文字による文字のための文字のサイト

開館から4ヵ月、日本初の「漢字ミュージアム」をレポート

イベントレポート

開館から4ヵ月、日本初の「漢字ミュージアム」をレポート

京都・祇園の中学校跡地に誕生した、漢字文化育む教育施設
開館から4ヵ月、日本初の「漢字ミュージアム」をレポート

今年6月、日本初の漢字ミュージアム「漢検 漢字博物館・図書館」が京都・祇園の京都市元弥栄中学校跡地に誕生し、9月末の時点ですでに3万5,000人以上の来館者を受け入れている。同施設は、公益財団法人 日本漢字能力検定協会が運営する教育施設。「触れる、学ぶ、楽しむ」をコンセプトとした体験型ミュージアムで、来館者に漢字の面白さ・奥深さを体感してもらうことで、日本の漢字文化を育み、継承していくことを目指している。今回、日本の知的財産である漢字文化の情報発信拠点として、この「漢字ミュージアム」を取材した。


年間20万人以上の来館者見込む

「漢検 漢字博物館・図書館」は、日本漢字能力検定協会が旧・本部ビル2階ワンフロア約300平方メートルの狭小スペースで2000年から運営してきた「漢検 漢字資料館」を発展させる形で、京都・祇園の京都市元弥栄中学校跡地に建設されたもの。同協会は2012年7月、京都市が発表した「学校跡地に係る市民等提案制度」を受けて、より充実した漢字の普及啓発施設を建設する計画を策定。これが京都市・地域住民との協議の結果採択され、2015年2月に建設を開始、今年6月に開館を迎えた。今後は、日本の漢字文化の発展と継承を目指すとともに、それを広く世界に発信する情報拠点として、年間20万人以上の来館者を見込んでいる。

京阪本線「衹園四条駅」から四条通を八坂神社方面へ5分ほど歩くと、京都・祇園の街並みの中に、一見、近代的でありながら京都の伝統的建築物である京町家を想わせる地上3階建ての建物が見えてくる。これが漢字ミュージアム「漢検 漢字博物館・図書館」だ。
構想当時は、2011年に廃校となった中学校の建物をモニュメントとして活用する案もあったそうだが、鴨川の東側は山から流れてくる水の影響で建物自体が脆弱化していたこともあって新たに建築された。ただ、入り口の石畳と運動場の一部は現在も残されている。


今年の漢字

正面の入り口を入り、広いエントランスを抜けて入場すると、まず、「今年の漢字」が出迎えてくれる。これは12月12日の漢字の日を記念して1995年から毎年発表されているもの。2015年は「安」。京都・清水寺で森清範貫主が揮毫した大迫力の本物が展示されている。

触れる、学ぶ、楽しむ

館内は大きく分けて1階と2階のフロア別で分かれている。
1階のテーマは「見て聴いて触れるグラフィック展示・映像シアター」。映像やグラフィック、資料に触れるハンズオン装置などの体験的な手法を用いて、日本語を書き記す文字として発展・変容してきた漢字の歴史が楽しく学べる。
まず、シアタールームでは「漢字ってなに?」(約8分)が上映されており、音と映像で漢字の世界を紹介している。そこを出ると、手をかざすことで漢字のルーツとされる甲骨文字を見つける「踊る甲骨文字テーブル」や、時代毎の「漢字の歴史絵巻」が壁30メートルにわたって展示されている。また、この歴史に準じた形で用意された体験テーブルでは、「甲骨文字占い」をはじめ、中国の皇帝から贈られた「漢委奴國王」の5文字が彫り込まれた金印スタンプ、万葉仮名で自分の名前を作れるスタンプなどが用意されており、来館者は入館時に手渡された「体験シート」を使って、これらテーブルを巡っていくというものだ。

「踊る甲骨文字テーブル」(手前)と「漢字の歴史絵巻」


日中韓共通808字の木

さらに「漢検ラウンジ」では、協会の事業が紹介されているほか、日中韓で選定した共通漢字808字を葉にあしらった「日中韓共通808字の木」が目を引く。


20以上の体験ブースが並ぶ2Fフロア

一方、2階のテーマは「遊び、楽しみ、学べる展示コーナー・図書館」。漢字の仕組みや特徴が遊びのツールとなる、テーマパークのような展示エリアとなっている。
漢字の筆順や書体、読みと音などをテーマにしたもののほか、特定地域だけで使われている「方言漢字」、出題された漢字を制限時間内に辞典で探す「引いてみよう漢字辞典」、自分の体を使って漢字になってみる「体で漢字を作ろう」、回ってくる皿を取ってクイズに挑戦する「漢字回転すし」など、20以上の体験ブースが用意されている。また、魚偏の漢字が並ぶ巨大な湯呑みに入って記念撮影できるコーナーも設置。来館の体験をSNSなどへ投稿・シェアするのにいいかもしれない。


