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第2回:書体が法に保護される、その正体とは⁉ の巻

フォン太とアーツ郎の、FONT and LAW!

第2回:書体が法に保護される、その正体とは⁉ の巻

フォン太君 はフリーランスのグラフィックデザイナー。好きなスイーツは「フォンダンショコラ」。

アーツ郎君 はフォン太君の友達の若手弁護士。アートやデザインなどにも興味がある。ここ最近よく行くのが「法事」。

前回はイントロだけで終わってしまったフォン太君のアーツ郎君への相談ごと。今回はいよいよその本題に突入、といきたいところですが……。

いやー相変らず忙しそうじゃない、アーツ郎くん。

いやいや前回の続きで、これ一緒に収録してるからね。第1回目となんにも変わってないよ。

てへぺろ。

フォン太くんがそういう風にして行数をかせぐから、話が進まずに次回に繰り越しちゃうんだよ。とっとと進めようぜ。

へーい。りょうかいっすー。

うわー、態度わるッ。素直なのかひねくれてんのか分からんなー。

うーっす。前回は、もじ、使用許諾についての注意書きのない書体本見本をコピーして勝手に使ったらどうなるか、って話だったと思いまーす。

そう。ひっそり挟み込まれたダジャレを華麗にスルーして話を進めるね。結論からいうと、そこは、その本に載っている字が法律によって保護される場合には、叱られる、というか違法になっちゃうね。(注:利用許諾(ライセンス)契約については次回以降)。

モジですかッ!!

はい。

えっ。

モジです。

えっ。

えっ、じゃなくて、モジな。

は、はい。。。ていうか、字が法律によって保護されるって、どういうこと?

まず考えなくちゃいけないのが著作権法だろうな。

チョサクケンホウ。。。

そう。その字が「著作物」にあたる場合に、その字をつくった人に「著作権」が発生するんだけど、「著作権」を持っている人は、そういう「著作物」について、他人が勝手にコピーしたりすることを禁じることができるんだ。「著作権」は、いわば、「著作物」を独占できる権利だね。

チョサクブツ?

この点、「著作物」は難しい定義があるんだけど、平た〜くいうと、独創性のある表現物であれば「著作物」にあたるのね。

ドクソウセイ。。。

ちょいちょいカタカナ表示して難しがってるようだけど、なるべく簡単に説明するね。ここでいう独創性っていうのは、ものすごく芸術的なものじゃなくても広く認められて、例えば、子供が適当に描いた絵でもその人の個性が出ていれば「著作物」なんだよ。

ほう〜。じゃあこの本(前回取り上げた『レタリングデザイン』桑山弥三郎 著/グラフィック社)に載ってるデザイン書体系の字は、すごく工夫されていて独創性がある表現物といえるから「著作物」ってことだよね。

それが実は印刷用の書体については、ちょっと複雑で、簡単に「著作物」とは言えないんだ。これに関して、最高裁は、従来の印刷用書体と比べて顕著な特徴があって、美術鑑賞の対象となるような書体でないと、「著作物」とはいえない、としている。

えっ、そうなんだー。子供の落書きが良くてこのデザインされた書体がダメなの? おかしくない?

これは、「著作権法」の基本的な考え方に関係しているんだよね。印刷用書体について簡単に「著作物」として「著作権」の対象としてしまうと、およそ本を出版する際には、全て書体の使用について許可を得たりライセンス料を払ったりしなくちゃいけないことになる。そうするとどうなる?

書体を使う手続きが大変で、簡単に本を出せなくなっちゃう。

そうなのよ。印刷用書体のような誰もが使う便利なものを簡単に「著作物」として特定の人に独占させてしまうと、その便利なものをみんなが使えなくなってしまうよね。そうなると、新しい表現の創造を推進し、文化の発展させることを目標とするはずの「著作権法」がかえって文化の発展を妨げてしまう結果となっちゃうからなんだ。

うーむ。わかったような気もするけど、「著作物」の判断てのが難しいな。

じゃあ、ちょっとアサヒビールのロゴの例で考えてみようか。

アサヒ コーポレート・マーク(日本デザインセンターのサイトより)

うおぉ! ビール飲みてえ!

話、つづけるね。

対応がスーパードライだな〜。

このロゴを構成している書体が「著作物」といえるかが裁判で問題になったんだ。どう思う?

うーん。「A」の傾き具合とかは、従来の書体と比べて大分特徴的な気がする。でも、それが美術鑑賞の対象となるといってしまうと、ちょっと大げさなような…。

裁判では、その傾斜とかあとは細い線と太い線の書き分けとかに特徴があるとはいわれたのだけど、「美的創作性」を感じ取ることはできないと判断され、「著作物」ではないとされたんだ。

スーパードライな判断だな〜。

同じネタ繰り返すねしかし。

「同じのもう一杯!」ってヤツですよ。

まあ、有名な書家による「書」であれば、美術鑑賞の対象となるため、「著作物」と認められやすいとは思うけど、印刷用書体の場合、基本みんなが使いやすい範囲で文字をデザインするのが殆どだろうから、「著作物」にあたらないことが多いだろうねー。

美術観賞の対象と印刷用書体の違いか。。。用途が全然違うもんなー。 結局「使いにくい」のが法律で保護されて、「使いやすい」のは法律で保護されないってこと?

「著作権法」っていう法律のうえでは、そういうことになってしまうね。

そっかー。オレいっつもクライアントから「使いにくいですね」って言われるんだけどさー。法律で守られてるってことだったのかー。なーんだー。

使えねーヤツ!

【まだまだ続きます。次回は書体を例にあげて検証してみます、(いろんな意味で)震えて待て!】

2014年11月17日

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フォン太とアーツ郎の、FONT and LAW!

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Arts and Law

2004年に設立された、文化活動を支援するためのNPO(任意団体)。美術、工芸、デザイン、音楽、映像、映画、出版、建築、ファッション、パフォーミングアーツなど、あらゆる文化活動に携わる人々を対象に法的なアドバイスを提供しています。弁護士、公認会計士、税理士、司法書士など様々な分野の専門家が、プロボノ=ボランティア活動として所属しています。本連載は所属している弁護士の水野祐、倉崎伸一朗、高崎俊が担当しています。
http://www.arts-law.org/

なお、本連載で興味をお持ちいただいた方は、雑誌「アイデア」(No.363)の『タイプフェイスと知的財産権』も、ぜひご覧ください。

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