文字による文字のための文字のサイト

河村真奈「フリック書道」

文字の未来・未来の文字

河村真奈「フリック書道」

「ATypI 2019 Tokyo」で行われたtype.center 企画展「文字の未来・未来の文字」。このコーナーでは、改めて展示作品を作家みずからご紹介。河村真奈さんの作品は三幅の掛軸による「フリック書道」です。


「フリック書道」

河村真奈

「フリック書道」は、多摩美術大学情報デザイン学科情報デザインコースの2年次、大日本タイポ組合が講師を務める「文字表現演習」の課題、「かたちの理由」にむけて制作したものである。

今回の展示の様子 偉人の名言や漫画のキャラクターのセリフを掲示している

みなさんが最後に文字を「書く」行為をしたのはいつだろうか。 近年、スマートフォンの普及により文字を「打つ」習慣が増え、文字を「書く」習慣が減りつつある。私自身、スマートフォンが大好きな若者という立場で言うと、数日ペンを持っていないこともざらにあるし、ペンを持って紙に字を書く、という行為は、時々、違和感を覚えることだってある。漢字は当たり前のこと、ひらがなでさえ時々書き方を間違える。私たちは大人になるにつれどんどん文字を書かなくなっている。書けなくなっている。 今も記事を「打って」いる。

しかし私たちはスマートフォンで文字を打つとき、指でディスプレイをなぞる行為を行なっている。フリック入力である。 指をはらったり(スワイプ)、とめたり(タップ)……。 私たちはフリック入力を使うことによって知らず識らずのうちに文字を「書いて」いるのだ。そこに気付き、今回の作品「フリック書道」を制作した。

【第一段階】

最初はフリックの「向き」のみで書いた文字を表現しようと試みた。(上画像、左の図を参照)スワイプを矢印、タップを丸にし作成してみる。しかしどうにも書いた字という感覚はこず、「打った」字の抽出の印象が強くなった。

【第二段階】

次にフリックの軌跡を描いたもの(上画像、左の図を参照)を作成。一気に「書いた」印象となった。 この結果、毛筆で書くという、キーボードから離れたアナログな表現で制作を試みることに決めた。

そして完成した作品が冒頭に掲載したものである。左からトルストイ、ドラえもん、松岡修造のセリフ・名言をフリックで入力し、その軌跡を抽出。さらに大日本タイポ組合・塚田さんの臨書によってそれぞれの人物を思わせる書き方を施され、「書いた」文字の印象がより鮮烈となった。

古代人にしかわからない文字がある。オルメカ文字、原エラム文字、ロンゴロンゴ……。数千年前のものとなると未だに現代の私たちには解読することができずに頭を捻るものが残っている。 しかし当然、現代人にしか分からない文字だってこの世にごまんとある。今なお生まれ続けているのだ。その中の末席にこの文字を置いていただけると幸いである。数千年先の人たちには是非この文字を見て頭を捻らせてほしい。


「文字の未来・未来の文字」(会期終了)

Beyond Type - Exploring the Type in the Future

  • 出展作家(50音順)

    • 伊東友子+時里充 ―「めくる映像シリーズ」
    • 宇野由希子+藤田すずか ―「暗い台所 青い発酵」
    • 勝本雄一朗 ―「Robotype」
    • 河村真奈 ―「フリック書道」
    • 大日本印刷 秀英体開発グループ ―「DNP感情表現フォントシステム」
    • 大日本タイポ組合 ∩ 古堅まさひこ ―「帰ってきた『字作字演』」
  • 会場

    • 日本科学未来館 7階
  • 会期・開催時間

    • 2019年9月4日(水)〜7日(土)
    • 9:00–18:00
  • 観覧方法と料金

  • 主催

    • ATypI
2019年12月27日

シェア

人物プロフィール

河村真奈

多摩美術大学情報デザイン学科4年。2年次に大日本タイポ組合からタイポグラフィを学ぶ。現在「ごんたくにど」名義で大洋図書発行「CRAFT」にて漫画を連載中。

文字の未来・未来の文字

type.center編集部

type.centerの編集部です。文字関連イベントをレポートしたり役立つ情報を発信できるよう努力してまいります。よろしくお願いします。

連載記事一覧
今日
昨日
おととい
ちかごろ
あいうえお かきくけこ さしすせそ たちつてと なにぬねの はひふへほ まみむめも やゆよ らりるれろ わゐゑを ん がぎぐげご ざじずぜぞ だぢづでど ばびぶべぼ ぱぴぷぺぽ 0123456789.
連載記事一覧
連載記事一覧
文字の未来・未来の文字
DNP秀英体開発グループ「DNP感情表現フォントシステ…
DNP秀英体開発グループ「DNP感情表現フォントシステム」
「ATypI 2019 Tokyo」で行われたtype.center 企画展「文字の未来・未来の文字」。このコーナーでは、改めて展示作品を作家みずから語ります。DNP秀英体開発グループの「DNP感情表現フォントシステム」は、会場ではキーボード入力・音声入力で体験できました!