漢字5万字タワー

さらに2フロアを貫く大きな柱は、およそ5万字の漢字が4面をかざる「漢字5万字タワー」となっており、ここで好きな漢字や自分の名前の漢字を探してみるのも面白そうだ。

日本漢字能力検定協会・漢字文化研究所の岩橋恭子課長は、「当施設は有名な物や高価な物を展示しているのではなく、体験を通して漢字を学び、楽しんでもらうことをコンセプトにしている」と述べ、施設の有効利用を呼びかけている。

また同施設では、ワークショップやイベントも随時開催。現在、2階特設会場では、「『今年の漢字』展」が開催されている。同展では、歴代の「今年の漢字」すべての大書が展示されているほか、それぞれの年の報道記事や写真も展示。会場内では揮毫映像も上映することで、日本の世相の変化や人々の印象に深く刻まれた出来事を振り返ることができる。会期は来年1月29日まで。

「漢検 漢字博物館・図書館」概要

  • 場所:京都市東山区祇園町南側551
  • 開館時間:9:30〜17:00(入館は16:30まで)
  • 休館日:月曜日(休館日が祝日の場合は、翌平日に振替)、年末年始、臨時休館あり
  • 入館料:大人800円/大学生・高校生500円/中学生・小学生300円/未就学児は無料(割引制度あり)
  • TEL 075-757-8686
  • MAIL http://www.kanjimuseum.kyoto
2016年10月29日

