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「活字のかたち鑑賞会その2 秀英体の生命力」イベントレポート!

イベントレポート

「活字のかたち鑑賞会その2 秀英体の生命力」イベントレポート!

 6月13日(木)日比谷図書文化館で開催された日比谷カレッジ「活字のかたち鑑賞会」の第二弾「秀英体の生命力」。 登壇されたのは大日本印刷株式会社秀英体開発グループの伊藤正樹氏と宮田愛子氏。

長い歴史を持つ秀英体について、2005年から7年をかけて10書体12万字が開発されたリニューアルプロジェクト「平成の大改刻」の話題を軸に紹介。書体の特徴や書体制作の現場について、また印刷技術と文字との関係の歴史や、書籍だけでない現代の幅広い利用事例が語られました。トークの模様をレポートします!

「秀英体の生命力」

伊藤正樹氏・宮田愛子氏

左から宮田愛子氏・伊藤正樹氏

 大日本印刷株式会社のオリジナル書体である秀英体は100年以上の歴史をもち、現在のラインナップは19書体。今やもっとも身近なフォントのひとつです。秀英体の歴史については、伊藤氏が解説。

「代表的な利用事例は広辞苑。初版から最新の第七版まで、本文に秀英体が使用されています」。

明治時代に発行された夏目漱石の『吾輩は猫である』。秀英体で印刷されています

 長い歴史の中で多くの書籍や公文書の印刷に使用され、親しまれてきた秀英体。名付けの由来は、大日本印刷の前身が「秀英舍」だったことからだそう。「和文活字の二大潮流」のひとつと評され、のちの明朝体の開発に影響を与えることになります。

印刷技術の推移と秀英体の変遷

 秀英体が確立した(初号、1号〜8号が揃った)のは1912(明治45)。昭和50年代にはデジタル化されていきます。 この日の講演のタイトルにもある「秀英体の生命力」の通り、「活版印刷から写植、コンピューター組版(CTS)、現在のDTPへと、秀英体は印刷技術の変遷や時代のニーズにあわせて改良・移植されてきました」と語る宮田氏。

四号のかたちが元になり現代に継承されています

 2004年には『秀英体研究』と題する、活版の時から秀英体のデザインがどういう変遷をたどってきたかをまとめた本が刊行されます。専門家の片塩二朗氏の協力のもとにまとめられたこの本は、最後の章に「秀英体を今後も受け継いでいくにはリニューアルをしなくてはならない」と提言され、それをきっかけに秀英体の一大リニューアルである「平成の大改刻」が行なわれたとのこと。

平成の大改刻について

平成の大改刻プロジェクト

 続いて宮田氏から平成の大改刻についての解説が行なわれます。

「この改刻は、『この先の100年』にむけてのリニューアル。2005年までは工場で大日本印刷の出版印刷に使用されるための、表にはでていない書体でした。書籍以外のものにも使ってもらえる書体にするためのプロジェクトでした」。

改刻と改刻前の字形

 リニューアルはもともとある書体の修正がまず行なわれたとのこと。 写真一番上が手書き原図、中段が改刻前にデジタルで持っていた書体、一番下が改刻後の書体。リニューアル後のものはくっきりと見えます。ディスプレイに表示した時もはっきりと見えるように、形以外にも太さの見直しがなされたそう。

「もともとが書籍の本文での使用を想定した書体なので、拡大して表示する文字にしてしまうと、どうしても荒が見えてきてしまう」と宮田氏。ひらがなも全文字のみなおしがされ、一点一画がきれいに表示されるように。

この改刻では明朝の修正のほかに、初号明朝をはじめてデジタル化。角ゴシック・丸ゴシックの新書体開発がなされ、7年かけて10書体12万文字が作られたそう。

 実際の書体開発の工程も紹介されました。どれぐらいの時間をかけて作られるか想像がつきにくいものですが、一文字を作るのには30分〜60分、一日に作れるのは15文字程度ということだそうで、Adobe規格である23000字を作るのには膨大な時間がかかることがわかります。

