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「感性に逃げないデザイン」佐藤卓

モリサワ文字文化フォーラム「文字とデザインVol.5」

「感性に逃げないデザイン」佐藤卓

2014年6月5日に開催された、第13回モリサワ文字文化フォーラム「文字とデザインVol.5」(於:株式会社モリサワ本社4F大ホール)のレポート、セッション2「『タイポグラフィー』って、本当のところ、何?」(平林奈緒美氏×古平正義)氏に続いて佐藤卓氏のセッションと、急遽最終セッションとして組込まれたトークショーをお伝えする。


「感性に逃げないデザイン」

セッション3:佐藤卓氏


「文字はグラフィックデザインの基本。文字はその国の文化そのもの。ということは、その国のデザインを考えると、文字を考えることになる」という言葉から佐藤氏のセッションがはじまった。

「デザインは感性の仕事だと言われていたが、感性のない人なんているのか。また、感性を売り物にしていいのか、とも思う。いま改めて『デザイナーは感性に逃げてはいけない』とはっきりと言えるようになった」と佐藤氏は語る。

アートの世界では、身につけた表現力を自己表現に使えば良いが、デザインとなった時、とかく、表現力を身につけた人間はそこに頼ろうとしてしまう。「デザインは『やるべきことをやる』のであって、『やりたいことをやる』のではない」と断言する。

政治、経済、医療、福祉、自然科学、教育…。あらゆるところに既にデザインはある。あらゆるところにデザインが必要ならば、身につけた表現力であらゆる場所にデザインを活かすことが必要である。しかし社会的にそういう認識がなく、文化よりも経済を優先する、つまり金儲けのための道具としてデザインが使われてきたこと、ものを売るためのデザインというイメージが社会的に浸透してしまったことが大きな問題であると指摘した。

国立国会図書館の「日本十進分類法」で「デザイン」という言葉は芸術の中に分類されているが、現実を考えてみると、分類されたものの中にデザインという枠があるのではなく、世の中のありとあらゆる物事と人をつなぐ間に、レイヤーのように存在するのがデザインだということが分かってくる。「デザインは、まさに言葉や文字と同じように分類できないもの。デザイナーとして社会と向き合っていくには、ありとあらゆるところと接続できる状態にあるべきだ」と佐藤氏は語る。

まだまだデザインが踏み込めていないところに、デザインのスキルがもっと入っていくと社会のためになるし、デザインが世の中のためになっていくという認識も高まる。するとデザイナーの仕事も認められるし、仕事も発生するということだ。

続いての作品紹介では、ニッカウヰスキーの「ピュアモルト」について解説。「パッケージデザインはグラフィックデザインとプロダクトデザインとの中間にあって、ウイスキーはインテリアの一部にもなる。化粧品なども、しばらくは環境の中に置かれるのでインテリアデザインとも言える。パッケージデザインは、ありとあらゆるものを繋いでいるメディアだと感じはじめた」と佐藤氏。

続いて、「ゼナ」の紹介。考えし尽くした結果、「分からない」というキーワードにたどりついたこと、最初の提案は理解されず、分かる案を100案作ってほしいと依頼されたこと。忍耐が重要だが、100案作るのはある意味簡単で無責任に作ればいい。決定までに3ヵ月ほど要し、最終的に最初の案に決定したが、この決定までの期間は「なぜこれがいいのか」ということを共有する時間となったこと。クライアントに自分たちも一緒に作っているという意識が生まれると、「残そう」という気持ちになるもので、それが、いまなおゼナがそのままのデザインで残っている所以であることを明かした。

続いて「おいしい牛乳」では、一生活者として普通であってほしい牛乳に対し、商品の「わきまえ」が重要だと説明。「縦の形には縦組みの文字。こんなに文字の豊かな国は世界のどこにもない」

続いて、「S&B スパイス&ハーブ」「XYLITOL」について解説。とくに「XYLITOL」の仕事から「解剖」というアイデアを考え、デザインを考えるプロジェクトを立ち上げ、メーカーに展覧会開催を提案。2001年に実現したという。

展覧会のテーマは「既知の未知化」。「写ルンです」「おいしい牛乳」「リカちゃん」なども大解剖したそうだ。

2007年開催の水の展覧会の紹介では、水に対して興味を持たせてくれたきっかけが牛丼だと説明。牛丼1杯には2,000リットルの水が使われている。牛は大量の水を飲むし、餌の穀物を育てるために使われる水もある。これら見えない裏側で使われている水が2,000リットルあると説明し、「見えないモノと人を繋ぐところにもっとデザインというものが活かせるのではないか」と語った。


