大日本タイポ組合「文字が創り出すデザインの力」
(株)モリサワ(森澤彰彦社長)は1月22日、本社4階大ホールにおいてモリサワ文字文化フォーラム「文字とデザインVol.6」を開催。会場にはおよそ180名が聴講に駆け、さらにサテライト会場となった東京本社会場にもおよそ50名が参加した。

モリサワ本社4階大ホール 会場の様子
今回は、K2の長友啓典氏、黒田征太郎氏、大日本タイポ組合の秀親氏、塚田哲也氏、司会にデザイン団トンネルの鈴木信輔氏、樋口寛人氏を迎え、K2、大日本タイポ組合のこれまでの活動から「グラフィックと文字が創り出すデザインの力」を振り返り、「デザインが果たすこれからの役割」をテーマに、講演と対談が行われた。
【セッション1】
大日本タイポ組合「文字が創り出すデザインの力」

大日本タイポ組合(秀親氏・塚田哲也氏)
モリサワ文字文化フォーラム2回目の登壇となった大日本タイポ組合のセッション1では、青のトレーナーに青のキャップという揃いの衣装で秀親氏、塚田哲也氏が登場。昨年11月にギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)で開催された「字字字」展の作品を通じて、彼ら自らの創作活動を紹介した。
この展示会「字字字」は、「字」という文字のエレメントを様々な文字に展開するという試みを「ggg」で開催するという、なんともダジャレめいた取り組み。鈴木氏からの「色々な『字』を展開しているが、無限にいけるものなのか?限界はないのか?」という質問には、「現時点における限界までは到達した。展示全体をタイポグラフィで表現したい。漢字の『字』、ひらがなの『じ』、カタカナの『ジ』、アルファベットの『g』、『G』。無限ではないが、今まで作ったものを再度展示するのではなく、字に絡んでいれば、もう一度リメイクして展示した」と秀親氏。また塚田氏は「お題を解釈して解体し、いかにデザインするかを考える。我々はそれを文字の形で解決しようとするわけだ。しかし、『字字字』展は、『字』という形そのものを文字の形で解決するという自己言及的な試みである」と説明する。さらに秀親氏は、「ひとつの言葉の中に表現できる意味が複数あるという、ある意味ダジャレ的に見える文字を作りたいと思っている。それが理想」と語り、実験的タイポグラフィの魅力に迫った。
彼らは、日本語やアルファベットなどの文字を解体し、組合せ、再構築することによって、新しい文字の概念を探る実験的タイポグラフィ集団。「字字字」においても塚田氏は「我々は書体デザイナーではないので、様々な文字を『字』に寄せるため、もとの文字を強引に変形させる必要も出てくる。文字の美しさではなく、形のおもしろさを探っている」と説明。秀親氏も「理由があって変形した文字は良い形をしている。そこに必然性があるから解釈できておもしろい」と自らの創作活動を紹介した。

続いて、コンビ名についての話に。「世の中にありそうで、なさそうな名前だが、それはどういう意図で?」という鈴木氏の質問に対し、「東京TDCに応募する際、東京より大きい日本、もうちょっと大きくして大日本にしてみようかと。おかげで大日本印刷の持っているギャラリーでお仕事ができるようになった(笑)」と秀親氏。そもそも、自分たちの「字字字ギャラリー」を作りたいという構想が3年くらい前にあったという2人にとって、今回の展覧会は、願ったり叶ったり。その名前から、何もかも「文字縛り」でやらなくてはいけないということでやってきたが、いまでは、浅葉克己氏をはじめとした大先輩から「お〜い!タイポ」と呼ばれるくらい。縛りができたことでより深掘りを可能にする状況が生まれたわけである。
創作過程において、時には「無理矢理感」が否めない場面も出てくるという2人。しかし、その裏には必ずブレないルールがあることを強調する。

「アルファベットで漢字っぽいものを作る時は、左上から右下に。そんな法則を守らないと見る側が解釈しづらい」(秀親氏)

「絵ならどこからでもいいが、文字だと恐らく人は筆順をもとに目で追っていくはず。そんなことも考慮する必要がある」(塚田氏)
最後に、「あなただけの字をつくってください」という、字を使って字をつくるwebアプリ「type setter」をiPadでデモ。このセッションを終えた。

この日モリサワ本社内に設置された字形のオブジェは大日本タイポ組合の作品