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レポート3:台湾と日本のデザイナーによる交流シンポジウム

「台湾ブックデザイン最前線」レポート

レポート3:台湾と日本のデザイナーによる交流シンポジウム

2015年台湾文化光点計画

「台湾ブックデザイン最前線」レポート(3)

東京藝術大学美術学部は11月9日、上野校地 中央棟2F 第3講義室において、台湾を代表する聶永真(アーロン・ニエ)氏と何佳興(ホー・ジァシン)氏の2人のデザイナーを招聘し、両氏の講演と日本人デザイナーとの交流シンポジウム「台湾ブックデザイン最前線」を開催した。その中から今回は、藤崎圭一郎氏をモデレーターに、日本からは色部義昭氏と松下計氏が参加したシンポジウムの様子をレポートする。

台湾と日本のデザイナーによる交流シンポジウム

聶永真氏×何佳興氏×色部義昭氏×松下計氏

台湾と日本のデザイナーによる交流シンポジウム

環境が大きく左右するデザイン

松下氏は冒頭、「台湾のデザイナー」という職業について、「国の抱える社会背景が象徴化される形で存在している。台湾のデザイナーの存在感、プレゼンスは台湾という国そのものを表している」とした上で、「かつての日本には、いまよりもっと触感的なコミュニケーションが存在していた。しかし、メディアや技術の問題などからシステム化が進み、現在、日本の出版業界では、台湾のように触感性や物質感のある本の実現は難しい状況にある。ただ、そのような感覚は日本の市場にも潜んでいるはず。そんな日本の潜在市場と台湾の豊かな市場性がうまく溶け合うとおもしろいことになるだろう」と語った。

一方、色部氏は「台湾の2人の作品は、どこか情緒的でビジュアルに表情がある美しい本が多い。私が創作で重視しているのは、むしろ構造やプロポーションなどで、視覚的じゃない部分を大事にデザインしている」と述べ、自身の作品を紹介した。

これを見た感想として聶永真氏は「コンセプトからキュレーションに至るまで厳密に組み立てられていて、美しさの連鎖、細やかに作り上げるその発想に感服している」と評価。また、何佳興氏は「完璧主義に見える中にどこか暖かみがある」と述べ、社会や生活環境に大きく左右されるデザインのおもしろさを言葉にした上で、「両国の同じ年代のデザイナーが違う環境の中で生み出すデザインの過程や結果を比べるドキュメンタリーができればおもしろいのではないか」と提案し、実験的な試みとして聴講者の興味を引いた。

「ポエティック」と「スピリチュアル」

台湾のブックデザインについて、色部氏は「ポエティック」と表現している。「『ポエティック』は非常に難しいものがある。一歩間違えると臭くなってしまうからだ。2人はそれを自然にやっている印象が強い。2人の創っているビジュアル言語は説明なしで理解できる」とし、漢字文化という感性からくる「共通言語」の存在を強調した。

これに対し、何佳興氏は「台湾は多様性に満ち溢れているように見える。しかし我々の世代は、基本的に自信がない。教育がそうさせたのかもしれないが、『欧米、日本のデザインは美しい、台湾は劣っている』という感覚がある。それが我々のモチベーションになっているようにも思う。『ポエティック』という裏には『自信のなさ』がある」と答える。

一方、聶永真氏は「自分たちが憧れたり、参考にしている多くが日本のものだったりする。そうすると作品も日本っぽくなってしまう。いまではそれを危惧しはじめ、自分たちのアイデンティティーがどこにあるのかを模索するデザイナーが増えている。だが、やっぱり影響されていることは事実」と語る。

台湾のブックデザインについて、松下氏は「スピリチュアル」という印象を語っている。「我々がデザインコンセプトを語るとき、社会的根拠や機能的根拠がないとプレゼンにならない。しかし台湾では、自分を語ることが大事なコンセプトになっている」(松下氏)

グラフィックデザイナーの社会的地位

最後は、グラフィックデザイナーの社会的地位の違いについて。藤崎氏は、「台湾では、セブンイレブンのコーヒーの紙カップに『design by Aaron Nieh』というクレジットが入っている。日本とは全然ちがう」と述べ、両国の違いを指摘。聶永真氏は「台湾でもグラフィックデザイナーは他のデザイナーより弱者であり、報酬も少ない。私は幸運にも早い時期から知名度をあげることができた。その影響力と作品力をもってグラフィックデザイナーの地位向上につとめたい」と語った。


2015年12月1日

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