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サラ・ソスコルン氏「Quarto: A revival and reinvention of an early display type」

モリサワ文字文化フォーラム「WE LOVE TYPE 2」

サラ・ソスコルン氏「Quarto: A revival and reinvention of an early display type」

2014年11月6日に開催された第15回モリサワ文字文化フォーラム「WE LOVE TYPE 2」のレポート、小塚昌彦氏に続いて、セッション2-1「Quarto: A revival and reinvention of an early display type」(ホフラー社(NY)上級タイプデザイナー:サラ・ソスコルン氏)を紹介する。


セッション2-1 「Quarto: A revival and reinvention of an early display type」

ホフラー社 上級タイプデザイナー サラ・ソスコルン氏

同氏は故郷のトロントで10年間にわたりグラフィックデザインの仕事に携わり、その体験から自らが納得のいく書体デザインを目指し、レディング大学へ留学。2003年にマスター・オブ・アートの修士号を修得。2005年、ホフラー&フリアジョーンズ(現:ホフラー社)に入社。Verlag、Chronicle、Sentinel、GothamとTungsten等のカスタムメイドと販売用の幅広い書体の開発に貢献する。現在は、イェール・スクール・オブ・アート、NYスクール・オブ・ビジュアルアート、クーパーユニオンで教鞭を執っている。


ヴァン・デン・キーアの文字を現代仕様にした「Quarto」

サラ・ソスコルン氏はまず、「Quarto」の開発経緯について「元々はコンデナスト社の『portfolio』というビジネス誌のための専用タイプフェイスを作ってほしいという依頼に端を発している。8年ほど前に制作にとりかかり、プレミッシュタイプという16世紀のものをもとに、これに解釈を加えて現代仕様に合うものにする必要があるということで、まず、歴史的なリバイバル、さらにはリインベンション『再発明』という取り組みでプロジェクトを進めてきた。『portfolio』の表紙に使用されていたマシュー・カーター氏の『Caslon』というタイプフェイスに対応する中のページの特集のタイトルやディスプレイなどに使用できるものが必要だと依頼されたものである」と述べた上で、「Caslon」の歴史を紐解いた。

「『Caslon』はイングリッシュスタイルと考えられているが、実際にはダッチテイストにイギリスの解釈を加えたものと考えられている。エックスハイトが高いということ、圧縮された密なプロポーションであること、縦向きのストレスがあり、当時の北欧で流行っていたタイプフェイスである」

そして、17〜18世紀に作られたダッチテイストの文字を次々と紹介し、結果的には「Caslon」のデザインに影響を与えたこれらの書体よりも、さらに1世紀さかのぼり、「16世紀のヘンドリック・ヴァン・デン・キーア(Hendrik van den Keere)のものをベースとして使うことになった」と説明。ヴァン・デン・キーアは、フランドルで活躍していた活字職人で、ダッチテイストをタイポグラフィに取り入れた新しいダッチオールドスタイルの先駆者でもあり、サラ・ソスコルン氏は、このヴァン・デン・キーアの文字のクオリティをさらに洗練させ、現代に合うように解釈を加えていったという。

「ヴァン・デン・キーアの初期の文字は、一部の文字に見られる奇抜さなど、改善の余地がみられるところがある。例えば、『A』『E』『F』は、本来は細いはずの横の線が太い。また、『k』の右側の『<』の部分では、上下の角度にシンメトリーが見られず、現代の感覚では不思議な感じがする。このほか、『T』の上に突き出した部分を『C』『G』『Z』にも足したり、始筆と終筆のところをきっちりと定義しなおすことで現代風にアレンジしたが、これは予想外に大変な作業になった」

こうして試作と検証を繰り返してできあがった文字を映しながら、「よりくっきり、すっきりした感じになり、いまの読者には向いていると思う」と述べ、前半を締めくくった。


「Quartoファミリー」は現在10書体に

また、セッション後半ではイタリックの制作について言及。ヴァン・デン・キーアの時代ではイタリックが作られないことは一般的なことだったため、「Quarto」のイタリックは、オリジナルのない状態から作らなければならなかったという。「ヴァン・デン・キーアだったら…」と想像して取り組む中で先駆者のヴァン・デン・キーアに続く、ニコラス・キース(Miklós Tótfalusi Kis)の文字とフランスのクロード・ラ・メールの文字を取り入れたとプロセスを語った。

そして「Quarto」はその後もウエイトの拡張を行い、現在は Light/Medium/SemiBold/Bold/Black の5ウェイトにイタリックを加えた10スタイルが揃ったとして、そのファミリーを紹介。最後に「みなさんに気に入って頂けるとうれしい。近々発表する予定」と笑顔で話し、セッションを終えた。



編集部からのおしらせ

初出時、文中で『このほか、『t』の上に突き出した部分を『c』『g』『z』にも足したり、始筆と終筆のところをきっちりと定義しなおすことで現代風にアレンジしたが、これは予想外に大変な作業になった」』としておりましたが、確認いたしましたところ

『このほか、『T』の上に突き出した部分を『C』『G』『Z』にも足したり、始筆と終筆のところをきっちりと定義しなおすことで現代風にアレンジしたが、これは予想外に大変な作業になった」』

であることが分かりましたので、訂正させていただきます。ご指摘をいただきました方に謹んでお礼申し上げます。

2014年12月12日

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人物プロフィール

S
Sara Soskolne

Hoefler & Co.(ホフラー)社(NY)の上級デザイナー。 故郷のトロントで10 年間グラフィックデザインの仕事に携わり、その体験から自らが納得のいく書体デザインを目指しレディング大学へ留学、2003 年にマスター・オブ・アートの修士号を修得。2005年、ホフラー& フリアジョーンズに入社、Verlag、Chronicle、Sentinel、Gotham と Tungsten 等のカスタムメイドと販売用の幅広い書体の開発に貢献。イェール・スクール・オブ・アート、NY スクール・オブ・ビジュアルアート、クーパーユニオンで教鞭を執る。

モリサワ文字文化フォーラム「WE LOVE TYPE 2」

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