特別プログラム:トークショー

急遽、最終セッションとして組み込まれたトークショー。4名が一堂に会し、なごやかなムードの中、進行した。

「リスペクトしているからこそコンプレックスも抱くが、互いに学ぶことも多く、コラボレーションするとおもしろいことになる」という話。好きなことを仕事にする辛い部分、仕事だからこそ淡々とできることなど、それぞれの立場でのリアルな話が弾んだ。

▽自分で「これをやりたい」ということを見つけられた人が、それに必要な技術や知識を身につけていく。

▽デザインマインドを育む教育が重要。オリンピック2020で整備されていくだろうが、しっかりと国を挙げてやるべき。デジタルネイティブと言われる世代への教育も考えること。

▽人間の持っている感覚は、ごく一部のものしか使わなくなっていくかもしれないが、逆に自然のものに触れ、感覚を覚醒させるようなことが重要になってくるだろう。

会場では笑いも起こる中、最後の質疑応答へ。プロとして若いクリエイターへのモノづくりに対するアドバイスをもってトークショーは終了。大きな拍手とともに、第13回モリサワ文字文化フォーラム「文字とデザインVol.5」は幕を閉じた。

2014年10月17日

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人物プロフィール

佐藤卓

1979年東京藝術大学デザイン科卒業、1981年同大学院修了、株式会社電通を経て、1984年佐藤卓デザイン事務所設立。「ニッカ・ピュアモルト」の商品開発から始まり、「明治おいしい牛乳」「ロッテ・キシリトールガム」「S&Bスパイス&ハーブ」などの商品デザイン、「金沢21世紀美術館」「国立科学博物館」のシンボルマーク、「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」のグラフィックデザイン、「武蔵野美術大学 美術館・図書館」のロゴ、サイン及びファニチャーデザインを手掛ける。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」アートディレクター・「デザインあ」総合指導、21_21 DESIGN SIGHTディレクターを務めるなど、多岐に渡って活動。また、大量生産品をデザインの視点で解剖する「デザインの解剖」プロジェクトが話題を呼ぶ。代表著書に『クジラは潮を吹いていた』(DNPアートコミュニケーションズ)、『JOMONESE』(美術出版社)、写真集『真穴みかん』(平凡社)

古平正義

1970年大阪生まれ。主な仕事に「アートフェア東京」「ローリングストーン日本版」「堂島ウィンターライブ」等のアートディレクション、山下智久・GLAY・INORAN(LUNA SEA)等のCD/DVDジャケットやミュージックビデオ、「ラフォーレ原宿」広告・CM 他。D&AD 銀賞、ONE SHOW 銀賞、東京ADC 賞など受賞。www.flameinc.jp

平林奈緒美

東京生まれ。武蔵野美術大学卒業後、(株)資生堂宣伝部入社。ロンドンのデザインスタジオMadeThoughtに出向後、2005年よりフリーランスのアートディレクター/グラフィックデザイナー。雑誌GINZAのアートディレクションをはじめ、アパレルブランドのビジュアルディレクション、NTT DOCOMO、HOPE(JT) 等のパッケージデザイン、(marunouchi)HOUSE のサインデザイン、DREAMS COME TRUE・宇多田ヒカル等のCDジャケットデザインなど、ジャンルを問わず活動中。

斎藤精一

1975年神奈川生まれ。建築デザインをコロンビア大学建築学科(MSAAD)で学び、2000年からNYで活動を開始。その後ArnellGroupにてクリエティブとして活動し、2003年の越後妻有トリエンナーレでアーティストに選出されたのをきっかけに帰国。その後フリーランスのクリエイティブとして活躍後、2006 年にライゾマティクスを設立。建築で培ったロジカルな思考を基に、アート・コマーシャルの領域で立体・インタラクティブの作品を多数作り続けている。2009年-2013年国内外の広告賞にて多数受賞。現在、株式会社ライゾマティクス代表取締役、東京理科大学理工学部建築学科非常勤講師。2013年D&AD Digital Design部門審査員。

モリサワ文字文化フォーラム「文字とデザインVol.5」

type.center編集部

type.centerの編集部です。文字関連イベントをレポートしたり役立つ情報を発信できるよう努力してまいります。よろしくお願いします。

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