秀英体の歴史や書体開発については、秀英体HPから映像アーカイブでもって詳しく公開されています

漢字を作り進める上で最初に作られる基本の文字。この12文字で、はらいの形状など基本的なデザインを確認

 文章を組んで印刷してみたりのチェックをしながら進められるそうですが、漢字の場合にはデザインチェックの前に、字形のチェックがはいるそう。

 新元号「令和」が発表された際にも「令」の五画目が点なのか縦画なのかと話題になりましたが、たとえば同じ書体の中で、「令」の字の形状と「齢」の旁の形状にばらつきがでることのないようにするのが字形のチェック。字形の基準となる設計書を作りつつ、それにそって開発が進められるとのことでした。

はねのデザイン設計

 デザインの設計書の中では、字の各パーツをどう作るかがルール化され記されているとのこと。 はらいの長さや角度、はねの勢いなども数値で設定され、それを基準にデザインされているそうです。

平成の大改刻については、『100年目の書体づくり』に記録がまとめられています!

活字の鑑賞

 後半は改刻書体ごとに、その書体のコンセプトや利用事例が紹介されました。

 まずとりあげられたのは「秀英明朝」。コンセプトは「本文を美しく 読みやすく」。たとえば講談社新書の多くは本文に秀英明朝が使用されています。毛筆による美しさ、あたたかみを感じるクラシックな印象です。

『不思議の国のアリスWith artwork by 草間彌生』は秀英明朝をとても大きく本文に使っている例。リニューアルしたので、これだけ大きくつかっても美しく印字されます

 秀英初号明朝のコンセプトは「見出しを美しく目立たせる」。

仮名も漢字もはらいがとてものびやかなのが特徴。ひきしまっていて落ち着いたかたちが格好いい、見出し用の書体です。

原尞著『それまでの明日』岸見一郎著『老いる勇気』

 「秀英角ゴシック」は「金」と「銀」二種類の仮名をもち、用途によって使い分けできるのが特徴。「金」は秀英明朝とマッチするオーソドックスなゴシック体で見出しの用途に。「銀」は秀英明朝の骨格をベースに、漢字とかなの大きさのバランスなどが引き継がれ、本文組みでも活躍する書体とのこと。

渡部和泉著『“全国のおいしいもの”をカンタン再現! おうちで旅レシピ』

 秀英丸ゴシックは「カジュアルな秀英体」がコンセプト。

「用途を拡張してデジタルメディアを用いたソーシャルな情報発信でも使うことができる、やわらかく内容を伝える秀英体」と宮田氏。優しさを持ちつつ子供っぽくなりすぎないことが意識されたそう。

ゆうきゆう著『やりたいことを次々と実現する人の心理術』

 「難しいことをわかりやすく伝える、でも子供っぽくなりすぎない印象ということで、Howto本や、自己啓発本などに多く見られる」と伊藤氏。

 線の太さの数値データについても解説。どの線も同じ太さの線に見えるゴシック書体ですが、実際は均一に自然に見えるための、数値の細かい調整がされています。

横画が多い「鷹」の字の九画め、十画めは1000分の38の太さ。単純な「三」の文字は1000分の70の太さ

 そのほか金属活字時代の仮名の復刻である「秀英四号かな・四号太かな」や、

平山夢明著『大江戸怪談 どたんばたん(土壇場譚)』

 アナログ感が追求された「秀英にじみフォント」などの事例も紹介。

出版以外の、テレビCMや街頭広告、商品パッケージも幅広く紹介されました。

村上龍著『収録を終えて、こんなことを考えた カンブリア宮殿 編集後記』

 文字好きにも本好きにもたまらないイベントでした!

(レポート:伊東友子


おまけ

 取材に同席していた大日本タイポ組合の塚田哲也が、講演中ずっと真剣にペンを動かしているので、何を必死にメモをとっているのだろうと覗きこんだところ、お二人の似顔絵をいくつも描いていたのでした。伊藤さんからのリクエストもあり、ここにその似顔絵(の一部)を掲載します。

このほかにも伊藤さんの似顔絵は5パージョンくらいありました

2019年7月25日

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