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8月のもじうご報告

今月のもじうご

8月のもじうご報告

2017年8月から1年間、月1回の連載『今月のもじうご』をお届けした、宇野由希子と藤田すずかによる新作制作の定期報告。
第5回目となる今回は、本制作編の続きです。出来上がった文字をもとに、動きをつけていきます。


宇野(もじ担当):さて、前回から間が空いてしまいましたが、本制作編の続きですね。

藤田(うご担当):そうですね。ちょっとですね、21_21 DESIGN SIGHTの企画展「虫展 −デザインのお手本−」に出展する映像を制作していたため、こちらの連載がちょっと止まってしまってたんですが……。無事完成しまして、絶賛開催中!ということで、こちらの連載も再開します!

おお……間が空いた理由を説明すると見せかけて、ちゃっかりがっつり宣伝入れてきましたね(笑)。プロダクトデザイナーの阿部憲嗣さんとの3人のチームで「虫のなまえ」をテーマにした映像+体験型作品を作りました! 映像作品はこの連載の制作で音楽を担当していただいている神田さんにもご協力いただきました!

夏休みシーズンにぴったりの、子供も大人も楽しめる展示だと思うのでみなさん是非行ってみてください〜。 いきなり告知ですみません。では気を取り直して、本題に入りましょう。


動きをつけていきましょう

宇野に文字を作ってもらいましたので、動きをどんどんつけていこうと思います。
今までの制作と比較するとかなり文字数が多く、全体で231文字あります。これにひたすら動きをつけていく感じですね。 

字数を数えちゃうとドキドキするよね。しかも組版ごとに字形を変えて同じ文字でも流用できないようにしちゃったし……。

忘れないように文字のリストを壁に貼ります

本作品は今までやったことの無いいろんな動きを試してみようという実験的なところがあるので、あまり最初に計画は立てずに見切り発車で手を動かしていきます。
とはいえ、あまりにも全体像が見えていないと不安すぎるので今までやってきた試作を元に、こんな動きを当ててくといいのではというざっくり構成はとりあえず作りました。

映像ざっくり構成表

映像ざっくり構成表

基本の字の形に対して、いくつかの表現を組版ごとに加えていく感じですね。ある要素を抽出したり、抽象化して図形に近づけたり。
試作の時はいろいろなパターンで感覚的にざっくり作ってみたけれど、本制作での基本の字以外の表現の形は基本の字の形に対してなるべく明確にルールを持って作ろうと思います。抽出する要素や注目する部分が試作で作ってみたものと同じでも、形の見え方は少し変わってくるかも。本制作とはいえ探り探りですね……。

関連のない新しいものを結びつけるのではなく、ひとつの基本形を少しずつ違う角度から見てより深掘りしていくようなイメージですね。

基本形となる文字(画像左)とそこから派生した形、画と画の間の見えない部分の動きに注目してみたり(画像中央)、縦方向の動きを抽出して抽象化してみたり(画像右)


文章と音楽のトーンに合わせつつ、ざっくり構成に合わせて動きをつけていきます。今回は基本形となる文字そのものと、文字の形から派生した図形数種類がありますが、まずは基本形の文字そのものに動きをつけていく作業をやっていきます。
文字を自由に動かすために、文字はアウトライン化されたベクターデータではなく骨格のみのデータを作ってもらっています。ここが通常の文字を使った映像制作と一番大きく異なるところではないでしょうか。おそらくフォントを動かそうとすると一度アウトライン化せざるを得ないので。骨格だけのベクターデータをもらい、3Dソフト上で肉付けすることでいろんな動きができるようにしています。

骨格のみなので1画の中に太さの抑揚は無く、同じ幅です。普通のフォントだと等幅に見えても、実はそう見せるためにわずかに抑揚をつけるなどの錯視調整をしているのですが、そうした細かい抑揚を使わずに等幅でも不自然に見えない形を探るのが「もじうご」での作字のがんばりどころですね。
同じ太さで比べた場合、縦画の方が横画より細く見えるという錯視があったり、線が密集している所はやはり濃く目立って見えたりするので、画ごとでは太さを少しずつ変えています。

肉付けの際、1画ごとに太さが異なったり、ベクターデータと若干形状が変わってしまったりするので、そこをなるべく元データに合った見え方に近づけていきます。シンプルな図形と比べ、文字は形の歪みがあると非常に目立ってしまうため一番シビアにチェックしていかないといけません。動きをつけたら、もじ担当の宇野がチェックし、歪みがあったらうご担当の藤田が修整する……という作業を繰り返しやっていきます。

今回は揺らぎの動きがつくので、歪んでいる修整すべき部分なのか、揺らいでいる表現なのか判断するのに少し悩みました。揺らぎの動きについても、揺らいでるのではなく、線の太さの乱れや形の歪みに見えてしまいそうな部分は指摘して、動きを少し調整してもらいます。
修整するか迷うような細かい部分ですが、全体の仕上がりには効いてくると思うので、友達であることを忘れるようにして、しつこくチェックを入れていきます。修整本当にお疲れさま……。

文字の歪みチェックは一文字ずつ、こつこつと……

こんな感じで、修整しつつ、揺らぎの動きをつけつつ、作業していきます。没入感が出るように視点も切り替えていきます。今は基本形の文字の動きだけですが、それぞれに図形のアニメーションも加えていきながら文章のトーンと合った印象に近づけていきたいですね。前半は硬質な感じで始まり、後半は有機的な形になっていく……というような全体の変化が出てくると、ずっと見てても飽きのこないものになるのかな〜という……そんな感じにできればなあ〜と思っているところ……。

そうね、文章の変化に連動できるといいよね。ここからどんなふうに表現が加わっていくのか楽しみ……!

早回しでお届けします


揺らぐ文字のかたち

副産物っぽい感じなのですが、この揺らいでる時の文字のかたち、静止画で見てもけっこう面白い感じになってます。手で書く時とはまた違う意図しない形ができるので、読めるような読めないような、文字のような図形のような、狭間な感じなのもグラフィックとして色々可能性があるのかなと思ったり。なんか良くないですか? これ。なんかに使えそう。

なんかいい感じなのでは?

確かに。文字の歪みのチェックのためにスローで見てると、かっこいいな〜って思う形になる瞬間がある。黒に箔押しプリントとかしてみたいな。

なかなか普段の仕事だと箔押しとかできないので、箔押しに憧れがあるんだよね。
箔ではないけど、金や蛍光色のプリントは手軽にできたのでやってみました。

おお〜いい感じ。そして作った文字が揺らいだまま止まっているのがなんだか不思議な気持ちになる。揺らいでいない形が想像できるのは、やっぱり作ったからなのかな。

金インクなかなかいいな〜

光ってる感あるな〜

足だな〜


ということで、少し脱線しつつも引き続き動きをどんどんつけていきます! 一応あと1ヶ月ほどで完成したいスケジュールですが、果たしてどうなることやら。完成するといいな。

完成すると信じよう。止まない雨はないし、明けない夜はないし、動かない文字はない……!


もうすぐ本作品も完成?の予定! 果たして完成するのか、一体どんな作品になるのか、どこでお披露目されるのか……お楽しみに!

2019年8月2日

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『今月のもじうご』を振り返る〈前編〉
『今月のもじうご』を振り返る〈前編〉
映像作品『夜は』で東京TDC賞2017 RGB賞を受賞した宇野由希子と藤田すずかによる、実験的な共同作業を続け、2017年8月よりお届けしてきた『今月のもじうご』。1年を終え、新たな「もじうご」の制作に入る前に、この1年を大日本タイポ組合塚田哲也さんをまじえて振り返ります。