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サイラス・ハイスミス氏「Letters, Rabbits, and Monsters」

モリサワ文字文化フォーラム「WE LOVE TYPE 2」

サイラス・ハイスミス氏「Letters, Rabbits, and Monsters」

2014年11月6日に開催された第15回モリサワ文字文化フォーラム「WE LOVE TYPE 2」のレポート、第4回目はセッション3-1「Letters, Rabbits, and Monsters」(タイプデザイナー:サイラス・ハイスミス氏)を紹介する。


セッション3-1「Letters, Rabbits, and Monsters」

タイプデザイナー サイラス・ハイスミス氏

セッション3では、まずサイラス・ハイスミス氏が「Letters, Rabbits, and Monsters」をテーマに、「文字」「ウサギ」「怪獣」について語った。


グーテンベルグの発明とは「文字を箱に入れて運べるようにしたこと」

「文字」についてのパートでは、同氏の著作「Inside Paragraph」(日本語書名「欧文タイポグラフィの基本」)の内容を引用しながら話を進めた。

冒頭、「この本では活字のあり方について述べており、基本的な概念として活版印刷の成り立ちを振り返っている。私の話を聞く中で、西洋のタイポグラフィと東洋のタイポグラフィの違いも考えてもらいたい。言葉の構成は異なっていても、テキストのパラグラフの背景にある構造はいずれも非常に類似している。そしてタイプデザインを考える上で、構造の部分が非常に重要になる」と前置いた上で、グーテンベルグが発明した活版印刷の考え方に言及した。

同氏は、「グーテンベルグは本を発明した訳でもなく、印刷を発明した訳でもない。彼の発明とは、テキストのパラグラフをつくる道筋を変えたということである」とした上で、「文字をひとつひとつ書くかわりに、彼の発明によって、手書き文字を再現することが可能になり、それぞれの文字を箱の中に入れて拾い上げ、アレンジできるようになった。様々な形状のものを標準の枠に入れることで、取り扱いが簡単になったわけだ。これは、『4足の靴をそれぞれ運ぶのか、あるいは靴箱に入れて運ぶのか』という議論と似ている」と述べ、それが今日使われている文字の基本になっていることを示唆した。

また、そのパラグラフを構成する要素や関連性について、「パラグラフには黒(文字)と白(背景)という2つのビジュアル的な構成要素があるが、これはインキと紙というような別々のものとして考えるのではなく、黒と白を、パズルのピースのように考えていただきたい」と解説。その上で、文字の中の白い部分である「カウンタースペース」、行の間の空間である「ラインスペース」、文字の間である「レタースペース」という白い構成要素を発明したグーテンベルグの考え方をもとに、これら3つのスペースを足したものになる「グリフスペース」という、いわゆる「靴箱」に相当する新しいスペースが生み出されたことを解説した。

続く「ウサギ」のパートでは、「日本語の漢字の形に興味がある。その形が文字の意味そのものを表すという部分に魅力を感じる」と語った上で、娘と一緒につくったという「THE LITTLE BUNNY」という小さなウサギの本について紹介。現在は3部作のシリーズになっているという。

同氏はその話のひとつを紹介した上で、「良いストーリーがあってこその絵である。その意味でウサギの絵を描くことはタイプフェイスを書くことと似ている。新しいタイプフェイスをデザインする際に、私は特定の用途を念頭に置く。良いタイプフェイスというのは役割がしっかりと定義付けされていなければならない」と語った。

続く「怪獣」のパートでは、赤と青と黒など、それぞれの色を重ね合わせて描く怪獣に「怪獣」という漢字を添えた版画のような作品を紹介。「私は勢いよく描いた絵が、赤と黒を刷り重ねることで生まれるメカニカルなプロセスによってイメージを体現していく様が好きである」


相互の異なる側面がアーティスト性を高めることに

最後に、「文字」「ウサギ」「怪獣」という一見つながりのないテーマは、氏が手掛ける仕事のそれぞれの側面を示していると説明。「タイプフェイスをデザインし、イラストレーションを描き、版画をつくり、本も書くというそれぞれの仕事は互いに影響し合っており、どれかひとつでも欠けると私のアーティスト性が失われる。タイプデザイナーとしての力量が上がるのもウサギのおかげ、ウサギがうまく描けるようになるのも文字を書いているからである」と述べ、講演を締め括った。


【セッション3-2:マシュー・カーター氏「Optical scale in type」は後日掲載します。】

2015年1月28日

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人物プロフィール

C
Cyrus Highsmith

1997年ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン(RISD)を卒業、フォントビューロー社入社。上級デザイナーとして新しいタイプ・シリーズの開発に関わる。RISD でタイポグラフィーを教える傍ら米国、メキシコ、ヨーロッパで講演やワークショップを展開。2001年、「プリント」誌のニュービジュアルアーティスト・レビューに特集される。Prensa と Relay が国際タイプデザイン・コンペティションの Bukva:Razで受賞。米国やヨーロッパで作品展を行っている。

雑誌「マーサ・スチュアート・リビング」、「ザ・ソース」、「メンズヘルス」、「プレイボーイ」(スペイン語版)、「ローリングストーン」、「モントリオール・ガゼット」(カナダ)、「ザ・サンデイ・インディペンデント」(ロンドン)に彼の書体が特集される。「ラ・プレンサ・グラフィカ」(エルサルバドル)、「エル・ユニバーサル」(メキシコシティ)の書体をデザイン。2002 年、ウォールストリートジャーナル紙の新しいヘッドライン・シリーズを制作、同社の伝統的な文字に複雑な現代のニーズを見事に組合せたと高く評価された。

仕事の領域は多岐にわたるが、何よりも製図工であることに誇りを持つ。製図はライフワークとして情熱を傾け、エネルギッシュなイラスト的アプローチと文字によるコミュニケーションをうまく組合せ、独自のデザイン書体を広げている。ウェディング招待状のカリグラフィと産業向けの力強いサンセリフ文字デザインの全くかけ離れた領域の仕事を軽々とこなす。

モリサワ文字文化フォーラム「WE LOVE TYPE 2」

type.center編集部

type.centerの編集部です。文字関連イベントをレポートしたり役立つ情報を発信できるよう努力してまいります。よろしくお願いします。

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