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「無いモノを創る、あるモノを使う」齋藤精一

モリサワ文字文化フォーラム「文字とデザインVol.5」

「無いモノを創る、あるモノを使う」齋藤精一

2014年6月5日に開催された、第13回モリサワ文字文化フォーラム「文字とデザインVol.5」(於:株式会社モリサワ本社4F大ホール)のレポートを、3回にわたってお伝えする。

同フォーラムは、印刷/Web/出版/デザイン業界を対象に、「文字文化」への探究心を新たな世代へ受け継がせる事業の一環として、また業界活性化を目指す事業の一環として設立されたもの。13回目を迎えた今回は、クリエイティブディレクターである齋藤精一氏による「無いモノを創る、あるモノを使う」、アートディレクターの平林奈緒美氏と古平正義氏による「『タイポグラフィー』って、本当のところ、何?」、グラフィックデザイナーの佐藤卓氏による「感性に逃げないデザイン」といった3つのセッションで構成。それぞれの立場から文字とデザインを考察し、その思いや考え方を赤裸々に語った。

また、予定されていなかった最終セッションとして4氏によるトークショーも急遽開催。各分野を代表する4氏が一堂に会すとあって、会場にはおよそ300名もの聴講者が駆けつけ、満席の盛況となった。

なお、同講演はUstreamによるライブ配信も行われた。

「無いモノを創る、あるモノを使う」

セッション1:齋藤精一氏

株式会社ライゾマティクスの代表である齋藤氏が登壇。ライゾマは、デジタル技術を核に、デザインや美術作品を制作。さまざまな技術、スキルを持つプロ集団である。齋藤氏は、「急速に発展したデジタル技術には、まだまだ色々な使い方や表現方法がある」とした上で、「社内の共通意識は『誰も見たことのない、まだこの世にないものを…』。いま存在する技術を応用して新しいモノを創るのが我々のミッションである」と語る。

齋藤氏の経歴は、建築大学→建築事務所→広告代理店のデザイナー→美術作家→フリーランスのクリエイター→ライゾマティクス設立と、一風変わっている。

アルゴリズム建築の世界からアーティストとしても活動していた齋藤氏。当時の感想として「アートは想像以上に閉じた世界だった。作る人も、見に来る人も、批評する人もすべてが同じ小さな世界の中にいる。そこから外へ出るのは難しいということが分かった」と振り返る。

このような経験を通して、同じ大学出身の3人ではじめたのがライゾマティクスである。

当時はまだ「インタラクティブ」という言葉さえもなかった時代。ライゾマが「インタラクティブ」を売ろうとしても、事例や実績を求められ、理論上の話では相手にされない。そこで自らがその事例や実績を作ることからはじめたという。結果、2008年頃から「インタラクティブ」に対する認知度も高まり、ライゾマは現在、総勢30名強のスタッフを抱える会社へと成長している。

ライゾマの2つの柱はアートとコマーシャル。会場ではこれらライゾマのマインドが息づく数々の作品が映像で紹介され、その先進性が示された。

さらに、アート、コマーシャル、R&Dという3つの大きな柱を軸に、それぞれの良さを活かしながらライゾマで最大化していく方法論を紹介。「ライゾマはエンタメに特化した会社で、このエンタメは新しい技術を世に出す出発点となり得る」と齋藤氏。例えば、一般的には知られていない医療技術もエンタメ的手法を通して知ってもらうことができる。エンターテイメントという切り口で様々な技術、手法、気付かなかったものを引き出していくのがライゾマである。「いま持っている技術を少しだけ変えることで、実はもっと多くのものをコントロールできる」(齋藤氏)

「枯れた技術の水平思考」という横井軍平氏の言葉のように、違う切り口、違う使い方をするだけで、新しいモノ、新しいアイデア、新しいカタチが生まれる。誰も見たことのないものに対しての基礎的な研究は難しいが、応用で作られたモノをまた応用で創るという「マッシュアップ」の手法が、いまの時代にはマッチしているということだ。

「『同じモノを違う視点で見る』ということは大切であり難しい」と齋藤氏。「技術は持っていて当たり前。1人1役の時代は終焉を迎え、1人1役以上の技術、知識を持っていなければ仕事につながらない時代。技術と手法の両方を持っていることで見えてくる世界がある」と語る。

最後にスクリーンに映し出されたのは、ライゾマのフィロソフィー「完全現場主義」の文字。「現場がすべてである」という言葉で締めくくった。


2014年10月1日

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人物プロフィール

佐藤卓

1979年東京藝術大学デザイン科卒業、1981年同大学院修了、株式会社電通を経て、1984年佐藤卓デザイン事務所設立。「ニッカ・ピュアモルト」の商品開発から始まり、「明治おいしい牛乳」「ロッテ・キシリトールガム」「S&Bスパイス&ハーブ」などの商品デザイン、「金沢21世紀美術館」「国立科学博物館」のシンボルマーク、「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」のグラフィックデザイン、「武蔵野美術大学 美術館・図書館」のロゴ、サイン及びファニチャーデザインを手掛ける。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」アートディレクター・「デザインあ」総合指導、21_21 DESIGN SIGHTディレクターを務めるなど、多岐に渡って活動。また、大量生産品をデザインの視点で解剖する「デザインの解剖」プロジェクトが話題を呼ぶ。代表著書に『クジラは潮を吹いていた』(DNPアートコミュニケーションズ)、『JOMONESE』(美術出版社)、写真集『真穴みかん』(平凡社)

古平正義

1970年大阪生まれ。主な仕事に「アートフェア東京」「ローリングストーン日本版」「堂島ウィンターライブ」等のアートディレクション、山下智久・GLAY・INORAN(LUNA SEA)等のCD/DVDジャケットやミュージックビデオ、「ラフォーレ原宿」広告・CM 他。D&AD 銀賞、ONE SHOW 銀賞、東京ADC 賞など受賞。www.flameinc.jp

平林奈緒美

東京生まれ。武蔵野美術大学卒業後、(株)資生堂宣伝部入社。ロンドンのデザインスタジオMadeThoughtに出向後、2005年よりフリーランスのアートディレクター/グラフィックデザイナー。雑誌GINZAのアートディレクションをはじめ、アパレルブランドのビジュアルディレクション、NTT DOCOMO、HOPE(JT) 等のパッケージデザイン、(marunouchi)HOUSE のサインデザイン、DREAMS COME TRUE・宇多田ヒカル等のCDジャケットデザインなど、ジャンルを問わず活動中。

斎藤精一

1975年神奈川生まれ。建築デザインをコロンビア大学建築学科(MSAAD)で学び、2000年からNYで活動を開始。その後ArnellGroupにてクリエティブとして活動し、2003年の越後妻有トリエンナーレでアーティストに選出されたのをきっかけに帰国。その後フリーランスのクリエイティブとして活躍後、2006 年にライゾマティクスを設立。建築で培ったロジカルな思考を基に、アート・コマーシャルの領域で立体・インタラクティブの作品を多数作り続けている。2009年-2013年国内外の広告賞にて多数受賞。現在、株式会社ライゾマティクス代表取締役、東京理科大学理工学部建築学科非常勤講師。2013年D&AD Digital Design部門審査員。

モリサワ文字文化フォーラム「文字とデザインVol.5」

type.center編集部

type.centerの編集部です。文字関連イベントをレポートしたり役立つ情報を発信できるよう努力してまいります。よろしくお願いします。

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