シェア

イベントレポート

type.center編集部

type.centerの編集部です。文字関連イベントをレポートしたり役立つ情報を発信できるよう努力してまいります。よろしくお願いします。

連載記事一覧
今日
昨日
おととい
ちかごろ
あいうえお かきくけこ さしすせそ たちつてと なにぬねの はひふへほ まみむめも やゆよ らりるれろ わゐゑを ん がぎぐげご ざじずぜぞ だぢづでど ばびぶべぼ ぱぴぷぺぽ 0123456789.
連載記事一覧
連載記事一覧
イベントレポート
「文字で演じる戯曲あそび」ワークショップレポート
「文字で演じる戯曲あそび」ワークショップレポート
文字を通じて、フェスティバル/トーキョー18で上演されるマレビトの会『福島を上演する』の戯曲に書かれた言葉と出会う創作ワークショップが、9/8(土)IID世田谷ものづくり学校にて行なわれました。主催はフェスティバル/トーキョー。 講師にグラフィックデザイナーの大原大次郎氏、ゲスト…
イベントレポート
「ことばをながめる、ことばとあるく——詩と歌のある風景…
「ことばをながめる、ことばとあるく——詩と歌のある風景」関連イベント「詩とグラフィックデザイン」鼎談
太田市美術館・図書館で現在開催中の展覧会「ことばをながめる、ことばとあるく——詩と歌のある風景」の関連イベントとして、出品作家の佐々木俊氏、祖父江慎氏、服部一成氏三者による鼎談が9月1日、同所で行なわれました。テーマは「詩とグラフィックデザイン」。その模様をレポートします。
イベントレポート
多摩美術大学オープンキャンパス「この字ナンの字?」ワー…
多摩美術大学オープンキャンパス「この字ナンの字?」ワークショップレポート
2018年7月15日(日)、多摩美術大学オープンキャンパスの情報デザイン学科内のイベントとして文字つくりワークショップが行なわれました。 大日本タイポ組合のお二方が講師を勤める毎年恒例の「食べもの×文字」のワークショップ。 今年のタイトルは「この字ナンの字?」。そのワークショップ…
イベントレポート
第六期文字塾展トーク「この文字どうかな? どの字がすき…
第六期文字塾展トーク「この文字どうかな? どの字がすきかな?」聞いてきました。
 書体設計士の鳥海修氏が主催する「文字塾」では、一年をかけて塾生が各々の仮名のデジタルフォントを作ります。 11名の塾生の書体が集まった第六期文字塾の展覧会が、2018年6月3日(日)から9日(土)まで人形町ヴィジョンズで開催されました。 今年のタイトルは「すきこそもじの上手な…
イベントレポート
「フォントかるたで遊びながら覚える、フォント選びのTP…
「フォントかるたで遊びながら覚える、フォント選びのTPO」イベントレポート
2018年5月24日(木)、「フォントかるた」のイベントがフォントかるた制作チームとハイブリッド型総合書店「honto」との共催で行なわれました。内容は、「フォントかるたで遊びながら覚える、フォント選びのTPO」。
書体の知識や、選び方・使い方のレクチャーからはじまり、実際にフォ…
イベントレポート
味岡伸太郎 味明物語 東京展 ギャラリートーク(白井敬…
味岡伸太郎 味明物語 東京展 ギャラリートーク(白井敬尚×祖父江慎×味岡伸太郎)
見出し明朝体「味明」と「味明モダン」および本文用のかな書体の発表と「味岡伸太郎書体講座」を刊行した味岡伸太郎氏。大阪に続きペーパーボイス東京で開催の「味明物語東京展」において、4月17日(火)白井敬尚と祖父江慎の両氏を迎えたギャラリートークの様子をレポート。
イベントレポート
「言葉と絵で。福部明浩と榎本卓朗の広告のつくり方」に2…
「言葉と絵で。福部明浩と榎本卓朗の広告のつくり方」に230名
(株)モリサワ(森澤彰彦社長)は7月28日、本社4F大ホール(大阪市浪速区敷津東2-6-25)において、第21回モリサワ文字文化フォーラム「言葉と絵で。福部明浩と榎本卓朗の広告のつくり方」を開催。定員の150名を大幅に上回る230名が参加する盛況となった。
イベントレポート
「凸版文久体ができるまで 3」最終セッションでは小宮山…
「凸版文久体ができるまで 3」最終セッションでは小宮山氏が登壇
印刷博物館は、P&Pギャラリーにおいて開催した企画展「印刷書体のできるまで 活字フォントからデジタルフォントへ」にあわせ、凸版文久体のフォント制作に携わったデザイナーなどを招聘し、これまで2つの講演会を開催してきた。その最終セッションとして6月3日、祖父江慎氏とともに凸版文久体制…
イベントレポート
「情報化時代に考えたい漢字の話」 文化庁文化部国語課 …
「情報化時代に考えたい漢字の話」 文化庁文化部国語課 国語調査官・武田康宏氏が講演
千代田区立日比谷図書文化館は3月30日、日比谷コンベンションセンターにおいて、文化庁文化部国語課 国語調査官の武田康宏氏を講師に迎えて「情報化時代に考えたい漢字の話」をテーマとした講演会を開催し、年度末にもかかわらず200名が聴講に訪れた。
イベントレポート
鼎談『漱石本制作の舞台裏』〜「祖父江慎+コズフィッシュ…
鼎談『漱石本制作の舞台裏』〜「祖父江慎+コズフィッシュ展:ブックデザイ」関連イベント〜
「祖父江慎+コズフィッシュ展:ブックデザイ」関連トークイベント第2弾「鼎談『漱石本制作の舞台裏』」が3月10日、日比谷コンベンションホール・大ホールにおいて開催され、200名が聴講した。
イベントレポート
対談『造本あれこれそれ話』 〜「祖父江慎+コズフィッシ…
対談『造本あれこれそれ話』 〜「祖父江慎+コズフィッシュ展:ブックデザイ」関連イベント〜
千代田区立日比谷図書文化館において開催されている特別展「祖父江慎+コズフィッシュ展:ブックデザイ」の関連イベントとして対談「造本あれこれそれ話」が2月18日、日比谷コンベンションホールにおいて開催。祖父江慎氏と白井敬尚氏の2人のグラフィックデザイナーが、それぞれの造本に対する考え…
h
s
h
イベントレポート
「ニッポンのニッポン ヘルムート・シュミット」展 特別…
「ニッポンのニッポン ヘルムート・シュミット」展 特別講義レポート
昨年末に開催された、京都dddギャラリー「ニッポンのニッポン ヘルムート・シュミット」展。特別講義「タイポグラフィとタイポグラフィ」がヘルムート・シュミット氏を講師に、京都造形芸術大学にて開催されました。今回はこの特別講義内容をレポートします。
イベントレポート
「単位展−あれくらい それくらい どれくらい?」大日本…
「単位展−あれくらい それくらい どれくらい?」大日本タイポ組合とギャラリートーク
21_21 DESIGN SIGHTで開催中の企画展「単位展−あれくらい それくらい どれくらい?」の関連プログラムとして、企画チームの前村達也氏、中村至男氏、稲本喜則氏、そして参加作家として大日本タイポ組合の秀親氏と塚田哲也氏らによる「大日本タイポ組合とのギャラリートーク」が開…
イベントレポート
ハングルセミナー「韓国の文字、いろいろと。」
ハングルセミナー「韓国の文字、いろいろと。」
2015年2月13日、ハングルセミナー「韓国の文字、いろいろと。」(講師:ノ・ウニュ氏、主催:佐々木愛氏)が開催されました。そのレポートをお届けします。また、記事の最後に、当日、伺いきれなかった参加者からの質問と、メールによるノ氏からの回答を掲載します。
イベントレポート
サイラス・ハイスミス×大日本タイポ組合 レクチャー&ワ…
サイラス・ハイスミス×大日本タイポ組合 レクチャー&ワークショップ
2014年11月7日、東京・銀座のMMM(メゾン・デ・ミュゼ・デュ・モンド)で開催されたレクチャー&ワークショップ「文字を創り出すサイラス・ハイスミス×文字を再構築する大日本タイポ組合⇒言語を超えて文字で遊ぶ」のレポートをお届けする。