが一番形の歪みも気になると思うので一旦通して基本文字形の動きをバーッとつけてしまおうかな。そのあとに図形的な表現などの動きを適宜足していく感じで。

そうだね、図形的な表現はこの基本の字の形に対して動きがついたり部分を抽出したりするものだから、基本の形に対してなるべく明快なルール付けをして作っていけたらいいのかな〜と思ってます。


今回はずっと黒地に白い線で作字していて、普段の白地に黒とは逆だったのだけど、疲れてくると画の交点がぼんやり黒く見えてくるんだよね……。初めて見えた時はひえーって思った(笑)。昔そういう錯視を利用したテストみたいなの流行ったな。動き作業中にもし交点が黒く見えてきたら即座に寝てください!

( ˘ω˘ )スヤ


基本とする文字の形が出来上がりました。どんなふうに動くのか、どんなふうに発展していくのか、ぜひ、お楽しみに!

2019年5月16日

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『今月のもじうご』を振り返る〈前編〉
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映像作品『夜は』で東京TDC賞2017 RGB賞を受賞した宇野由希子と藤田すずかによる、実験的な共同作業を続け、2017年8月よりお届けしてきた『今月のもじうご』。1年を終え、新たな「もじうご」の制作に入る前に、この1年を大日本タイポ組合塚田哲也さんをまじえて振り返ります。